安房直子さんの物語のなかの美味しそうな食べものリスト2020.08.16.更新


〇こちらにも掲載しています。こちらは食べものの種類などでそれぞれのカードがリンクされる形式です。DeliciousAWANAOKO/

〇こちらは安房直子さんの鮮やかな描写を集めたページ。VividAWANAOKO

- まったくです。かんがえただけでも、のどがなります。 『グラタンおばあさんとまほうのアヒル』
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- ※「/」表記は原文での改行位置です。
- ※『 』内がタイトルです。
- ※「……(略)……」と中略している場合もあります。
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- ゆきひらは、しばらく考えてから、ふたをコトンと鳴らして言いました。/「それなら、りんごの甘煮を作りましょう。それを、つめたくして、ごちそうしましょう」  ゆきひらの話】

- りんごの甘煮は、白くつめたく、すきとおっていました。  『ゆきひらの話』
- 「たまねぎのスープ、どう?」  『ひめねずみとガラスのストーブ』
- そういわれて、つぎにぼくが目をあけたとき、テーブルの上には、いれたてのミルクティーと、なんだか上品な感じの小さなお菓子がならんでいたのでした。紅茶は、マジョリカ焼きの、しゃれたカップにはいっていて、銀のスプーンが、まぶしく光っていました。お菓子は白いレースペーパーの上に、きれいにならべられていました。  『白樺のテーブル』
- ぼくもまねをして、そのふしぎな紅茶をひと口飲み、お菓子をつまんでみました。紅茶のまろやかなかおりと、とろけるクリームの味が、ぼくの気持をほぐしました。/ 「こんなお茶が、毎日飲めたら、どんなにいいだろう」  『白樺のテーブル』
- ぼくは黙って、紅茶をすすりました。お菓子を、二つ三つ続けて口に運びました。/と、このとき、ふいにぼくの耳に、小鳥のさえずりがきこえてきたのです。/ち・ち・ち・ち……と。/そら耳だろうかとぼくは思いました。するとたちまち、小鳥の声にまじって、せせらぎの音がきこえ、さやさやと木の葉をゆする風の音がはっきりとひびいてきたのです。/「ええ?」/ぼくは思わず大きな声をあげました。/すると……ああ、ぼくは、いつのまにか、ふかい森の中に立っていたのです。   『白樺のテーブル』
- こうしていつか、小さな小さなとうふが一丁、できあがったのです。マッチ箱ふたつあわせたくらいの、小さなとうふです。水に入れられると、それはもう、ふわりとまっ白で、夢のようにきれいです。すずめたちは、なべのまわりに集まってきて、できたてのとうふを、うっとりと見つめました。   『すずめのおくりもの』
- するとたぬきは、おなべの中をのぞきこんで、/「ほら、それそれ、三角のそれ」/と、言いました。/「なんだ、こんにゃくか」/おやじさんは、吹き出しそうになりながら、こんにゃくを、お皿にとって、からしをたっぷりそえてやりました。するとたぬきは、上きげんでしゃべります。 『雪窓』
- こおりどうふというのは、高野どうふのことです。凍みどうふとも、こごりどうふともいいます。小さく切ったとうふを、寒い晩にこおらせてつくった食べものです。あれを、お湯でもどしてから、あまくふっくりと煮たら、もう、ほっぺたが落ちるほど、おいしいおかずになります。 『星のこおる夜』
- 一本ずつ、枝からはずして、あまく、ふっくりと煮て食べるんです。冬のあいだじゅう、だいじにだいじに食べるんです。ときどき、山のうさぎにも、わけてやります。野ねずみの家に持っていってやることもあります。たぬきなんか、こおりどうふを、おみおつけに入れて食べるんです。食べおわったころには、春がきます。春がくると、枝のこおりどうふは、みんななくなって、そのかわりに、新しい若葉が出てきます。 『星のこおる夜』
- ねこじゃらしとうふ店は、猫の店ですから、とうふ屋さんの背丈より、ずっとひくいのです。二階のおざしきは、窓から手にとるようにのぞけます。ちょうどそのとき、おざしきには、お客が五人もきていて、テーブルいっぱいにならんだとうふ料理を、おいしそうに食べていました。ひややっこに、揚げ出しどうふ、あんかけどうふに、いりどうふ……。 『ねこじゃらしの野原』
- 猫のこしらえた料理だからって、ばかにしてはいけません。おぼんの上のの料理は、どのお皿もどのお皿も、ほどよい塩かげん、ほどよいやわらかさで、もうしぶんのない味でした。とくに、ひややっこのおいしさときたら、もう、天下一品。薬味は、青じそだけなのに、どうしてこんなにおいしいのでしょうか。ねこじゃらしの野原で、ねこじゃらしの風に吹かれながら食べると、つめたいとうふはそれだけで、味がよくなるのかもしれません。 『ねこじゃらしの野原』
- 「つまり、肉の燻製さ。塩やコショーの味のついた肉を、落ち葉の煙で、ゆっくりいぶした食べものだ。ほっぺたが、落ちそうに、うまいんだぞ―――。」  『風のローラースケート』
- ふたりはおきあがると、ローラースケートをはずして、海のほうへ、歩いてゆきました。/防波堤のはしっこにすわって、茂平さんと、いたちは、海を見ながら、ベーコンを食べることにしました。茂平さんは、ポケットから、ナイフをとりだして、ベーコンを切りました。ぷうんと、燻製のにおいがして、その切り口は、すてきな赤と白でした。/「ほっ、なかなかうまくできてるぞ。はじめてにしちゃ、上できだ。」/茂平さんといたちは、ベーコンを、たくさん食べました。いたちは、しみじみと、いいました。/「いいもんですねえ、海の風に吹かれて、ベーコンを食べるのは。」  『風のローラースケート』
- 「みそと、みりんの割合は、こんなぐあいだ」とか、/「みそは、火にかけたら、手早くまぜるんだ」とか、/「ここで、ゴマや、クルミを入れるといいね。ユズを入れれば、また、格別だ。」 『月夜のテーブルかけ』
- 「ゆきのしたのてんぷらは、うまいですよ。とくに、ぼくのところのは、一級品です。あれは、きれいな草だし、栄養があります。それから、いまの季節なら、たんぽぽの料理も、おいしいです。たんぽぽの花のサラダに、たんぽぽの葉のおひたし、それから、たらの芽のてんぷらに、つりがねにんじんの油いため、それから……そうそう、雪笹を知っていますか。あれは、とびきりですよ。一回食べたら、おいしくておいしくて、もうやめられません。」  『月夜のテーブルかけ』
- 「なにを食べさせてくれるの。」/と、たずねました。たぬきは、両手をもみながら、/「やはり、ゆきのしたがよろしいでしょう。」/と、いいました。/まったくです。わたしたちの足もとは、もうびっしりと、ゆきのしたのじゅうたんをしきつめたようでしたし、そのまるくてぽってりとした緑の葉は、いかにもおいしそうでした。 『月夜のテーブルかけ』
- やがて、たぬきが、ごちそうを運んできました。びっくりするほど大きなおぼんには、木のお皿が、いくつものっています。/「さあ、ゆきのしたのてんぷらです。これをまず、ゆっくり味わってみてください。そのあと、こっちのたんぽぽのサラダと、雪笹のおひたしと、シオデのゴマあえと、花いかだのたまごとじをためしてみてください。お味がうすいようでしたら、塩をひとふりしてください。」/みるみるうちに、テーブルかけの上は、ごちそうで、いっぱいになりました。どれも、これも、できたてのようでした。 『月夜のテーブルかけ』
- 「きまってるじゃありませんか。練りみそにして、大根にかけて食べるんです。今夜はふろふき大根のゆうべですからね。」/「ふろふき大根のゆうべ?」/「そうです。あちこちの山のいのししが集まって、ふろふき大根を食べる日なんです。(略)大きななべに、ふろふき大根どっさりこしらえて、あれをふうふう吹いて食べながら、語りあおうという会です。」 『ふろふき大根のゆうべ』
- ふんふんと、茂平さんは、またうなずきました。そして、自分のかごの中から、いちばん太くて、いちばんみごとな大根を選ぶと、いのししのかごの中に入れてやりました。/「じゃあ、あとから行ってみるよ。ついでに、練りみそも、持っていってやろう。みそは、ユズみそがいいかな、ゴマみそがいいかな、それとも、クルミみそにしようか。」/そう茂平さんがたずねますと、いのししはとびあがってよろこんで、/「そんなら、クルミみそにしてください。」/といいました。 『ふろふき大根のゆうべ』
- 「ほんとにほんとに、よくきてくれました。いま、大根がゆであがったところです。これで、みそさえそろえば、したくは、できあがりです。クルミみそというのは、これでしょうか。」/いのししは、茂平さんの持ってきたつぼに、うやうやしく両手をさしだしました。 『ふろふき大根のゆうべ』
- あかね山のいのししは、今夜の主催者ですから、いろいろと気をつかいます。お皿やおはしを、みんなにくばったり、いろりに薪をたしたり、大根に、おはしをさしてみたりして、/「さあ、どうぞどうぞ。今夜は、とびきりおいしいクルミみそがありますよ。」/といいました。 『ふろふき大根のゆうべ』
- いろりにかかった大なべからは、白いゆげが、ほやほやとあがっています。/「さあさあ、えんりょしないで食べてください。」/そう、あかね山のいのししがいいますと、三日月山と、日の出山は、うれしそうに、おはしをとりあげました。茂平さんも、おはしをとって、なべの中から、大根をひとつとりだしてみて、おどろきました。その大根の輪切りの厚いことといったら、まるで、木の切り株みたいなのです。 『ふろふき大根のゆうべ』
- 「大きすぎるねえ。これじゃ、食べにくいよ。」/と茂平さんがいますと、となりで、三日月山のいのししが、とんでもないという顔をしました。/「いえいえ、これくらい厚く切りませんと、いいゆげが出ません。」/「ゆげ?」/「はい、ゆげです。ふろふき大根の会で、いちばんたいせつなのは、このゆげなのです。」 『ふろふき大根のゆうべ』
- 「茂平さん、いのししのつくるふろふき大根は、特別でしてね、このゆげがすばらしいのですよ。このゆげを、じいっと見ていますとね、心があったかくなりましてね、悲しいことやいやなことなんか、みんなわすれてしまいます。われわれは、そのために、ふろふき大根をつくるんです。」 『ふろふき大根のゆうべ』
- 「それじゃ、ふろふき大根は、これくらいにして、こんどは、すこし、おなかのたしになるものを食べようじゃないか。」/と、あかね山が、上きげんでいいました。気がつくと、なべの中は、もうからっぽです。クルミみそも、きれいに、たいらげられていました。/あかね山のいのししは、なべをかたづけると、へやのすみの戸だなから、おもちを四つとりだしました。びっくりするほど大きなおもちです。はがきぐらいの大きさです。それを、いろりの火で焼いて、のりや、きなこや、ゴマをつけて、みんなは食べました。ひとつ食べたら、もうおなかはいっぱい、おなかに、ずしりと力がはいりました。 『ふろふき大根のゆうべ』
- そうして、もうひとつのめんこには、できたてのてんぷらうどんの絵がついていました。てんぷらは、大きなえびで、薬味には、ネギと、トウガラシが、ついていました。 『てんぐのくれためんこ』
- (略)白いエプロンのきつねは、ジュースのおぼんを、枯れ草の上において、それはそれは、やさしい声で、/「さあさあ、のどがかわいたでしょう。しぼりたての、ぶどうジュースを、めしあがれ。」/と、いいました。コップのジュースは、紫色でした。子ぎつねたちは、おぼんのまわりに、どっとかけよると、コップをとって、のどをこくこくさせながら、飲みました。 『てんぐのくれためんこ』
- ぶどうのジュースは、あまずっぱくて、のどをとおるとき、ひやりとしました。林を吹きぬける風を飲みこんだみたいです。たけしは、やっぱり、のどをこくこくと鳴らして、ひと息に、ジュースを飲んでしまいました。 『てんぐのくれためんこ』
- 気がつくと、どこからか、うどんのだしのにおいがしてきました。それから、かちゃかちゃと、食器の鳴る音、トントンと、ネギをきざむ音、ジャーッと、てんぷらをあげる音―――。 『てんぐのくれためんこ』
- できたてのてんぷらうどんを、たけしは、子ぎつねたちと、いっしょに食べました。ふうふういいながら、夢中で食べました。うどんは太くて、しこしこしていて、えびのてんぷらは、とびきり大きいのです。そして、うどんの汁の、あつくておいしいことといったら、もう、ほっぺたが落ちそうです。 『てんぐのくれためんこ』
- 若者は、おどり場のまん中にかざられた、くだものを、指さしていました。それは、よくうれたぶどうや、いちじくや、オレンジでした。サヨは、自分がいま、とてものどがかわいていることに気づくと、もう、すいよせられるように、かごのそばへ走ってゆきました。近づいてみると、くだもののかごは、思いがけなく、高い位置にありました。若者は、手をのばして、大きなぶどうのひとふさを、サヨにとってくれました。 『野の果ての国』
- 草の上に、ならんですわって、サヨと若者は、ぶどうを、いっしょに食べました。それは、舌が、しびれるような味でした。若者は、ぶどうを食べながら、ひっきりなしに、サヨに話しかけました。(略)サヨは、うんうん、とうなずきながら、やっぱり、むさぼるように、ぶどうを食べました。すると、自分の体が、すきとおっていくような気がしました。 『野の果ての国』
- きつねのごちそうといっても、そうばかにしたものではありません。/その日のテーブルには、ちゃんとお酒までついているのでした。/メニューは、にわとりのまる焼きとか、きのこのサラダとか、落ち葉で焼いたおいもとか、クルミ入りのおもちとか。そして、最後に、お茶と焼きりんごがでるはずでした。 『きつねの夕食会』
- まるで、のぼりたての月のようなそのくだものを、みゆきは、皮もむかずに食べました。あまくつめたく、とびきりみずみずしい梨でした。  『天の鹿』
- わんの中には、やまのいもと、栗と、大根がはいっていました。しめじも、まつたけも、しいたけもはいっていました。その白いゆげが、ふうっと顔にかかったとき、みゆきの胸は、ほのぼのとしたしあわせの思いでいっぱいになりました。  『天の鹿』
- 山ぶどうの森を通るときに、鹿はちょっと、足を止めていいました。/ 「山ぶどうが、ちょうど食べごろだ。あんたのかぶってる、頭巾にいっぱい、とってくれないかね。」   『天の鹿』
- 濃い紫のかわいい山ぶどうでした。ひとつぶ口にふくむと、ちょうどいい熟れぐあいです。清十さんは、自分の頭巾をぬいで、そこに山もりいっぱいのぶどうを入れて口をしばると、(略)   『天の鹿』
- ついさっき、頭巾の中に入れたはずの山ぶどうは、あとかたもなくなっていて、かわりに、とろりとした紫の飲みものがたっぷりはいっているではありませんか。   『天の鹿』  
- 楽器の店のとなりには、いちめんに、みごとな梨の実が、ひろげられていました。それは、大つぶで金色で、いかにもあまくみずみずしそうに見えましたので、(略)   『天の鹿』
- 「ひとわん食べてらっしゃい。とびきりおいしい、きのこの雑炊だよ。」   『天の鹿』
- お酒は、こっくりとあまく、たえの体にしみてゆきました。 『天の鹿』
- 牡鹿は、うなずいて、半分の無しを、それはもう、おいしそうに食べたのでした。そして、最後に、梨の種を、ほろほろと口からこぼすと、/「この梨の夢を、わたしはこれまで何度みたかしれない。」/と、つぶやきました。 『天の鹿』

- それは、貝やえびや、海藻のたっぷりはいったシチューのようなもので、海のにおいがした。 『鳥にさらわれた娘』
- それは、レストランアカシヤでよく使われるにわとりやエビや、カキの料理だけではありません。たとえば、カエルのもも肉の冷製料理とか、カメのスープ、かものオレンジソースに、ひばりのロースト、それから、シャケを、パイの皮につつんだ料理などです。  『海の館のひらめ』
- かわいいパイをひとつ焼いてごらんなさい。つくり方は、このあいだ教えましたね。生のサケと、マッシュルームと、薬味草を使います。味つけは、ひきたての黒コショウと、塩です。それを、小さい魚のかたちに焼きあげて、まっ白のナフキンにつつむんです。  『海の館のひらめ』
- (略)心をこめて、パイを焼きました。バターをきざむときも、粉をこねるときも、しまおは、あのピアノソナタを口ずさんでいました。  『海の館のひらめ』
- たとえば、きじの肉のはいった星型のパイとか、きのこのはいった木の葉型のパイとか、かぼちゃのはいったハート型のパイです。  『海の館のひらめ』
- ふりむくと、ほんとうにまあ、網の中には、どっさりのいわしが、銀色に光りながら、ぴちぴちおどっているじゃありませんか。  『ふしぎなシャベル』
- あのときは、庭のあんずが、鈴なりでしてね。  『あるジャム屋の話』
- このときふっと、わたしの胸に、ジャムの煮えるあのなんともいえないいいにおいが、うかんできたのです。  『あるジャム屋の話』
- たとえば、野ばらのジャム。桑の実のジャム、山すもものジャム、木いちごのジャム、こけもものジャム、かりんのジャム、ラズベリーのジャム、野菊のジャム、アカシヤの花のジャム……。  『あるジャム屋の話』
- わたしはそっと、ブルーベリーのしげみの中に、ふみこんでゆきました。そうして手をのばして、濃い青色の、小さな実をひとつぶ、もぎとりました。ほんのりと、白い粉(こ)のふきでた、みずみずしいくだものです。口にふくめば、あまずっぱい味がします。  『あるジャム屋の話』
- たしかに、そこは、しいんと静かで、だれひとりいないどころか、これまでも、だれにも荒らされたことのない場所のようでした。ここで、毎年毎年、あの小さな青い実がみのり、だれにもつまれることなく、熟れて地に落ちていったのでしょうか……。  『あるジャム屋の話』
- サファイア色をした小さな木の実は、舌の上にのせれば、しんとつめたくて、一滴の泉のようでした。  『あるジャム屋の話』 
- それからひっそりと、ブルーベリーの実を洗って、ジャムをこしらえました。あの小さな実を、とろとろと煮つめて、濃い紫色の美しいジャムを、心をこめてつくったのです。そうして、夜になりますと、ふたりぶんのロシア紅茶のしたくをしました。 『あるジャム屋の話』
- よもぎの、やわらかい芽をつんで、それをかごにいっぱい持ってかえれば、どの家でも、よもぎのだんごをこしらえてくれます。できたてのよもぎだんごに、あまいあずきをつけて食べたら、体の中にまで、春がくるようです。 『よもぎが原の風』
- よもぎが原のうさぎは、歌もうまいし、おどりもうまいし、料理もとくいでした。うさぎたちは、つみたてのよもぎを使ってとびきりおいしい、よもぎだんごを、こしらえてくれました。 『よもぎが原の風』
- ところが、うさぎたちの、よもぎだんごは、特別でした。/それぞれ、首のスカーフをはずして、野原の上のひろげると、その上に、ふっふと息を吹きかけるのです。すると、緑のスカーフの上に、まっ白いだんごが、つぎつぎに生まれます。だんごの数は、うさぎが吐いた息の数だけです。そして、そのだんごを、つみたてのよもぎの葉で、くるりとつつんで、できあがり。まるで、かしわもちみたいなよもぎだんごですが、これがまた、ふしぎにおいしいのでした。 『よもぎが原の風』
- あずきも砂糖も使っていないのに、それはとてもあまいのでした。そして、よもぎのかおりが、なんともいえないのでした。 『よもぎが原の風』
- 「おいしいもの売っている店が、たくさんあるよ。ほうら、ほうら。」/つづら屋さんが、指さす店は、どれも食べもの屋でした。一軒一軒のぞいてみますと、〈花びらゼリー〉というお菓子が、一個十五円。これは、桜の花びらがたくさんはいったゼリーで、ひとつひとつが、桜の葉の上にのっています。そのとなりは、〈さくらずし〉の店で、花びらをかざったちらしずしでした。これが、ひと皿三十五円です。〈さくらワイン〉というのは、花びらをうかべた飲みもので、一ぱい十円。 『花びらづくし』
- そして、いちばんすばらしかったのは、〈さくらアイスクリーム〉です。これは、まんまるいアイスクリームで、うすいガラスのお皿にのっています。きっと、花びらをしぼって色をだしたのでしょう、アイスクリームは、朝焼けの雲の色でした。  『花びらづくし』
- ちりんとすずしい音をたててガラスのスプーンが、そえられます。それですくって、ひと口食べますと、ほんのりと、いいにおいがします。あまくてつめたくて、さわやかで、そのおいしいことおいしいこと……(略) 『花びらづくし』
- 小鳥とばらを、パイにいれたら……ああ、きっと、春の森みたいな食べものができるわ!  『小鳥とばら』
- こんがりと焼けたパイは、バターとばらのにおいがしました。ふっと、少女はめまいがしました。  『小鳥とばら』
- パイは、花のかおりと、バターのかおりがしました。 『小鳥とばら』
- 小鳥のばらのパイを、すっかり食べおわったとき、少女の胸のなかには、美しい春の森がひとつ、できたようでした。 『小鳥とばら』
- そして、しばらくすると、いろいろな料理が、運ばれてきました。/野草のてんぷらに、川魚の焼いたのに、つる菜のおひたし、焼きなすに、とうふの揚げ出し、それから、なにがあったでしょうかね、とにかく、大きな座卓いっぱいに、ごちそうがならんだのには、おどろきました。 『谷間の宿』
- ぼくは、魚や野菜や、とうふを食べました。どれも、なかなか、いい味でした。ごはんは、自分でおかわりして、セリのうかんだおつゆを飲んで、つる菜の歯触りを、楽しんでいるうちに、ぼくは、すっかりいい気持になりました。 『谷間の宿』
- 夕食には、かならず、あのふしぎなおわんがだされた。おわんの中身は、せりのみそ汁だったり、すまし汁だったりする。汁ものばかりとはかぎらない。たけのこの煮ものや、わらびのおひたしや、ときには川魚のすきとおるように白い刺身が、花びらのように盛られていたりする。 『ききょうの娘』
- 小さなおわんを、口にはこぶと、ふっと、ゆずのにおいがしました。おわんの中身は、ひと口でぜんぶがすすれました。その味は、ひとことでいえば、山の味、山のにおいが、さあっと、のどをとおりぬけて、おなかに落ちていったという感じです。  『ねずみの福引』
- 「茂平さん、いのししのつくるふろふき大根は、特別でしてね、このゆげがすばらしいのですよ。このゆげを、じいっと見ていますとね、心があったかくなりましてね、悲しいことやいやなことなんか、みんな忘れてしまいます。われわれは、そのために、ふろふき大根をつくるんです。」 『ふろふき大根のゆうべ』
- 「さあ、どうぞどうぞ。今夜は、とびきりおいしいクルミみそがありますよ。」 『ふろふき大根のゆうべ』
- じゃがいもと牛乳が、とてもおいしい、北の町の話です。  『空色のゆりいす』
- つややかな空色のお皿は、なにを盛っても、はえそうでした。とくに、もぎたてのくだものなんかをのせたら、どんなにおいしそうに見えるだろうかと思いました。  『鶴の家』
- ある日、嫁さんは、思いきって、青いお皿に、おむすびをならべてみました。そして思わず、「ほっ」と、さけびました。麦ごはんに塩をまぶしただけのおむすびが、青いお皿の上に置かれると、たちまち、きりりと白く、おいしそうに見えてきたのです。  『鶴の家』
- けれど、盛られたおむすびを見ると、もう、ごくりとつばをのんで、手をのばしたのです。そしてひと口食べるなり、長吉さんは/ 「こらうまい!」と、さけびました。  『鶴の家』
- 麦のおむすびを、こんなにおいしいと思ったのは、はじめてです。麦ごはんのあまさと、塩のかげんが、なんともいえません。かめばかむほど、おいしいのです。  『鶴の家』
- それからというもの、ふたりは、毎日、青いお皿で食事をしました。このお皿に盛ると、どんな食べものも、おいしく思われました。まずしい猟師のことですから、昼のごはんが、ふかしいもだけのときもあります。それが、ふたりには、すこしも不足ではありませんでした。  『鶴の家』
- (略)わたしもサンドイッチをひと口食べてみますと、これはまあ、びっくりするほどおいしいのでした。マヨネーズと生クリームのまじった、なめらかな味が、なんといえません。  『べにばらホテルのお客』
- 青豆のスープ、赤かぶのシチュー、ふきの葉のいためもの、りんごとクルミのサラダ、野ばらの実のゼリー。  『べにばらホテルのお客』
- これから、いったい、どんなお菓子をこしらえようかと。べにばらホテルにふさわしいお菓子……森の中の小さなホテルをおとずれた人が、この食堂で、ほっとひと息ついて、緑の庭をながめながら食べるのに、どんなお菓子があうでしょうか。  『べにばらホテルのお客』
- 音楽家のだんなさんが、小鳥の奥さんのために、バウムクーヘンを焼いて、ベランダの白いテーブルにむかいあってお茶のひとときをすごす……。
- たまごを泡だて バターをとかし/ ミルクをあたため かきまぜて/ とろりとさせて とろりとさせて /フライパンに ほんの一ミリ / また一ミリ / 重ねて重ねて また重ねて /最後に赤いばらの花びら /心をこめて 愛をこめて /それがいちばんだいじなことなの  『べにばらホテルのお客』
- (略)歌のとおりに、たまごを泡だて、バターをとかして、ふしぎなバウムクーヘンを、こしらえにかかったのです。  『べにばらホテルのお客』
- それはまるで、魔法の呪文のようです。バウムクーヘンの木の年輪が、一ミリずつ、厚くなってゆきます。きれいに、きれいに重なってゆきます。  『べにばらホテルのお客』
- わたしは、かごの中の花びらを、ぜんぶボウルにうつしました。きつねは、ゼラチンをふやかし、砂糖を入れて、花びらの上に流すシロップをつくりました。  『べにばらホテルのお客』
- たとえば日よう日はえびのグラタン、月よう日はしいたけのグラタン、火よう日はかにグラタン、つぎの日はたまごのグラタン、それからじゃがいものグラタン、マカロニグラタン、とりのグラタン……、といったぐあいです。  『グラタンおばあさんとまほうのアヒル』
- まったくです。かんがえただけでも、のどがなります。まっ白いソースのなかから、みどりのほうれんそうがつぎつぎにでてくるのです。  『グラタンおばあさんとまほうのアヒル』
- さっそくテーブルにはこぶと、ふうふうふきながら、たべました。ソースはあつくて、ほうれんそうはやわらかで、まったくみごとなできばえです。  『グラタンおばあさんとまほうのアヒル』
- たしかに、それはなつかしいにおいです。バターと牛乳のにおいです。そのなかに、チーズがまじってとろとろととける、あのにおいです。/「あれはたしかに、おばあさんのグラタンだ。えびのグラタンだ。つまり、きょうは日よう日なんだ。」 『グラタンおばあさんとまほうのアヒル』
- とろりとした、とうもろこしのスープを、ひとさじ舌の上にのせたとき、洋吉はふかぶかとうなずきました。  『魔法をかけられた舌』
- やがて、大きな皿に、みごとなサンドイッチが運ばれてきました。洋吉は、さっそく、ひとつつまんでみました。そして、目をまんまるにしました。/こんなに、ふくよかな味は、はじめてでした。/「たしかに、うまい!」/とりわけ、ジャムとピクルスの味は、かくべつでした。  『魔法をかけられた舌』
- けれどもいま、洋吉は、あのピクルスとジャムの味を、わすれることはできませんでした。夢でも魔法でもいい、きのうのすばらしい食べものを、自分の手でこしらえなくては、どうしても気がすまなくなりました。 『魔法をかけられた舌』
- 「(略)こんど、ブイヤベースでも、こしらえたときに、よんでください。」/猫は、黒いマントをひるがえして、店を出ていきました。 『ひぐれのお客』
- さて、うさぎ屋のロールキャベツの味は、といいますと、これがもう、びっくりするほどおいしいのです。何枚も何枚もかさねて煮たやわらかいキャベツの中には、こっくりと味のしみたひき肉がはいっています。ソースは、これまた、とろりとこくがあって、ほんとうにもう、ほっぺがおちそうです。  『うさぎ屋のひみつ』
- (略)前の晩に、おばあさんは、裏の井戸ばたで、あずきを洗いました。つややかな、赤いつぶつぶの、上等のあずきです。  『遠い野ばらの村』
- やわらかく煮えたあずきに、お砂糖をたっぷり入れて、おばあさんは、おいしいあんこをこしらえました。ふっくりとたきあがったごはんを、すりこぎでたたいて、おもちにするのは三人の孫の仕事です。  『遠い野ばらの村』
- それは、まん中に、赤い野ばらの塩づけが、ひとつずつついている、かわいい白いおまんじゅうなのでした。  『遠い野ばらの村』
- おまんじゅうは、ほのかに、野ばらのにおいがしました。そっと口に入れると、つぶのあずきが、ぷちぷちと、それはいい舌ざわりなのです。  『遠い野ばらの村』

- あの大きな海を、ひとまとめにして口に入れたら、こんな味がするでしょうか。海のにおい、海のひびき、海の色……それをみんなあわせたら、こんな味がするでしょうか……。/ふたりは、夢中で、ふしぎな魚を食べました。  『海の口笛』
- それから、魚の身をふたつにひらくと、すきとおって白い肉があらわれました。それを、できるだけうすく小さく切って、貝がらの皿にならべおえたとき、まるで、約束のように、ろうそくは、燃えつきたのです。  『南の島の魔法の話』
- 魚は、こりこりとして、ふしぎな味わいでした。新月の海でとれた魚は、ことさら身がしまっていると話に聞いていましたが、それはまったくほんとのことだと、(略)  『南の島の魔法の話』
- 小包は、空色の紙につつまれていて、やっぱり空色のひもが、かけてありました。/首をかしげて、大工さんが、つつみをあけてみますと、中にはまあ、かおりのいい緑の野菜が、どっさりはいっていたのです。/レタスがあります。つまみ菜があります。セロリがあります。芽キャベツがあります。パセリがあります。カリフラワーがあります……  『だれにも見えないベランダ』
- ふしぎなベランダでとれた野菜は、あまく、みずみずしく、ひと口食べるごとに、体がすきとおっていくようでした。  『だれにも見えないベランダ』
- (略)つつみをあけてみますと、中には、つややかな赤いいちごがひと箱はいっていました。  『だれにも見えないベランダ』
- いちごはつめたく、かおり高く、ひと口食べるごとに、体が軽くなっていくようでした。 『だれにも見えないベランダ』
- これは、ふしぎななべでね、この中に、山の木の葉を、二、三枚入れて、ふたをして、ちょっとゆすって、またふたをあけると、木の葉は、すばらしい焼き魚になるんだよ。そこに、ゆずでもしぼって食べてごらん。そりゃもう、とびきりのごちそうだから。 『木の葉の魚』
- その夜、アイは、母親からもらったなべを使って、とびきりおいしい魚の料理をこしらえました。/なべの中に、朴の葉を、三枚ならべてふたをして、ちょっとゆすって、またふたをあけると―――。/どうでしょう。なべの中には、かれいが三匹、ちょうどいいぐあいに、こんがりと焼けていたのです。/アイは、焼きたての魚に塩をふりかけて、お皿にのせて、食卓に運びました。  『木の葉の魚』
- アイは、家の外へ出ていくと、木の葉を三枚とってきて、なべにならべました。それからふたをして、ちょっとゆすって、またふたをあけると、なべの中には、すずきが三匹、じゅうじゅうと焼けていました。それを、三枚のお皿にとりわけながら、アイは、まっ青な秋の海を思いうかべました。  『木の葉の魚』
- テーブルのしたくがすっかりできあがると、娘は、どこからか、大きな鉄のなべを運んできて、燃えているストーブの上にのせたのです。そして、そのなべで、なにやらふしぎな料理をつくりはじめたのでした。/ まあ、ひと口でいえば、魚のスープでした。とれたての魚や貝を、つぎつぎになべの中に入れ、しばらくコトコトと煮こむと、塩だかコショーだかで手早く味つけをしました。/「うまそうでしょ。」/船員が、老人の耳もとでささやきました。  『火影の夢』
- 銀細工の上等のスプーンでした。この店の自慢の品のひとつでした。それを、いきなり小さななべの中につっこむと、スープを、ひとさじすくいあげて、まず、味見をしました。それから、おおげさに目をつぶって、ぶるんと頭をふると、/「こりゃすばらしい味だ。」/と、さけんだのです。これを見ていて老人は、がまんができなくなりました。  『火影の夢』
- ひとさじのスープを、老人は、おそるおそる自分の舌の上にのせてみました。そして思わず、/「なるほど!」と、さけんだのです。/ まったく、すばらしい味でした。ただの魚のスープとは、とても思えません。こんなによい味の料理は、まずどこにもないでしょう。老人は、ゴクリとのどを鳴らすと、もういちど、なべの中にスプーンをつっこみました。  『火影の夢』
- 老人が、ふたさじめのスープを、なめるようにあじわったとき、船員は、ずるそうな目をして、こう切りだしました。/「どうです?おやじさん。このストーブを二、三日、おあずけしますから、すこしばかりお金を貸してもらえませんかね。」/ 老人は、目を大きく見ひらいて、しばらくだまっていましたが、やがて、/「いいとも!」/と、さけびました。その目には、熱にうかされた人のように、赤くうるんでいました。  『火影の夢』
- 「どうぞ、ぽんと口に入れて、カリッとかんでみてください」/ と、給仕係のカニは、言いました。松原さんは、お菓子をそっと口に入れてみました。/ 口いっぱいにひろがる海のにおい。ふしぎな甘さと、さわやかさ。そして、さくさくと、かわいた歯ざわり――  『海からの電話』
- ほんのりと、花のかおりがします。/ 一ぱい飲んで、目をつぶると、いちめんの菊の花畑が、うかんでくるのでした。花の上に、のどかな秋の陽が、ふりそそいでいます……ふと、郵便屋は、自分がいま、菊畑のまん中にすわっているような気がしました。色とりどりの花の上を、風がさーっとわたっていきました。   『ハンカチの上の花畑』
- にじのかけらは、ライラックの花のにおいがしました。あまくて、さっくりしていて、まるでむかしの思い出を食べているような感じです。帽子屋は、ひとさじごとに、自分が若がえっていくような気がしました。   『ライラック通りの帽子屋』
- 羊はそういうと、/「ここは、ぼくの店です。なんでも注文してください。」/と、うやうやしくメニューをさしだしました。メニューには、ひらがなばかりのエンピツの字で、/ にじのかけら/ ゆうやけぐも/ごがつのかぜ/そのほかいろいろ/と、書いてあります。   『ライラック通りの帽子屋』

- それから、おやつには、ビスケットを焼いてくれたわ。星や三日月や、木の葉のかたちをしたビスケットだった。   『丘の上の小さな家』

- 朴の木の葉は、小夜のてのひらよりもっと大きくて、いいかおりがします。それを小夜は、ときどきとってきて、宝温泉の台所へ、持ってゆきます。そうすると、小夜のおばあさんは、朴の葉にごはんやおもちをつつんで蒸してくれるのでした。朴の葉でつつんだ食べものは、やさしい山のかおりがします。夏になりますと、朴の木に白い大きな花が咲きます。  『大きな朴の木』
- 北風の女の子は、材料を、じょうずにまぜあわせて、まあるいケーキを焼きました。片面が焼きあがると、うまいぐあいに、ぽーんとひっくりかえして。熊は、もう、息をつくのもわすれて、それを見ていました。/ やがて、ふたりぶんのホットケーキが、ふっくらと焼きあがりました。その上に、はちみつが、たっぷりとかけられたとき、熊はうれしくて、胸がほかほかしてきました。こんな気持ちは何か月ぶりでしょう。/ふたりでホットケーキを食べながら、熊は思いました。この楽しいおやつの時間が、いつまでも、いつまでもつづいてほしいと。けっしておわらないでほしいと。  『北風のわすれたハンカチ』
- 「これを飲むと、体があたたまるよ。三日月村の、十七種類の薬草がはいっているからね。」十七種類もの草がはいっているにしては、すきとおったスープです。花のにおいと、土のにおいがします。 『三日月村の黒猫』
- 朝食は、あのエプロンの黒猫が、すっかり用意してくれます。黒猫は、粉をこねて、ストーブの上で、小さなまるい、おこのみ焼きのようなものを焼いてくれました。それに、セリのサラダと、野いちごをひと皿ずつ。セリは青あおとして、野いちごは、ふしぎなほどあまくみずみずしいのです。   『三日月村の黒猫』
- 黒猫は、ときどき、二階から、かごをぶらさげておりてきます。かごの中には、ワラビや、山ウドや、セリやヨモギが、どっさりはいっています。そして、食事の時間になりますと、それらを、じょうずに料理してテーブルに運んでくるのでした。  『三日月村の黒猫』


表記が見辛い問題は解決できていませんが、とりあえず更新です。

少しずつ増やしています。

では、また。


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