ジャニーズ問題の一件で顕在化した日本芸能界の構造上の問題と時代の変わり目
故・ジャニー喜多川の性加害問題について、とうとう事務所側が事実であることを認め、長年日本の芸能界を支配していたジャニーズ帝国が1つの終焉を迎えようとしている。
とはいえ、別段この話に驚きはないし「誰がいい誰が悪い」と責めるつもりもない、もう既にジャニーもメリーも故人である以上、仮に事実であったとて罰することはできない。
また、「知らなかった」といっているタレントたちにも罪はない、実際堂本光一が「僕はそういう被害を受けてはいない」と言っていることから、現役で活躍している人たちに手は出していなかったのだろう。
アイドルはあくまでも素材であり商品、だからそれが何かしらの理由で傷物にされたらまともな顔してデビューなんてできないだろうし、これまでチラホラ出ていた告発・暴露本もその真相はよくわからない。
もちろんジャニー喜多川がそういうことを行っていた事実を許してはならないが、今回の問題は決して単なる個人の性犯罪で片付く問題ではないのではないかと私は考えている。
それこそ、もう4年ほど前になるが、吉本の闇営業問題しかりUUUMの社長の不倫問題や赤字経営しかり、一見関係ないこれらの事象も結局は根幹の部分で繋がっているのではないか?
例えば闇営業問題にしたって、タレントたちが直営業をする時に反社会勢力とそれを斡旋する仲介業者の問題であって、タレントたち個人にその罪を押し着せる対処をしたことは適切ではない。
UUUMにしたもそうだ、あんな風にインフルエンサーたちが給与体系や働き方などの経営の根幹に無理があって、タレントたちが独立している時点でまずまともな事務所でないことは確かだ。
要するに吉本にしろUUUMにしろ、会社そのもの経営に問題があり、社員に対して理念をきちんと浸透させて働かせることができていないからこういう問題が発生するのである。
ジャニーズの場合はどうかというとこの両方の側面があって、会社内の社長が抱えていた闇(性加害)とそれを裏で黙殺してキックバックを受け取っていたであろう表に出ない既得権益たちという構造の問題だ。
もう識者は既にこの辺りまで見当をつけているが、なぜジャニー喜多川の性加害問題が今まで暴露されていなかったかといえば、端的にいってジャニーとメリーがメディアや局側のお偉方にお金を渡していたのだろう。
メリー氏が矢面に立って「やってない」とひたすら言い張り、ジャニー氏が裏でそういう違法な取引を行っていたということは十分に考えられる。
今回の問題に限らないが日本の芸能界の闇は結局根幹の部分で繋がっていて、結局圧力だの忖度だのといったものは瑣末な問題であり、一番タチが悪いのはそのお金で美味い飯を鱈腹食べている既得権益だ。
真実はいつも見えざるところに巧妙に隠されていて、ふとした瞬間にそれが表層の問題として露呈し、その時にはもう何もかもが手遅れの状態であり、今回もそれだっただけで何の驚きもない。
なお、この件の発端といわれる元ジャニーズJr.の岡本カウアンを責める向きもあるようだが、むしろ彼はよく勇気と覚悟を持ってカミングアウトしたと思うし、日本ではなく海外から発信したのも賢かった。
言いたくても言えず歴史の闇に葬られてきた痛ましい過去を決して風化させずにきちんと出してくれただけ凄いと思うし、カウアンがやらなくても遅かれ早かれジャニーズはこうなっていたはずだ。
今回の件で私が一番強く感じたことは「ああ、本当にジャニーズの時代が終わったんだなあ」であり、まさに「風の時代」を象徴的に感じさせる出来事であったと思う。
そもそも2016年の不自然かつ強引なSMAP解散の時点でもうすでにジャニーズ崩壊のカウントダウンは始まっていたといえるし、それ以前も以後も事務所を辞めるタレントが沢山出てきた。
これに端を発するように嵐の活動休止、V6の解散、King & Princeの内半数以上が退所、などなど主戦力がどんどん辞めていって、もはやジャニーズがトップではなくなってきている。
それだけ様々なジャニーズの崩壊が描かれた上での今回のこれだから、もはやかつての威光を誇った伝説のジャニーズ帝国はもはや過去の栄光であり、実質ここで一度「死」を迎えたといえるだろう。
だが、テレビ業界の主戦力の一角であったジャニーズが日本芸能界のトップじゃなくなったことで、もうただでさえオワコン化したといわれているテレビの時代も長くはない。
地の時代の産物として「一億総白痴の時代」などと揶揄されてきたテレビなる媒体はもはやその機能を喪失し、日本の芸能界(の構造)自体も崩れ去ろうとしている。
それこそこういう悪事が表面化し上を下への大騒ぎになっている今この瞬間ですら、見えないところでニタニタ笑ってキックバックを手にして笑っている阿漕な連中がいると思うと反吐が出る。
ああいう既得権益こそこの世から去ってほしいものなのだが、残念ながらああいう悪人に限ってなぜだかしぶとく生き延びてしまうのが世の不条理だから、何とも遣る瀬無い。
なんども言うが、少なくともテレビやネットで活動している現役のタレントたちに罪はないし、今ある活躍や地位・名誉のようなものだって彼ら自身の実力・運・縁など様々な要素があって成り立っているものだ。
だから私はこの件に関してはジャニー喜多川およびそれを秘匿していた姉のメリー、そしてその2名から裏でキックバックを受領していたであろう既得権益者たち以外の誰も私は恨んでいない。
それに、問題は多々あったとは言え、少なくとも初代ジャニーズをはじめ数々の天才的なアイドルたちを発掘し世に送り出す才能においてジャニー喜多川が類い稀なる天才であったことは事実だ。
いわゆる「ジャニオタ」と呼ばれるファンの方々、そしてお茶の間の私を含む世間一般の方々だってそのアイドルたちが紡ぎ出す舞台や作品に感動して、甘い汁を吸ってきたのも事実である。
別に批判するなとはいわない、人それぞれ理屈では割り切れない思いはあるだろうし、本音をいえば私だってここでは出せないぐらいの罵詈雑言を次々と吐き出したくなるのを我慢しているのだから。
だが、吉本をはじめ今日本の芸能界で栄華を極めた者たちがその威光を失い、また大企業も危なくなっているのを見るに、「地の時代」なるものの象徴がこの数年でどんどん崩れ去っていることへの驚き・衝撃の方が大きい。
ゲッターズ飯田が「2023年は今までの比じゃないくらいに風の時代への変化が現象として現れる」といっていたが、天下のジャニーズの崩落もまたそれなのであろうか。
様々な思いを抱えながら、日本の芸能界が今後どのような「死」を迎え、そこから「再生」なり「新生」なりをどう果たしていくか、楽しみである。
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