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『テニスの王子様』『新テニスの王子様』に出てくる超越系の形態・技の一部を他の漫画・アニメ作品と比較してみる

『テニスの王子様』『新テニスの王子様』は強さのインフレに従って様々な新形態や新概念が登場したわけだが、特に超越系の形態・技をピックアップしてみる。
許斐先生は生粋のジャンプ漫画大好きっ子として育ったことからして、他作品にヒントを得て作ったであろう様々な技・形態を今回は検討してみたい。
どうしてもあの異次元テニスを「テニヌ」と一言で片付けてしまわれがちだが、何もない無のところからあのような技・形態の数々が生まれるはずがない。
というわけで、今回はごく一部ではあるが、私が「元はこれではないか」「この技に近いのではないか?」というものを選んでみた。

「テニスの王子様」の技・形態がどういうものかピンと来ない人は是非ここからヒントを得て欲しい。

無我の境地

「テニスの王子様」を「テニス」から「テニヌ」へ塗り替えた決定打である無我の境地は全てのステータスを一時的に倍加させ、更に他者の技をモノマネできるという特典付きだ。
劇中では最初に越前リョーマが対赤也戦で見せたが、副作用としては途中で疲労が襲いかかるというものがあり、これに近い概念はどのようなものがあるだろうか?

マジンパワー(『マジンガーZ』)

まず挙げられるのはロボアニメ『マジンガーZ』に出てくるオーバーブースト機構のマジンパワーであり、一時的に機体性能の限界以上の力を引き出す技である。
これであらゆる強敵に勝っているわけだが、その反動でパワーを使用した後は戦闘が厳しい状況になるが、ゲーム「スーパーロボット大戦」ではなぜか単なるパワーアップとして使われた。
他のロボアニメでもこういうブースト技はあるが、その元祖にして代表といっても過言ではないだろうから、今回敢えて紹介させていただいた。

界王拳(『ドラゴンボール』)

ジャンプ漫画大好きっ子でこの技を知らぬ者は居ないであろう代表のオーバーブースト機構が『ドラゴンボール』に出てくる界王拳という技である。
名前の通り界王様が悟空に伝授した技であるが、一時的に己の力を2倍・3倍に引き上げる反面使用後には反動で疲労が襲いかかってくるので乱用は禁止だ。
超サイヤ人が出てからは長らく使用されていなかったが、アニメ版『ドラゴンボール超』ではヒット戦や力の大会で超サイヤ人ブルーと併用する形で用いられた。

ギア(『ONE PIECE』)

界王拳の直系のオマージュが『ONE PIECE』の主人公モンキー・D・ルフィが使う「ギア」であり、こちらも一時的に肉体の限界を超える力を引き出す。
最初はセカンドまでが精一杯だったが、2年の修行を経て新世界からは普通に使えるようになり、またギア4th以降になると見た目が大きく変化する。
力をパワーアップさせる副作用が長らくのネックだったが、ワノ国で太陽神ニカとして覚醒したことで力を凝縮できるようになった。

百錬自得の極み

無我の境地の奥にある3つの開かずの扉として出てきた扉の1つが「百錬自得の極み」であり、初登場は全国大会中の比嘉戦S1で手塚国光が使用した時である。
効果としては無我の爆発的なパワーを左手一本に凝縮することで全て球種・破壊力・回転・軌道を倍返しにする「力」に特化した形態だが、これに近い技は何があるか?

キングオブハートシャイニングフィンガー(『機動武闘伝Gガンダム』)

まず私が咄嗟に思いついたのはロボアニメ『機動武闘伝Gガンダム』の23話でデビルガンダムを倒すときに使用されたキングオブハートシャイニングフィンガーである。
このシャイニングフィンガーはそれまでとは違い、真のスーパーモードである明鏡止水に目覚めたドモンが己の右手にパワーを凝縮させるかのような描写が散見された。
そのため通常であれば倒すことは不可能なはずのデビルガンダムを一撃で倒すことに成功しており、この回限定の必殺技として取り上げておきたい。

武装色の覇気(『ONE PIECE』)

後発ではあるが、『ONE PIECE』の武装色の覇気もまた武器や腕・足などを硬化させることで力を倍加させて凄まじい破壊力を生み出す技である。
代表的なキャラはルフィ・ゾロ辺りだが、特にゾロは己の刀を全て黒刀にできる力を持ち、新世界ではこの技で無双しまくっていた。
そのゾロは後述する覇王色持ちではないかという疑惑も出ており、現在に至るまで何かと便利で使いやすい能力として重宝されている。

我儘の極意(『ドラゴンボール超』)

こちらも後発だが、漫画版『ドラゴンボール超』のグラノラ編でベジータが編み出した新形態に「我儘の極意」という破壊に特化した形態がある。
眉毛がなくなり顔つきや目つきが破壊神ビルスに近くなるが、悟空が手も足も出なかったグラノラに攻撃でき圧倒していた。
まだまだ使いこなせていないが、こちらは本人の闘争心があれば無限に戦闘力を引き上げることができる仕様になっている。

才気煥発の極み


「無我の境地」の3つの開かずの扉の2つ目の扉として出てきたのが頭脳活性型の「才気煥発の極み」であり、こちらは千歳千里が最初に橘戦で披露した。
最短何球で決まるかをシミュレートしてその宣言通りに得点できる優れものだが、百錬や天衣無縫に比べてどうしても地味で不遇な扱いになっているのは否めない。
そんな才気煥発に近い形態といえば何があるだろうか?

ニュータイプ(『機動戦士ガンダム』)

頭脳活性として一番近いのは『機動戦士ガンダム』に出てくるニュータイプであり、アムロ・レイ、シャア・アズナブル、ララァ・スンの3人がこれを覚醒させた。
「ピキーン」という効果音と共に発動するのだが、相手の攻撃の予測ができ反応速度を高めることができる頭脳活性型の戦い方の元祖といえるであろう。
しかし、シリーズが進むごとに強さのインフレに飲まれてしまった感はあり、当時からファンの間で賛否両論絶えない代物である。

ゼロシステム(『新機動戦記ガンダムW』)

ニュータイプの未来予測をロボットのプログラムとして応用したものが『新機動戦記ガンダムW』に出てくるウイングガンダム・ゼロのゼロシステムというものである。
未来予測を含め凄まじい力を発揮する一種のチート機構だが、その分パイロットの精神に凄まじいダメージを与え、場合によっては精神崩壊で廃人化してしまう。
劇中ではヒイロ・ユイとカトル・ラバーバ・ウィナーが犠牲者として廃人化しかけたが、なんとか免れてゼロシステムに依存しない戦い方を展開した。

見聞色の覇気(『ONE PIECE』)

『ONE PIECE』における頭脳活性型の形態として出てきたのが見聞色の覇気であり、劇中では特にウソップとサンジがこの形態を使用することが多い。
こちらもやはり相手にどうすれば勝てるかという予測や先読みに便利なのだが、相手がそのスピードに肉薄した場合には通用しない。
やはり頭脳活性型はどうしても地味になってしまうのかいまいち不遇なイメージが拭えず、現在ではほぼ形骸化してしまっている。

五感剥奪

天衣無縫の対極のようにして『テニスの王子様』『新テニスの王子様』で描かれていたのが幸村精市の「五感剥奪」であり、文字通り全ての感覚を奪い去ってしまう。
最初は自動的に相手がかかる「イップス」の究極系として描かれていたが、「新テニ」では幸村自身の意思でそれができるようになった。
天衣無縫対策として「零感のテニス」が登場したが、ほかの作品でこれに類似したものはあるだろうか?

天舞宝輪(『聖闘士星矢』)

こちらも阿頼耶識同様に乙女座の黄金聖闘士・シャカが使用する最強の技の1つであり、相手の五感を全て奪うものの代表である。
しかも奪われた五感は決して元に戻らないため幸村のそれよりタチが悪いが、フェニックス一輝は唯一生き延び、セブンセンシズに覚醒した。
全国大会決勝S1の流れと宇宙規模のバトル漫画の展開がまさか似たものになるだなんて誰が想像し得ただろうか?

天衣無縫の極み

無我の境地の最後の開かずの扉が「天衣無縫の極み」であり、劇中では全国大会決勝S1で越前リョーマが到達して幸村を圧倒した。
効果としては全てのステータスを倍加させた上体力回復・更に精神技のデバフまで解除してしまうという優れものだが、「新テニ」では使用者が次々現れてバーゲンセール状態である。
そんな無我系最強の技である天衣無縫に近い概念の形態は何があるのか?

セブンセンシズ(『聖闘士星矢』)

黄金聖闘士になるための最低条件として必要だったのが『聖闘士星矢』の「セブンセンシズ」であり、小宇宙と繋がることができる。
フェニックス一輝が代表的だが、天舞宝輪を突破した技として有名であり、その上位互換として「阿頼耶識」が出てきた。
小宇宙を最大限まで燃やすことができる最初の形態であると同時に「無我の境地」の概念とも近いと言える。

明鏡止水(『機動武闘伝Gガンダム』)

まず近いのは『機動武闘伝Gガンダム』でドモン・カッシュが到達した真のスーパーモードと言われる明鏡止水であり、見た目は全身が黄金色に発光し全ての能力を倍加させる。
怒りのスーパーモードの対極として描かれており、負の感情を消しながら搭乗者の心が最大限にまで高ぶった時にのみこの形態に辿り着くことができるため、最強の形態だ。
使用者はギアナ高地で修行した新シャッフル同盟の5人とランタオ島での東方不敗マスターアジアのみであり、この形態を発動した時はフィニッシュの段階と見ていい。

覇王色の覇気(『ONE PIECE』)

後発にはなるが、『ONE PIECE』に出てくる覇王色の覇気もまた天衣無縫に近い概念の無敵形態であり、戦う前に覇気だけでほとんどの敵を気絶させてしまう。
最初に披露したのは赤髪のシャンクスであったが、後にレイリーとの修行によってルフィも開眼し、ワノ国編ではゾロもその片鱗があるのではとの噂もある。
武装色・見聞色と違いこちらは先天的な才能の資質なので、天衣無縫の極み同様にそこに到達できる人は限られるが、やはりバーゲンセール化は避けられなかった。

身勝手の極意(『ドラゴンボール超』)

こちらも後発だが、『ドラゴンボール超』に出てきた身勝手の極意もまた天衣無縫の極みに近い無我の境地の最終形態といえるのではないだろうか。
最初に孫悟空が力の大会で到達しており、アニメではケフラ戦とジレン戦で到達しており、髪が白金(プラチナ)色になる「極」まで到達した。
防御と回避に特化した形態である反面攻撃力を上げることはできないため、その点ではどうしても我儘の極意のベジータに後塵を拝する。

悪魔化

無我の境地並びにその奥にある3つの開かずの扉の対極として位置付けられている悪魔化だが、以前にも述べたようにこちらは無我の境地の暗黒進化版である。
劇中では全国大会準決勝S3で赤也が披露した形態であるが、一時的にパワー・スピード・メンタルを上げる反面テクニックとスタミナを異常に消耗させる危険な形態だ。
海堂薫も一度だけなったことがあるが、現在では赤也専用となっており、果たして他作品でこれに似た技といえば何があるだろうか?

超サイヤ人(『ドラゴンボール』)

意外に思われるかもしれないが、「激しい怒り」でパワーアップする形態の元祖は「ドラゴンボール」のフリーザ戦で出てくる超サイヤ人である。
黄金色の気を身にまとう「変身」であるのだが、ベジータによるとより興奮した状態になり凶暴性が増すので長時間保っていられないという弱点があった。
また老界王神からは「邪道」とまで評されており、サイヤ人にしかなれないという条件までついているが、人造人間編でバーゲンセール化してしまう。

怒りのスーパーモード・バーサーカーモード(『機動武闘伝Gガンダム』)

悪魔化の元祖として一番近いといえるのは『機動武闘伝Gガンダム』に出てくる怒りのスーパーモードとそれに類似したバーサーカーモードである。
劇中でこれにかかったのは主人公ドモン・カッシュとアレンビー・ビアズリーだったが、2人とも劇中では激昂しやすい負の感情が奥底にあった。
最終的には「それは危険である」「退屈なだけ」と否定されてしまっており、やはりその点も含めて悪魔化の元祖だといえるだろう。

ヴィクター化(『武装錬金』)

『武装錬金』のヴィクター化もまた似たような形態であり、全身が赤黒く、そして髪の毛が白髪になってしまうという禁忌の形態である。
力のみを追い求めて絶望と孤独を味わった者だけがこの形態に辿り着くのだが、劇中では武藤カズキとヴィクターのみが披露していた。
最終的には力に呑まれたヴィクターが破滅してカズキが生き残ったが、両者の違いは「愛する者」の有無にあったといえる。

光る打球

「新テニスの王子様」に出てきた対戦相手を破壊する危険な打球「光る打球」は作品を代表する新必殺技として劇中で定義されている。
使用者は平等院鳳凰・越前リョーマ・越前リョーガ・亜久津仁の4人だがきちんと技として実戦で使えるレベルに昇華したのはリョーマと平等院のみだ。
リョーガ曰く内臓にダメージを負わせてしまう「光る打球」だが、ほかの作品ではこれに近い技にどんなものがあるだろうか?

爆熱ゴッドフィンガー(『機動武闘伝Gガンダム』)

まずは『機動武闘伝Gガンダム」の爆熱ゴッドフィンガーが挙げられるが、こちらはシャイニングフィンガーとは違いより内部破壊に特化した技である。
ハイパージェネレーターで溜め込んだ莫大なエネルギーを右手に凝縮してスライドアームカバーをつけて破壊力を閉じ込め、指関節のドリル回転でさらに威力を上げた。
技の形としては腹部のコックピットを直接狙い頭上に持ち上げる貫手として用いられ、破壊エネルギーを限界まで溜め込みヒートエンドで爆発四散させる技だ。

螺旋丸(『NARUTO』)

『NARUTO』の螺旋丸も強大な威力を持った内部破壊の技だといえ、劇中ではうずまきナルトの他にはたけカカシや自来也、波風ミナトなども使うことができる。
純粋な破壊力ならサスケの千鳥をも上回り風遁螺旋手裏剣といった応用技も可能だが、膨大なチャクラ量と繊細なテクニックが必要なため習得には時間がかかった。
螺旋回転というのが破壊力を押し上げてくるわけであり、劇中でもこれに匹敵する破壊力のある技はなかなかないだろう。

流桜(『ONE PIECE』)

後発にはなるのだが、『ONE PIECE』のワノ国編でルフィが武装色と覇王色を応用させることで進化させたのが流桜であり、こちらはルフィ限定の必殺技だ。
ゾロが持っている閻魔と並んで四皇の一人であるカイドウにダメージを与えることのできる数少ない技の1つであり、こちらもやはり破壊力を凝縮している。
修行シーンをあまり大々的に描かない『ONE PIECE』において、久々に技のメカニズムと習得の過程が描かれた珍しい技の1つだ。

阿頼耶識

無我の境地に取って代わる『新テニスの王子様』の新形態として登場したのが「阿修羅の神道」だが、その最終形態が第八識・阿頼耶識である。
「阿修羅の神道」は現在のところ平等院鳳凰・デューク渡邊・徳川カズヤ・亜久津仁が開眼しているが、越前リョーマも開ける可能性があるだろう。
劇中では世界最強の現役プロ・ボルクを圧倒したこの形態に近いものは何があるだろうか?

阿頼耶識(エイトセンシズ)(『聖闘士星矢』)


漫画『聖闘士星矢』に出てきた阿頼耶識がおそらく「新テニ」における阿頼耶識の元祖であり、「死んで復活したものだけが到達できる」点も含めての開祖である。
この段階に行くと宇宙の真理にまで到達できることが可能になり、冥界と人間界を行き来することができるようになり、死者の怨念や闇といったものに影響されない。
最初にたどり着いたのはシャカであり、劇中でも屈指の戦闘力の持ち主として描かれているため間違いなく最強の形態であろう。

阿頼耶識システム(『機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ』)

脊髄にナノマシンを注入し「ピアス」と呼ばれるインプラント機器を体に埋め込むことで第八識を擬似的に得られるのが『機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ」の阿頼耶識システムである。
「Gガンダム」に出てきた人機一体の概念を擬似的に実現している形だが、機体のシステムにしたのは「死人は復活しない」ガンダム世界でパイロットが滅んで蘇ることはないからだろう。
しかし、ゼロシステム同様無理にパイロットの体に負担をかけているため、とんでもない代償を払っているシステムであることは疑いようがない。

まとめ

改めて数々の形態・技に近いものを挙げてみたが、こうしてみると「テニスの王子様」に出てくる数々の形態・技もわかりやすくなったのではないだろか。
今回はっきりしたことは「阿頼耶識」が「阿修羅の神道」の最終形態というだけではなく「天衣無縫の極み」の更に先であるということだ。
越前リョーマと徳川カズヤが決勝戦で勝つためのキーワードがここに隠されているのではないかと私は思う。

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