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『新機動戦記ガンダムW』を現在見直しているが、これほどに「酔える」ガンダム作品は他にない

本来なら『電子戦隊デンジマン』の16話レビューを本日は投稿しているところだが、見てもらえればわかるように今見直すとカット割その他も含む作品としての総合力があまりにもダサすぎて、もしかすると完走は難しいかもしれない
私の映像作品に対する評価や感性が変わったのと、あとは何よりも「とにかくクオリティの高いものを」という、作品に対して求める基準値が昔より爆上がりしているのもあって、「デンジマン」は残念ながらその基準に満たない
むしろ最近ではなぜこんなものが「スーパー戦隊の基礎・基本を確立した作品」などと記念碑の如く評価されていたのかが謎であり、逆にいえばそれは私と戦隊ファンあるいは世間一般の価値観とのズレがあるからなのだろうか。
昔からそうだが、私は「王道」は好きだが「大衆」「民衆」は好きではない、右向け右と言われたら敢えて左を向いて逆の道に行きたくなってしまうような人間であり、会社勤めや組織というものが根本から大嫌いである。

また、これは最近特に自覚があるのだが、私はいわゆる「他人からおすすめされたもの」や「他人のアドバイス」なるものを聞いて上手くいったためしなんてほとんどない、なぜならばアドバイスのほとんどはそいつの主観でしかないからだ。
それに、そういう人のアドバイスを素直に聞く人間など初速での伸びがいいだけで、普段から自分で考えて行動する習慣・癖がないから上昇志向というかハングリー精神に乏しく、だから本当の本当に私が信用する人のことしか聞かない。
だから、ネットで初対面にも関わらず、私のことをろくすっぽ奥底まで知りもしないでああしろこうしろと要求してきたり、あるいは私の言い分を難じて考えを改めさせようなどと思うような敵の意見など聞く価値は1ミリもないのだ
そういうやつは一見尤もらしいことを言っているようで、私の言い分はそいつ自身に都合が良くない異物あるいは異質なものだから、何とかしてでも邪魔して潰してやろうなどとあれこれ画策してしまうのだろう。

そんな生き方を幼少期からほぼ貫いて今に至るわけなのだが、そんな私だからこそ「酔える」作品として最近面白くなってきているのが『新機動戦記ガンダムW』であり、改めて見直すと『機動武闘伝Gガンダム』とはまた違う尖り方をした作品だと気づく。
そしてその「尖り」がもはや「厨二病」なんて陳腐な言葉では形容し難いほどに突き抜けており、よくもまあ1995年にここまでのものが作られたものだと思うのだが、ネットなどで調べてみると本作に対する評価はあまり芳しくないらしい。
中でもファーストガンダム原理主義者の某KTは本作を単なる「ウケがいいだけの商品」としてしか見ていないようで、なぜこれが心地よいかということの部分に触れられていないのだから、私に言わせれば「センスがない」としか思えないのだ。
実は私がガンダム作品の中で最も「面白い」上で「酔える」のはこの「ガンダムW」であり、「Gガンダム」は「面白い」のだが「酔える」感覚はなく、何だかセオリーをセオリー通りにやっているというストレートな印象である。

私が「Gガンダム」に対して抱く思いはわかりやすくいえば「憧憬」なのだが、「ガンダムW」に関してはむしろ「共感」の方が強くあって、実は歴代ガンダムの中で最も私自身が近いと思う主人公像は本作のヒイロ・ユイだ。
もちろんそれは決して見た目のかっこよさではなくキャラクターの方であるが、ヒイロは他のガンダム主人公に比べると徹底して「人間性」「共感性」と呼べる要素がなく、歴代ガンダムに対する真のカウンターになった主人公である。
1話を見て寡黙な状態で登場し、いきなり敵MSを2体も破壊して狂ったように高笑いし、直後ゼクスに機体ごと海に沈められ、自分を目撃したリリーナから逃走し、学園で再会し招待状を破いた上で「お前を殺す」などと言ってみせた。
これはアムロ・レイをはじめとする富野ガンダムはもちろん「Gガンダム」のドモン・カッシュですらやったことないことだし、またヒイロより後に出てくる主人公でもこんなエキセントリックな人物はまずいないだろう。

しかもヒイロだけではなく他の4人もまた癖が強い人物たちであり、特に闇が深いカトルとヒイロ以上に淡々と敵を殺すだけの少年兵であるトロワの面白さと言ったらなく、それまでのガンダムの主人公キャラにここまでぶっ飛んだ奴らはいなかった。
「Gガンダム」に出てくるガンダムファイターも確かにぶっ飛んではいるのだが、あれはどちらかといえば少年ジャンプに出てくるバトル漫画のキャラ付けなのだが、ヒイロたちは感情面がゼロではないが淡々と任務活動を遂行する工作員である
しかも戦っているのが地球連邦だから、言うなれば「悪人がさらなる悪人を倒す」というピカレスクロマンであり、尚且つヒイロたち5人は劇中で実は共闘する場面なんてほとんどなく、5人の個人事業主が利害の一致でたまたま会うだけだ
歴代ガンダムの中でもここまで「仲間で助け合って戦争を生き抜く」といった感がなく、その中でもヒイロの徹底した排他性と圧倒的なパイロットとしてのスキルと頭の回転の速さや判断力・胆力の強さは歴代屈指である。

なぜ私がそんな普通の人なら絶対に共感できないというか「共感」という要素からは最も遠いところにいるはずのヒイロに共感してしまうのかというと、彼はある意味で私の生き様の主人公としての具現化だからだ。
集団というものに全くなじまずひたすら目の前の任務をしっかりこなし、必要とあらば自分の命すら顧みずに無茶な行動に出てしまうところ、そして何より他者からの理解というものを拒絶し続けているところ。
全く「富野的」でもなければ「今川的」でもなく、かといって同年の「エヴァ」のような感じでもない、徹底して「非日本的」な画面・リズム・音楽・メカ・キャラの全てが彩られているのである。
だから私は「Gガンダム」を「ガンダムらしくなく見えるが実は最も富野イズムが色濃いガンダム」として評価しており、逆に「ガンダムW」は「ガンダムらしく見えるが実は最も富野イズムからはかけ離れたガンダム」と評価しているのだ。

昔はよく「Gガンダム」を「ガンダムである必要がない」と評価されていたが、それは単に富野ガンダムが示してきた形式とは真逆のことをやっていただけであり、よっぽど作品としてのイズムは富野ガンダム的である。
それに対して「ガンダムW」こそ私は「ガンダムである必要がない」し、何だったら「ロボットもの」ですらある必要がないと思えるほどに映像作品として先駆的な前衛美術を見ている気分になるのだ。
それは決して世間に言うような「女性ウケがいい」ということと全く関連性がなく(女性ファンがガンダムW好きなのはいわゆるジャニーズの推し活みたいなものだろう)、ただ形式だけが反復されていく。
私はそういう意味で「ガンダムW」は事によるとあらゆるガンダムシリーズの中で最も「映画的」な感性で作られており、徹底して「日本的」な要素を省いたからこそ「Gガンダム」とは違う面白さを創出できたのではないだろうか。

本作の1つの特徴としてはいわゆる「語り口」が存在しないことであり、ただ表面上のキャラクターの言動・行動とMS戦が表面上で淡々と進んでいるのだが、その進み方が決して「物語的」な進み方ではなく「映像的」な進み方である。
元々池田監督自体があまり口うるさく語るのを好まないこともあるのだろうが、主人公たちが必要以上に言葉を発さずに「動き」でほとんどが進んでいく語り口はそれこそ北野武監督の『ソナチネ』にも通じるものがあった。
余計なセリフのやり取りがないから映像のスピードが阻害されることがないし、むしろデュオのように本作においては良く喋るキャラクターほど「こいつうぜえ。黙れ」と思えてくるのはそこの部分があるからだろう
そうしてただただ「ゲーム」としての殺伐とした「戦争」が進行していくのだが、なぜだか主人公たちはそれだけ強いにもかかわらずほとんどが負け戦に終わってしまうという逆構造なのが形式として面白い。

要するに「ガンダムW」を私が見ていて面白いと思えるのは「映像の形式」としてであって、決して「意味内容」ではないので、だから物語に期待して見てしまうと本作の評価はどうしても低くならざるを得ないだろう。
しかし、どうにも日本人という種族は「創造性」とか「発想」とかではなく「共感性」「物語」といった物差しで作品を評価しがちであり、特にガンダムシリーズにおいてはどうしてもその傾向が強い。
ヒイロの性格や言動が鼻についたという人がいるが、そういう人はおそらく幼少期にヒイロのような生意気な生き方をしている人にいじられるなどの洗礼を受けて嫌な思いをしたせいではないだろうか。
親友の黒羽翔は私のことを以前メールにて「ヒイロ・ユイのようである」と言われたのだが、この戦いに対する徹底したドライさと割り切りや個人主義的な生き方は最も私に近いスタイルである。

だからこそ私はその真逆にいる「Gガンダム」の主人公であるドモンに「憧憬」を抱いてしまうのである、ああいう仲間に頼りながら強くなる生き方なんて私には絶対にできないから。
無論私だって人として生きていく以上は人に助けられて自分があることはわかっているが、だからと言って集団や仲間と「群れる」ような生き方はしたくないし今後もしないであろう。
そういう「決して群れない」という孤高な生き方をしているヒイロを中心にエキセントリックな人物が織りなす「酔える」ガンダム作品である本作は決して万人におすすめはしないし「見ろ」とは言わない。
だが、間違いなくわかる人にはわかるし、他のガンダム作品にはないスタイリッシュなかっこよさがあるので、時々思い出したように見直すとその癖の強さに思わず悪酔いしてしまう

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