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『デジモンアドベンチャー02』の最終回25年後について、シリーズディレクター角銅博之氏の発言を基に考察してみた

今回のテーマは『デジモンアドベンチャー02』の最終回25年後についてですが、これもまた大輔ファンのみならずデジモンファンなら一度は通るべき話題でしょう。
とは言え、あの最終回の25年後に関しては唐突な印象は否めず、急に時間が経ったような感覚でサラッと設定だけが絵と共に示されるだけだから戸惑いも少なからずありました。
ただ、シリーズディテクター角銅博之氏の以下の記事を見て、あの25年後の結末が決してそうではなかったことに改めて気付かされたのです。

元々私が知っていたテレビのアドベンチャーシリーズの設定として「原作は高石タケル史観論」「当初はタケルが02の主人公で大輔がライバル兼親友の予定だった」「石田ヤマトと八神ヒカリがデジモンカイザーになる予定だった」があります。
そこから様々な紆余曲折を経てあのグダグダな「02」が出来上がった訳ですが、それでも最終回に「25年後」という結末になることだけは初期からの構想で決められていたことのようで、それを一次情報として流してくれるのがありがたいです。
色々なことを窺い知ることができて面白いのですが、個人的に特に気になった部分を抜粋します。

前提としてTVアニメ前作『デジモンアドベンチャー』から続く設定として、人間の子供とデジタルモンスターがパートナー関係となることが発生する。その数は年ごとに倍になる。前作の舞台でもあり放映当時リアルタイムの1999年はその数が8で、番組の主人公の子どもたちだった。3年後の2002年を舞台とした『02』では64人があらたにそうなってるはずで、そのうちの3人が番組の主人公チームのうちの3人。

25年後、大人の太一の職業を外交官、と表記しましたが、一つの国にとらわれてるわけではなく、自由な立場で平和や友好をもたらそうとする人を表すうまい言葉が見つからなかったからです。その活動があまりに多岐にわたって多忙だったため、後輩である大輔よりも結婚や子供を作るのが遅れることになり、最終回の場面では太一の子供がほぼ一番幼いということになってます。

太一たちが活動を本格化される頃まだ学生だった後輩たちは、それでもあちこちでうまいものを食べさせようとする大輔。賢は年々増えるデジモンを使った犯罪に対して、かつての自分と同じ間違いをさせたくないと、その頃創設される警察のデジモン対策課に志願。そうした賢の活動を見ていた伊織は悪いことを憎むだけでなく色んな事情があるんだと言うことをわかっていて弁護士へ

まず1つ目は「選ばれし子供の数が毎年倍増している」という設定であり、「02」の時点では大輔たちを含めて既に64人もいる、つまり「選ばれし子供のバーゲンセール」が起きていたということです。
「02」の3〜4クール目では実際に現実世界のあちこちに立てられたダークタワーを大輔たちが倒し世界中に現れたデジモンたちを元の世界に戻すというようなことをしていました。
その時にマイケルやカトリーヌをはじめとする世界中のテイマーとデジモンと共に共同戦線を張ることになるのですが、ここから更に倍加していくのだそうです。
そこで、まず現時点で明らかにされている「tri.」「ラスエボ」「ビギニング」も含めて設定上その時々でどれだけのテイマーとパートナーデジモンがいるのかを計算してみました。

  • 1999年(『デジモンアドベンチャー』)8人

  • 2002年(『デジモンアドベンチャー 02』)64人

  • 2005年(『デジモンアドベンチャー Tri.)512人

  • 2009年(『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』)8192人

  • 2012年(『デジモンアドベンチャー 02 THE BEGINNING』)65536人

  • 2027年(『デジモンアドベンチャー02』最終回25年後)2147438648人

とんでもない数です、2027年の段階で20億人もいるという設定なので、もはやバーゲンセールのレベルを遥かに超えたエントロピーの増大であり、しかもまだ各地で紛争が続いているという状況でしょうから、そりゃあ大変ですよ。
実際、現実世界でも例えば2001年には大輔が屋台ラーメンを始めたニューヨークでアメリカ同時多発テロ事件が起こっていましたし、2015年には過激派組織イスラム国、更に2022年にはロシアとウクライナの戦争も始まっています。
それを考えれば大輔たちもまたその影響を受けることになるでしょうから、今度は「デジモンを使った戦争」があちこちで起こる訳ですよ、それこそデジモンカイザーが可愛く思えるレベルのね。
まさかあの最終回の25年後が決してヤケクソになった結果適当に作ったものではなく、現実の世界情勢なども加味した上できちんと話し合った末のあのエンディングだったなんて思いもしませんでした。

そう考えると本当に「Tri.」「ラスエボ」は余計なことしてくれたよなあと、せっかく角銅さんを始め当時のスタッフがきちんと議論を重ねて出したあの結末を自分たちで壊しに行ってるんだもの。
しかもその中の一人が他ならぬチーフプロデューサーの関弘美だった訳ですから、角銅さんは余計に落胆というかガッカリしたんじゃないかなあ、まさかかつての自分の同僚が目先の感動のために魂を売り渡すような人だった訳ですから。

閑話休題、次に太一が早稲田大学政治経済学部を卒業して外交官になったことですが、一応ちゃんと結婚したのですね、「独身貴族で養子」だなんて言ってしまってごめんなさい。
いやーほら、太一ってミミの件といい空の件といいタケルと並んで女心がわかってない奴の筆頭だったから、ちゃんと結婚してるかどうか、子供が嫡子か養子か区別がつかなかったんだもの。
政治家って割と晩婚のタイプが多い印象があって(小泉進次郎と滝川クリステルがそれ)、だから太一にあまり家庭を大事にするパパのイメージがありません
「デジモンアドベンチャー」の最初の劇場版を見ればわかりますが、あの作品に出てきた太一の父・進って飲んだくれのサラリーマンで帰るのも遅く、妻の裕子とも喧嘩しています

これは個人的見解ですが、太一が結婚して家庭を作る目的は安息の場所を得たいからというよりも自分の遺伝子を残して子供に受け継がせておきたいという生物的本能が強いと思います。
理由は無印13話で「やろうぜ、みんな!あいつを倒さなきゃ、オレたちは生きのびることはできないんだ!」と言っていたことからもわかるように、太一にとって人生とはサバイバルなんですよ。
天性のカリスマ性とリーダーシップを持っている「帝王」のタイプですから、結婚して家庭を持ったところで最終的にそれすら壊してしまうイメージしかないのですよね。
織田信長然り小泉純一郎然り、カリスマタイプって派手に色々やるイメージがある分一代で築き上げてしまうので長期的な目線で見ると何事も長続きはしません

あと、太一とは違う理由ですが、タケルとヒカリは結婚していないのですが、この2人の場合は過去のトラウマによって「結婚」「家庭」に前向きなイメージが持てないからだと考えます。
タケルは以前の考察でも述べましたが幼少期に両親の喧嘩別れによる離婚というトラウマを経験し、ヒカリの場合は兄の太一しか理想の男性に思えなかったことと「02」の13話で闇の眷属の嫁さんにされそうでした。
その経験からタケヒカコンビはお互いがくっつくことはもちろん他者の誰とも結婚できなかったのはそれこそ「結婚=家庭崩壊=悪」というイメージを持っているからかもしれません。
アズマケイさんはそれこそヒカリの息子を養子、原作02で散々ハッピーエンドのフラグへし折られてるのにこれで母さんになりたいなんて思えたら奇跡ということを言っていました。

その面で言えば02組は割と順当というか、多分一番真っ当にいい家庭を築けているのが大輔で、屋台ラーメンという「食」を通して人とデジモンを繋ぐあり方を提供しているのでしょう。
「02」を見ると一番平和な家庭って本宮家と井ノ上家であり、一乗寺家はあんな壊れた家庭だったのにむしろ賢が京と結婚して幸せな家庭を築けたことが奇跡なレベルです。
伊織も父親の殉職の件から結婚に前向きなイメージを持てなかったでしょうけど、一乗寺賢の改心やブラックウォーグレイモン・及川の件で視野を広く持とうと思ったのでしょう。
「夏への扉」で大輔の口から「彼女ができた」なんて語られていますけど、伊織ってめちゃくちゃ固い性格してますからそんな簡単に彼女なんて作れるものかしら?と思ってしまいます。

んで、ここからは更に突っ込んだよもやま話ですが、個人的に大輔の嫁さんが四ノ宮リナであるという前提で想像してみますが、原作の世界線で考えると2人が出会ったのはアメリカのニューヨークじゃないでしょうか。
「ラスエボ」「ビギニング」では専門学校を卒業してラーメン屋の一日店長を任されるレベルに成長していますし、しかもビジネスの視察も兼ねてニューヨークに出張もしてますから、そこで出会った可能性はあります。
太一の外交官やヤマトの宇宙飛行士もぶっ飛んでいますが、大輔のニューヨークで屋台ラーメンのフランチャイズ実業家、メンバー1の資産家というあの生き方も相当にぶっ飛んでいるので並大抵の女性ではその生き方についていけないでしょう
少なくとも日本にそんな破天荒な大輔について行ける女性がいるとは思えないし、日本にある一人暮らしの部屋はおそらく仮住まいであって、本拠地や国籍は日本ではなくアメリカにあるのではないかと想像しています。

そして四ノ宮リナですが、彼女のあの独特のセンスをした服装にライム色の髪型に赤い眼、そして一歩間違えれば電波にもなりかねないあのキャラクター性は間違いなく日本人のそれではないでしょう。
そもそも彼女の国籍や生まれが日本であるとは明言されていませんし、もしかしたら大輔と同じ帰国子女の可能性も考えられるので、ニューヨークで何かしらをきっかけに出会ってリナが押掛け女房みたいに大輔についてったんじゃないかと。
リナもリナで原作や漫画版では「ゲームで100戦100勝できる勝率100%のプロゲーマー」として描かれているので、将来はそれを極めたプロゲーマーとして世界トップレベルの王者に君臨していそうです。
そんでそのゲームで培った戦略的思考や論理性などを大輔のラーメン事業にも活かして相乗効果でグンと跳ね上がっていき、事業を通してそれこそ世界トップレベルの資産家・投資家を紹介されていることも考えられます。

「BEGINNING」のOPでかつて自分がつけていたあのゴーグルを大事そうに閉まっていましたから、そのゴーグルは生まれてくるリナとの間にできた息子のために取っておいたということでしょうね。
んで25年後には太一たちが矢面に立ってドンパチやってる中で大輔とブイモンは平和に食を通して人とデジモンを繋ぎつつ、リナ共々並行世界に出張していそうなのでその意味でまさに「守りの要」です。
よく言われることですが「大輔は有能な副官が勝手についてきそうなタイプ」であり、思えばデジモンの冒険でも賢という有能な副官がついてきてましたし、ラーメンの事業もきっとそうなのでしょう。
太一とは違って大輔はデジモン関連のことも家庭のことも大事にできるタイプでしょうから、少なくとも喧嘩別れで離婚という線は絶対にないはずですし、リナの方もそれは考えられません。

あと「MUSUKO」って名前のTシャツのセンスは絶対に大輔とリナが話し合う中で決めたはず、「そうだ!こんなTシャツどうかな!」みたいな……じゃなきゃあんなTシャツ普通は着せないですよね(笑)
そしてそのことを平然と受け入れてる仲間たちも凄いし、何より大輔の息子が一番年上で結婚も子作りも早かったことを考えると、尚更この2人の馴れ初めについて想像しがいがあります。
いずれにせよ、シリーズのチーフディレクターがきちんと設定考証の末にあの結末にしたというのがしっかり分かっただけでも収穫がありました。

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