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スーパー戦隊シリーズとCO(中央集権型組織)・DAO(分散型自律組織)の関係性(実践編・70〜80年代)

スーパー戦隊シリーズとCO(中央集権型組織)・DAO(分散型自律組織)の関係性、今回は70〜80年代の戦隊シリーズ(『秘密戦隊ゴレンジャー』〜『地球戦隊ファイブマン』)を解説する。

<分布図の判断基準>


歴代戦隊の分布図サンプル

判断基準は以下の4つ。

  1. 「組織の公私」……組織の規律(=公)と個人の自由(=私)の割合。数値が高いと中央集権型、低いと自律分散型。

  2. 「トップの権限」……組織のトップ=司令官もしくはチームのリーダーが全体に及ぼす影響。数値が高いと中央集権型、低いと自律分散型。

  3. 「組織の完成度」……物語の始まりの段階で判断可能なチームとしての準備量。数値が高いとプロフェッショナル、低いとアマチュア。

  4. 「メンバーの関係性」=正規戦士と非正規戦士の割合とチームカラーへの影響。数値が高いとプロフェッショナル、低いとアマチュア。

各1〜10点ずつで算出し、「組織の公私」+「トップの権限」=横軸(X軸)の数「組織の完成度」+「メンバーの関係性」=縦軸(Y軸)の数とする。
その数値の合計でプロDAO(左上)アマDAO(左下)プロCO(右上)アマCO(右下)が決まるが、例外的に軸の中間を取るという場合もあるだろう。
その時はプロハイブリッド(縦軸上+横軸真ん中)アマハイブリッド(縦軸下+横軸真ん中)混成DAO(縦軸真ん中+横軸左)混成CO(縦軸真ん中+横軸右)という分類だ。
スーパー戦隊シリーズでは正規戦士と非正規戦士が混じる混成部隊も多いが、余程のことがない限りここに分類されることはほとんどないと見て良い。

改めて誤解しないように再三強調しておくが、縦軸と横軸の合計私はあくまでも「分類」に使うのであって「作品の評価」として使うものでは決していない。
いわゆる「公的動機」「私的動機」「自主性」「主体性」「絆」「使命感」「正義感」といった心の問題に関しては一律に客観的な数値の大小として扱うことにする。
中身が見えないあやふやなことよりも設定と描写という具体的な物をベースに計算した方がより正確にチームカラーを算出できるからだ。
それでは以下分布図全体の集計結果と全体の傾向、そして各戦隊への具体的な解説である。

<分布図の集計結果と傾向>


70・80年代の戦隊マップ

(集計結果)

  • プロDAO(左上)……1チーム(『超新星フラッシュマン』)

  • アマDAO(左下)……4チーム(『大戦隊ゴーグルファイブ』『光戦隊マスクマン』『超獣戦隊ライブマン』『高速戦隊ターボレンジャー』)

  • プロCO(右上)……5チーム(『秘密戦隊ゴレンジャー』『ジャッカー電撃隊』『バトルフィーバーJ』『太陽戦隊サンバルカン』『地球戦隊ファイブマン』)

  • アマCO(右下)……3チーム(『電子戦隊デンジマン』『科学戦隊ダイナマン』『超電子バイオマン』)

  • プロハイブリッド……1チーム(『電撃戦隊チェンジマン』)

(傾向)

全体的にCO(中央集権型組織)が多く、14中8チームと半数以上がCOであり、なおかつ5チームはプロフェッショナルとして描かれている。
初代の『秘密戦隊ゴレンジャー』を筆頭に『ジャッカー電撃隊』『バトルフィーバーJ』『太陽戦隊サンバルカン』といずれもが国際組織に所属するプロフェッショナルの兵士たちだ。
その点例外的なのは『地球戦隊ファイブマン』であるが、あれも組織自体は全くの私設であるものの、学兄さんの指導力・カリスマ性が強いために職業軍人・公務員のようなものと見なしていいだろう。
元々「戦隊」自体が軍事用語であり、ほとんどの人がイメージする「1人1人は小さいけれど1つになれば強い」というイメージは初期のシリーズに最も色濃く反映されている。

次にアマCOだが、これは『電子戦隊デンジマン』『科学戦隊ダイナマン』『超電子バイオマン』の3種類あり、いわゆる素人が戦いに巻き込まれていきなり宿命を告げられるというパターンだ。
いずれも生身でそこそこ戦うことはできるが、「デンジマン」「バイオマン」は冒頭の段階で宿命を拒否するはみ出し者がいるし、「ダイナマン」に至っては夢と希望に溢れる科学者予備軍である。
そんな彼らに必要なのはカリスマ性ある指導者だが、「デンジマン」「バイオマン」は基本的にリーダーである赤の戦士が、そして「ダイナマン」では夢野博士がチームを牽引する役割だ。
だがこのパターンの戦隊が3つしかないのは未熟な若者たちを導いて成長を促す構造自体が大企業に勤める新人社員の研修みたいで、年間の話を成立させるのが難しいからではないだろうか。

次に左側のDAOゾーンだが、興味深いのは『太陽戦隊サンバルカン』とは全く真逆の『大戦隊ゴーグルファイブ』が左下の隅という真逆の位置に来ているというところだ。
個人主義(ミーイズム)の極致である「ゴーグルファイブ」はスーパー戦隊シリーズにおけるDAOの元祖にもなった訳であり、とても意欲的な試みである。
その成功を受けて「マスクマン」「ライブマン」「ターボレンジャー」とアマDAOが来る訳だが、この中で作品として高く評価されているのは「ライブマン」位だろう。
何故ならば、80年代戦隊におけるDAOとはかつての学生運動が目指した「全共闘」の理想の具現化だからであり、「ゴーグルファイブ 」「ライブマン」はそのカラーに合った物語を展開した。

そして注目すべきがプロハイブリッドの「チェンジマン」プロDAOの「フラッシュマン」だが、良くも悪くも他のシリーズにはあまり見受けられない特徴を持っている戦隊だ。
「チェンジマン」は常に「二面性」を抱えながら戦う戦隊であり、「フラッシュマン」は完全にプロの個人事業主が5人集まったという感じである。
シリーズの草創期〜発展期を担った14作品はそのチームカラーにおいても実に様々な試みや工夫、仕掛けが行われていることがこの分類から伺えるであろう。

<各戦隊の具体的な解説>

『秘密戦隊ゴレンジャー』

  • 合計値=37(プロCO)

  • 横軸:「組織の公私」10+「トップの権限」7=17(CO)

  • 縦軸:「組織の完成度」10+「メンバーの関係性」10=20(プロフェッショナル)

シリーズの原点として描かれていることもあり、縦軸に関しては申し分ないプロフェッショナルの軍人であるが、トップの権限に関しては実は適度にゆるい側面があるチームとして描かれている。
メンバー同士で「火をつけると困るランプは何だ?」「何じゃろ?」といったくだらない会話が行われたり、軍人なのに普段は喫茶店で休憩する場面も多々見受けられた。
そしてこれが最も大切だが、モモレンジャーがピンチに陥った話と人事異動で交代した二代目キレンジャーが戦死した話が本作がどのようなチームかを示していたといえるだろう。
初期の5人は黒十字軍の襲撃から命辛々生き延びた経験を内側に消化し死の恐怖を乗り越えた本物の戦士として戦える者だということを2人の存在が教えてくれてる。
モモレンジャーの時には予備軍を出そうなんて発想が欠片もなかったのは所詮予備軍上がりを戦場に出したところで実戦では使い物にならないことがわかっていたからだ。

『ジャッカー電撃隊』

  • 合計値=38(プロCO)

  • 横軸:「組織の公私」10+「トップの権限」10=20(CO)

  • 縦軸:「組織の完成度」10+「メンバーの関係性」8=18(プロフェッショナル)

前作とは対照的に本作は完全な個人の自由がまるでないガチガチのCOであり、4人はサイボーグとして改造された時点で人並の幸せや自由を手にすることなど一切ない
まるで「仮面ライダー」の集団ヒーロー版といったところだが、そんなチームを描いてしまったことでかえって個々のメンバーの存在が希薄化してしまったようでもある。
後半でその悲壮感がまるでない番場壮吉というカリスマがやって来た途端に4人の存在感が完全に消えて単なる駒でしかなくなったこともその事実を示しているだろう。
それでは何故メンバーの関係性が8なのかというと、桜井五郎と水木カレンのラブロマンスが大々的に終盤で描かれたからだが、これ自体もかなり唐突かつ不自然であった。
すでにサイボーグとして人並の幸せを捨てた彼らが何故お互いを異性と認識するに至ったかは不明だが、良くも悪くもこの1シーンがチームカラーに影響を及ぼしたことは事実である。

『バトルフィーバーJ』

  • 合計値=36(プロCO)

  • 横軸:「組織の公私」10+「トップの権限」8=18(CO)

  • 縦軸:「組織の完成度」10+「メンバーの関係性」8=18(プロフェッショナル)

前2作に比べると縦軸も横軸もやや低めのところに位置づけがなされており、普段の雰囲気が緩いながらも基本的にはプロの軍人であるということは一貫している。
23話がそうであるように、プロの精鋭である5人が連戦連勝をいいことに浮かれてインベーダーゲームに興じた結果、慢心と思い込みによって手痛い敗北を喫したのだ。
後半に入ると初代ミスアメリカが迂闊な自己判断によって交代を招いてしまい、そして初代バトルコサックが頭に血が上ってスーツを携帯しなかった為に銃殺されてしまった話が出てくる。
これらの描写と設定から、プロの軍人であることに胡座を欠いたり、勝手な自己判断によって行動してしまったりすると、チーム全体に大きな損失が出ることが判明している。
表向きは軽快に描かれているものの内実は重い空気が張り詰めており、自由でありたくてもプロの軍人であることからは逃れられないという組織の規律の問題点を露呈していたようだ。

『電子戦隊デンジマン』

  • 合計値=23(アマCO)

  • 横軸:「組織の公私」9+「トップの権限」8=17(CO)

  • 縦軸:「組織の完成度」2+「メンバーの関係性」4=6(アマチュア)

歴代初のアマチュア型戦隊であり一見DAOっぽいが、戦士として選ばれたのはデンジ星人の血を引いた子孫であり、それをデンジ犬アイシーが一方的にスカウトした形である。
しかし、単なる現代人の若者でしかない彼らにとってベーダーが自分たちの星を滅ぼした因縁の相手であるという「復讐」の感情は持ちにくく、あくまで地球人として戦うのみであった。
現に2話ではピンクのあきらが宿命を拒否していたし、最終話では彼らの司令官であるデンジ犬アイシーとの戦いに対するスタンスの違いが大きく影響しているといえるだろう。
これらの描写と設定を総合的に判断すると、前作が描いていた組織の規律の問題点に更なるメスを入れ、「司令官と戦士たちの間で共通了解が取れていなかったらどうなるか?」を本作は示したといえる。
どちらが正しかったのかというとやはりアイシーであり、未熟な若者の自己判断ではなくアイシーの導きとへドリアン女王が味方して勝てたというのが本作のチームカラーを大きく規定した。

『太陽戦隊サンバルカン』

  • 合計値=40(プロCO)

  • 横軸:「組織の公私」10+「トップの権限」10=20(CO)

  • 縦軸:「組織の完成度」10+「メンバーの関係性」10=20(プロフェッショナル)

前2作で露呈していた組織の規律の問題点を踏まえ、本作で誕生したのは「ジャッカー」以上に厳しいプロフェッショナルの軍人戦隊であり、マップの右上の頂点に位置を取っている。
ブラックマグマから宣戦布告を受けて対応というのは「オーレンジャー」と似ているが、決定的な違いはチーム結成までの素早さと徹底したセキュリティ対策であり、全く隙がない。
戦士の選考にしたってエリートがそのまま選ばれて戦う形であり、また23話のレッドの交代も決して劇的なものではなく単なる人事異動の一環としてサラッとドライに描かれている。
そしてラスボスの万能の神を倒したのがサンバルカンのチームワークではなく嵐山長官のバルカンスティックであることを鑑みるに、本作は嵐山長官とその眷属たちの物語といえるだろう。
後半でやって来た二代目バルイーグルも剣技が得意という個性を前面に押し出したものの、それがチームに大きな影響を及ぼすことは特にない、つまり「業務の属人化」が全くないのである。

『大戦隊ゴーグルファイブ』

  • 合計値=4(アマDAO)

  • 横軸:「組織の公私」1+「トップの権限」1=2(DAO)

  • 縦軸:「組織の完成度」1+「メンバーの関係性」1=2(アマチュア)

メインライターが交代した影響が大きいのか、ナショナリズムの極致であった前作とは対照的に本作は極端なアマDAOが描かれており、分布図の左下の頂点に位置を取っている。
本郷博士が組織した「未来科学研究所」とゴーグルファイブの秘密基地だが表には知られておらず国も認知していないことから完全なる私設組織ではないだろうか。
そして何よりもゴーグルファイブに適した5人を選んだのがコンピューターボーイズ&ガールズ、すなわち「子供」であることも本作のチームカラーに大きな影響を与えた。
実際に4話では敵の罠にかかった桃園ミキが大怪我を負ってしまったことで女の子が泣くシーンがあるが、その責任は戦士に選ばれたミキ自身が取らなければならない
上司が責任を取ってくれた前作までとは大きく異なり、本作は完全に司令官不在のアマチュア5人が自己責任で戦うという「全共闘」の理想を体現したような形となった。

『科学戦隊ダイナマン』

  • 合計値=23(アマCO)

  • 横軸:「組織の公私」5+「トップの権限」10=15(CO)

  • 縦軸:「組織の完成度」4+「メンバーの関係性」4=8(アマチュア)

夢野発明センターで出会う前からジャシンカと戦うことになった5人であったが、完全な個人事業主の集まりで共通点がなかった前作と違い本作にはある共通点があった。
それは「立派な科学者になりたい」という夢を持った若者たちという共通点であり、また夢野博士も彼らと同じかそれ以上に夢を持った科学者として描かれている。
だからこそ組織自体は私設組織であるものの、夢野博士およびリーダーの北斗の指示は絶対であり、他のメンバーたちがその指示に従わないという選択肢はなかった。
夢を追いながら戦うことができるということはジャシンカとの戦いがそこまで厳しくなかったことの裏返しでもあるが、戦いが激化した終盤ではそうもいっていられなくなる。
そして終盤に突然生じてしまった5人と夢野博士の軋轢とその結末こそ、本作がアマCOであるということをこれ以上ないほど克明に描いたものであるといえるだろう。

『超電子バイオマン』

  • 合計値=19(アマCO)

  • 横軸:「組織の公私」9+「トップの権限」8=17(CO)

  • 縦軸:「組織の完成度」1+「メンバーの関係性」1=2(アマチュア)

バイオロボとピーボによって選ばれたバイオ粒子を受け継ぐ先祖の子孫たちが他所の星の技術をベースに戦い、しかも宿命を拒否する戦士が出てくるという設定と描写は「デンジマン」の発展型である。
ただし、本作の5人は「デンジマン」とは違い完全なアマチュアとして描かれており、第1話でバイオスーツをピーボの指示で何とか使いこなす様は彼らが未熟な素人である証に他ならない。
そんな中でドクターマン率いる新帝国ギアを相手に戦うに強力な指導者が必要であり、本作ではレッドの郷史朗が司令官を兼任する形でチームを率いて戦うが、それにも限界があった。
まずは小泉ミカが反バイオ粒子によって他界してしまったという事実、そして元地球人のドクターマンを倒すことができず機能停止するように説得するしかなかったという結末。
これらの事実はカリスマ性のある存在が一方的に行う「疑わしきは罰せよ」の勧善懲悪、そして中央集権のデメリットをこれ以上なく示しており、それが次作にも影響を与えている。

『電撃戦隊チェンジマン』

  • 合計値=30(プロハイブリッド)

  • 横軸:「組織の公私」5+「トップの権限」5=10(ハイブリッド)

  • 縦軸:「組織の完成度」10+「メンバーの関係性」10=20(プロフェッショナル)

「ゴレンジャー」から連綿と続いてきた軍人戦隊の決定版である本作だが、他と大きく違っている点はCOとDAOのハイブリッドであり、横軸がちょうど真ん中に来ているという事実だ。
軍人としての科学力だけではなくアースフォースというブラックボックスだらけの神秘の力に頼らなくてはならない、更には組織で判断する時もあれば個人で判断することもある。
この「科学」と「ファンタジー」、「組織」と「個人」という「二面性」が本作のチームカラーを大きく規定し、プロ軍人でありながら彼らは常に組織と個人を天秤にかけて戦う。
しかも絶対の正解はなく自分たちで教科書を作っていくしかない、その事実が終盤でチェンジマンに味方するナナやゲーター一家、シーマといった星間連合の結成に説得力を持たせている。
チェンジマンの視野が単なる地球だけではなく宇宙全体へと視野を広げながら戦っていく様もそんな本作の特徴を大きく規定しているのではないだろうか。

『超新星フラッシュマン』

  • 合計値=22(プロDAO)

  • 横軸:「組織の公私」1+「トップの権限」1=2(CO)

  • 縦軸:「組織の完成度」10+「メンバーの関係性」10=20(プロフェッショナル)

本作は自発的に結成された戦隊の元祖であり極めて個人主義の度合いが高いわけであるが、その象徴として地球を守ること以外に「肉親との再会」という私的動機を設けている。
だがそれを実現しつつメスとの戦いに勝利するにはプリズム星で己の肉体を改造し鍛え上げる他はなく、結果として歴代初のプロDAOが誕生することとなった。
しかし、この設定が物語の中でフルに活かされていたかというとそうでもなく、肉親との再会という要素を活かせていたのはイエローフラッシュだけである。
そしてチームとして足並みを揃えるのも一苦労であり、4人のメンバーは実質の司令官であるジンの言うことを聞くタイプではないし、ジンもまた自らチームを引っ張ろうとすることはない。
別々の星で暮らして来て戦うときに初めて会ったという設定と一連の描写から彼ら絆は存在せず、それが終盤の反フラッシュ現象という壁を乗り越えられなかったという事実として示されていた。

『光戦隊マスクマン』

  • 合計値=13(アマDAO)

  • 横軸:「組織の公私」3+「トップの権限」2=5(DAO)

  • 縦軸:「組織の完成度」4+「メンバーの関係性」4=8(アマチュア)

「ゴーグルファイブ」以来となるアマDAOであるが、なぜこのような位置付けになっているかというと序盤の段階でタケルがレースの途中に公私混同して彼女と駆け落ちという真似事をしたからだ。
チームのリーダーともあろう者が自分勝手な判断で動き、真の力を覚醒させるのに3話もかかり、更には「女とは戦えない」と言っているのだが、そんなタケルをメンバーたちは一切責めない。
また姿長官もそんな彼らを責めることなくアドバイスしかしないのだが、それは言い換えればチューブとの命懸けの戦いがそこまで厳しいものではないことの裏返しではないだろうか。
終盤ではイアル姫の姉であるイガムが女であることを自覚し、更にスピリチュアルな啓示に従った結果尼となって生きるという道を選んだことも唐突ではあるがこの現れだといえる。
しかし、個人の自由で運命を決められるのであれば、タケルと美緒(イアル姫)が別れる必然性はどこにもない筈だが、それは彼女が唯一の公人という身分の差から生じたものだともいえる。

『超獣戦隊ライブマン』

  • 合計値=15(アマDAO)

  • 横軸:「組織の公私」1+「トップの権限」8=9(DAO)

  • 縦軸:「組織の完成度」2+「メンバーの関係性」4=6(アマチュア)

「フラッシュマン」に続いて自発的に結成された2つ目の戦隊であるが、頭脳軍ボルトの強大な科学力の前にアカデミアレベルの科学力では厳しいことが1話で示されている。
また、3人とも元々落ちこぼれであったため、2年間という準備期間は余りにも短すぎて、年間を通して苦戦を強いられるという展開が多く目立っていた。
そしてメンバーの関係性とトップの権限だが、特にトップの権限が高くなって来たのは後半で追加戦士が2人来たことで勇介のリーダーシップが高まったからである。
初期3人が学友の「救済」を訴えて尾村豪を救い出し、追加メンバーがそれとは真逆の「復讐」に走ったことが本作のチームカラーに大きな影響を与えたといえるだろう。
しかし、ライブマンの5人は所詮未熟な若者でしかなくプロフェッショナルではない、その事実が歴代でも類を見ない終盤の苦々しい結末に繋がったのではないだろうか。

『高速戦隊ターボレンジャー』

  • 合計値=9(アマDAO)

  • 横軸:「組織の公私」3+「トップの権限」4=7(DAO)

  • 縦軸:「組織の完成度」1+「メンバーの関係性」1=2(アマチュア)

太宰治博士が妖精を見ることができずに高校生の5人が見えるという1話で示された事実が本作のチームカラーを大きく規定しており、本作では大人ではなく高校生の方が権力は上だ。
そのため炎力のリーダーシップが鍵になるのかと思いきや、その力自身も若い正義感以外に大した戦士としてのバックボーンは持っておらず、当然ながら大局を見据える力など持っていない。
それでも暴魔百族の幹部連中のほとんどを彼が倒すことができたのはターボビルダーが暴魔百族の力を押さえつけており、比較的イージーモードで戦えることが示されているからだ。
だが、そんな力であっても根深い血筋に基づく流れ暴魔の因縁と差別といった複雑な問題を解決することはできず、ヤミマルとキリカがあの結末を迎えられたのは偶然の要素が強い。
その事実は所詮理想だけで訓練を積んでいない未熟な若者たちができることには限界があるというDAOのデメリットを前作同様に示していたといえる。

『地球戦隊ファイブマン』

  • 合計値=34(プロCO)

  • 横軸:「組織の公私」5+「トップの権限」9=14(CO)

  • 縦軸:「組織の完成度」10+「メンバーの関係性」10=20(プロフェッショナル)

「サンバルカン」以来9年ぶりとなるプロCOだが、このようになった理由は学兄さんの圧倒的なリーダーシップと全員が「教師」という公人の顔を持っていることが大きく影響している。
つまり全くの私設組織にも関わらず中央集権のような組織になっているという事実が本作の醍醐味であり、しかも20年もの間に復讐という感情を超越して大義へと昇華してしまっていた。
そんな学兄さんにも弱点と呼べるものが実は存在するのだが、劇中でそれが深刻な問題となったことは一切なく、兄弟全員にとっての精神的支柱であったことは間違いない。
だからこそ、学が死んだときにチームの士気に影響が出るのは当然のことであり、やはり本作もまた中央集権の弱点を孕んでいたようでもあり、それが終盤の展開にも繋がっている。
最終回、マックスマグマを蹂躙した銀河超獣バルガイヤーにファイブマンが勝利できたのはシドンの花とメドーの魂の浄化という偶発的な外部イベントが大きく影響したからだ。

次回は90年代戦隊(『鳥人戦隊ジェットマン』〜『未来戦隊タイムレンジャー』)の分布図と傾向、各チームのカラーについて具体的に解説していこう。


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