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おじいちゃんの兵児帯

わたしがいらないなら、もう捨てるからと母親から送られてきたものだ。
おじいちゃんの浴衣の兵児帯。

今で言うところのグレージュで絞り加工が施されている。

祖父は優しくてオシャレな人だった。
高校野球が大好きで、遊びに行くといつも甲子園中継を見ていた。
実はこの祖父、非常にモテモテだったそうで、
確かに思い出すと、切れ長の大きな目に鼻筋が通り、そして、めっちゃ頭が良かった。

そりゃー、女も寄ってくるのだが、
まだ小さかったわたしにはわからなかった。

ある日、高校野球を見ていたときに雷が近くに落ちて、物凄い音がした。
テレビも凄い音を立てて、見えなくなってしまった。

怖くて泣いているわたしに、優しく
「お姉ちゃん、大丈夫だよ」と何度も言いながら、あっという間にテレビを直してしまった。

一番驚いたのは、今の実家がまだ建築途中だったときに、
東北から見に来て、わたし達が住んで大丈夫か?と調べていたことでした。
その当時は、まだバスすら通っていませんでしたから、祖父は最寄りの駅から40キロほど歩いてやってきたということです。
無論、帰りも徒歩ですから往復80キロ!(✽ ゚д゚ ✽)

おじいちゃん、この帯はわたしが使わせてもらうね。
ありがとう、おじいちゃん。