見出し画像

あの恋はなんだったのだろう

最近やたらとわたしの夢に出てくる人。

それは、中学生時代に付き合っていた生徒会長のM君。
彼はいつも前の席から、習いたての英語でデカい声でわたし向かって言うのだ。


「ひゅうがさん、愛しているよ」と。


顔も好きじゃないし、第一わたしが好きだったのはサッカー部の先輩だったのに、
どうやらわたしは好きな人からは好かれず、
イマイチな人から好かれてしまうように思う。


M君は図々しくも、わたしの家にやってきた。
白いギターを抱えて。

そして真夏で窓もドアも、開けっ放しのわたしの部屋で、

「ひゅうがさんに捧げる歌」を大声で歌って帰って行った。
内容は本当に覚えていない。

作詞作曲をしたと言っていたし、
Mくんはその後開成高校に入学した秀才なのでした。


でもわたしは次の日から、近所のオバサン達からの冷やかしの言葉に気が遠くなりそうでした。

英語で「愛してる」だの、「僕の命」だの大声で歌われて、かなりわたしはショックを受けたのだよ。

もしMくん本人が見ていたらわかって欲しい。

たかだか中坊のわたしが、あんな言葉を降らされても、どうしたら良いかわからなかったということを。


だけど今になって思う。

あまりないことだけど、決してないわけではない。初恋の人と結婚した話は。

Mくんは優等生だったし、ユーモアや機知にも敏感な人だったから、さぞかし出世をしたことだろう。

わたしの元夫も奇跡的な出世をしたが、
それは当たり前なのだ。

わたしと付きあった人は全員出世している。

もしも、

もしもMくんとずっと付きあっていて、結婚していたら、
わたしは離婚しないで済んだのだろうか?

元夫といたときには一人で過ごすことがなにより嬉しかった。

それなのに、今は、

ひとりでいることがとても寂しく感じる。

Mくんは開成に受かったあと引っ越して行ったから、どこにいるのかも知らない。

ただ、最近わたしの夢に出てくるのは、

わたしの孤独感のせいかもしれない。

久しぶりにビールを飲んだ。

もっと買ってくれば良かったんだけど、
このど田舎では買いに行く気にもならない。

Mくんはわたしのどこが好きだったんだろう。

一度も聞いたことがなかった。

あの恋は終わったのだ。


わたしが次に恋をすることはあるのかな……

ないかもしれないな……



この記事が参加している募集

忘れられない恋物語