17:36

6号車に乗り、角の席に座る。これが私のルーティンだ。その日も電車はいつもどおりだった。いつものようにのんびりとしたリズムに合わせて眠ってしまうのだった。

ふと電車の揺れで目を覚まして、携帯電話で時刻を確認する。やけに深く眠ってしまっていた気がしたからだ。幸いにも乗り過ごしていることはなく、到着予定の15分前だった。いつもどおり。

いつもどおりのはずだった。

携帯電話から見上げた向かいの席を見て、私は息をのんだ。もう2度と会えないと思っていた「貴方」がそこにいた。
寝ぼけている私の夢なのか。
間違えるはずもない自分が間違えてしまうほど似ている別人なのか。

まさかあの日に戻ったのか。

たった数駅の間がすごく長く思えた。他愛もない世間話と好きなミュージシャンの話をした。わざと遠回りをしたりして、あの日、私には確かに「貴方」との将来が見えていたはずだった。

今日の「貴方」は有名なバンドのパーカーを着ていた。そんなの着るような人ではなかった。そういえば今から半年前、どうしても「貴方」に会いたくて、今日この日に会いに行こうと思っていたっけ。それはどうでもよくなってしまったんだけど。「貴方」はこんなに背が高かったっけ。
記憶より少し垂れた目を見てやはり疑心暗鬼になる。

そのまま何駅も何駅も過ぎた。
「貴方」は、この駅で降りなければどこへ行くのだろうか。
今日が半年前の私を動かそうとしていた日だったことはたまたまなのか。

電車が揺れたのはたまたまだったのだろうか。



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