帰国して思うこと

私は海外に何年か滞在していた時期があり、帰国して以来この国が普通ではないことに気付いてしまった人間である。無論海外にも問題はあるし、外国を無条件に持ち上げる気はない。治安の良さなど日本の方が優れている点は多くある。しかし日本に住む日本人として、自国の問題点を指摘し、国民が問題を認識することは無条件に日本を礼賛するよりずっと建設的なはずだ。

日本という国の問題は簡潔に説明すれば、狂っている社会で正常であることを求められるということである。田舎にある閉鎖的な集落を想像してみよう、そこでは妙な風習が常態化している。例えば村長の命令には絶対服従だとか、村人の間では近親相姦が当たり前に行われているなどである。しかしそこに住む住民にとってはそれが当たり前のことなので、異常だとはみなされない。狂人が多数派になれば異常なことが普通になるのだ、そして外から来た正常な人間が狂人扱いされる。

日本の田舎に行けば今でもその異様な掟社会の一端を垣間見ることができる。そして日本という国自体が、世界における田舎の閉鎖的な集落のようなものなのである。落ちぶれたとはいえ一時期は世界2位の経済大国にまで上り詰めた日本が田舎の集落なわけがないだろうと思うかもしれない。

しかし日本は島国で、ユーラシア大陸の最果てにある国である。地理的にも外国の影響を近代になるまでほとんど受けなかった。そして言語も独特であり、国民の大多数は英語ができない。インターネットで世界中の情報が瞬時に飛び交う時代においてさえ、日本人の情報空間は言語の障壁によって世界から隔絶されている。

これはあらゆるコミュニティにいえることだが、新しいモノや人、情報が入ってこない組織や集団というのは、近親相姦を繰り返すことで遺伝子が腐敗していくのと同様に、その精神も同様に硬直化し腐敗していくのである。新陳代謝が行われないため細胞が生まれ変わることがなくなり、身体が崩壊していくのと同じようなことが、集団とそれを構成する個人の精神においても起きるのだ。身体と異なるのは精神は腐っていても生きていられるという点である。

日本という国は新しいものがほとんど入ってこない、閉鎖的な田舎の集落のような国なのだ。この国は妙な価値観が支配している。都会の人間が田舎に行けば体験するような異質さを、帰国した時に私は日本という国から感じたのだ。

そこの住民である日本人は何というか、全てが人工的で不自然なのである。本来ある自然な人格の上に、機械的で魂のない人工物が上書きされている。話していても全てが作り物であり、ロボットと話しているかのような感覚を覚える。外国人の方がずっと人間らしい、私は海外に住んで初めて本物の人間と接する喜びのようなものを感じたほどである。日本人には魂がない、人間とロボットの中間にいるような人々である。かつては私もその1人であったが。

そんなに嫌なら日本から出ていけなどと言われそうな内容ではあるが、これは私の率直な日本人に対する感想なのだ。

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