【日本人と桜】
4月13日。今年(2021年)は3月下旬に暖かくなり、桜の開花も例年より早かった。東北は季節外れの雪と桜の光景も見られたようだが、奈良ではすっかり葉桜となっている。
今年は各々で小規模ながら花見をした方も多いのではないだろうか。
「日本人は桜が好きだ」
この時期になると桜を思い出す。
今まで気にならなかった桜の大木を、毎日のようにまだかまだかと待ち遠しい日々を過ごす。
「日本と桜」という本でこんな記述があった。
桜の花は、ただ美しいばかりでない。
咲いた時の美しさもあれば、散る時の美しさもある。
それは人の心を喜ばせたり、悲しがられたりもする。
或いは事々刻々の変化を見せて、時というものの意味の深さも教えるであろう
まさに僕たちの心に桜が印象強く残っている事を表している。
【日本人と桜】
桜は古くから山野に自生していたものである。縄文時代にもあっただろうし、石器時代にもあったであろう。空腹を満たすものでもなければ身体を覆って保護するものでもなかった。ただ漠然と眺められていた。
古い文献に桜が出てくるのは、「日本書紀」の履中天皇の時(5世紀前半)だそうだ。
履中天皇3年の冬、11月。
市磯池にて行幸し船で遊んでいた。皇后や妃も含めて宴会となった。
縁もたけなわになり、ある人が天皇の盃に酒を注ごうとした時、季節外れの桜の花びらが、その盃に1,2枚落ちてきた。
この件を気に、桜の美しさにはっとされ、後に居住する御所を「磐余の稚桜宮」と名付けるほどになったそう。
【桜か梅か】
今や国花といえば桜だが、実は古代では桜より梅が重宝された時代もあったようだ。
自生していた桜と違い、5世紀前半頃中国から渡ってきた梅。
一年で最も早く咲く花として重宝され、花の美しさというより枝ぶりやどこか中国的な枝と小ぶりな花の関係が日本人の心にハマっていく。
8世紀の後半、平城京から平安京に遷都した桓武天皇の時代に梅が植えられていくが、その20年後の淳和天皇の頃にはまた桜に戻るようである。
時代の流れが年々早くなり、新しいものが重宝され、古いものから淘汰されていく現代で、古くから変わらないもの。
変化の波に飲み込まれず、大きな心を持って時代を冷静に見れる心が
今は大事な気がしています。
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