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HAAM注目!今月の空飛ぶクルマ最新ニュースまとめ【2023年11-12月】

HYOGO 空飛ぶクルマ研究室【HAAM】(以下、HAAM)では毎月、次世代の乗り物「空飛ぶクルマ」の最新情報をピックアップし、国内と海外に分けてお届けしています。

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2023年最後の空飛ぶクルマニュースとなる今回。

11月〜12月は空飛ぶクルマの実現に向けて法施行規則が改正されたり、大手企業が離発着場の開発に乗り出すなど、いよいよ私たちの目にも見えるような変化が起きるようになりました。

また、海外ではeVTOLのレースが開催されるなど、空飛ぶクルマの新たな可能性も見えてきています。今月も、国内・海外のニュースに分けて情報をお届けします。

【国内の空飛ぶクルマニュース】

1. 空飛ぶクルマの実現に向けて。「航空法施行規則」を改正(11/30)

国土交通省航空局は、空飛ぶクルマに関連する「航空法施行規則の一部を改正する省令」を2023年11月30日付で公布、12月31日に施行することを発表しました。

2025年の大阪・関西万博に向けて開発が進む空飛ぶクルマは「電動で動く」「垂直離着陸やマルチローターなど、新たな飛行形態である」など、飛行機やヘリコプターと異なる点が複数あります。

そのため、従来の航空機の特徴を前提とした現在の航空法施行規則では対応しきれない点があるのが現状です。

今回の航空法施行規則の改正はその問題点を解決し、日本で空飛ぶクルマが飛行機やヘリコプターと同じように運航するために、機体の特徴を踏まえた安全基準や運航基準、騒音基準が定められました。

改正のポイントは主に3つです。

1.空飛ぶクルマを「垂直離着陸飛行機」「マルチローター」と規定
→有視界気象状態(パイロットが目視により飛行するのに十分適した気象状態)の要件を現行のヘリコプターと同様とするよう改正
2.「『燃料』に電気エネルギーを含むと整理」
3.「『発動機』に『電動機』を含むと整理」

他にも、空飛ぶクルマにおける救命胴衣の装備義務などが記載されました。

2025年4月から開幕する大阪・関西万博まで、1年半を切りました。法改正が行われることで、実用化に向けての環境が一層整うことになりそうです。

2.ANAホールディングス、Joby Aviation、野村不動産が空飛ぶクルマの離着陸場開発に向けた共同検討を開始(12/8)

ANAホールディングス、Joby Aviation、野村不動産は、日本国内の都市部を中心としたeVTOL運航サービスの実現に向けて、離着陸場(バーティポート)開発の共同検討に関する覚書を締結しました。

3社は日本の都市部を中心に利便性の高いバーティポートを開発するため、事業としての可能性や技術の実現性について検討するほか、「社会受容性」を得るための取組みや戦略的パートナーシップ構築に向けた協議などを共同で進めるとのことです。

これまでANAホールディングスとJoby Aviationは、電動エアモビリティの運航サービス実現に向けた事業検討を進めるとともに、首都圏および関西圏を中心に利便性の高いエリアへの離着陸場設置に向けた各種調査や検討に取り組んできました。

今回浮体式のバーティポートを研究してきた野村不動産が加わったことにより、地上におけるeVTOLの技術・知識が補完されることとなるでしょう。3社の今後の動きに注目です。

■海外ニュース

3.インドの企業「Nawla Aero」インド初の5人乗りeVTOL機「NALWA eVTOL」を開発(11/24)

インドを拠点とする技術企業Nalwa Aeroは11月24日、5人乗りのeVTOL「NALWA eVTOL」を開発したことを発表しました。

5人乗りのeVTOLはインド初とのこと。インドは現在世界一位の人口を抱える国であり、国内では出勤・退勤時間の交通渋滞が問題となっていることから、空飛ぶクルマがその解決に繋がるのではと、注目が集まっていました。

国際的な大手航空会社と共同で開発された「NALWA eVTOL」は、7.53m×7.15m×2.5m(長さ×幅×高さ)というコンパクトなサイズ。12個のダクト付き電動ファン・ユニットを採用した分散型電気推進システムが特徴的で、特許も出願しています。

効率性、安全性、自律性がバランスよく融合されていることから、用途は軍事的目的から輸送、観光、農業などの商業・民間用途まで多岐にわたる「NALWA eVTOL」。電動都市航空モビリティを革新するとともに、多機能な航空機を求める事業者にとって非常に実用性の高い製品となるとしています。

革新性と機能性を組み合わせたNALWAは、航空機とeVTOLの可能性をどのように広げるのでしょうか。

4.韓国でも「空飛ぶクルマ」の動き。ブラジルメーカーと協力してチェジュ島で空飛ぶクルマを実装へ(11/28)

空飛ぶクルマの社会実装に向けた動きは、日本の隣国・韓国でも広まっています。

ブラジルの航空機メーカー「EMBRAER(エンブラエル)」は11月28日、eVTOLを開発する子会社「Eve Air Mobility(イブ・エア・モビリティ)」が、韓国のLCC「チェジュ航空」と提携したことを発表しました。

両社は韓国・済州(チェジュ)島で空飛ぶクルマを実用化するための取り組みを共同で進めます。チェジュ航空はイブ・エア・モビリティに対して、空飛ぶクルマの韓国国内での普及を目的に、運航環境の開発などを支援するとのことです。

現在、韓国本土から飛行機で1時間弱、フェリーで2時間ほどをかけて移動しなければならないチェジュ島。一日の本数も限られることから、空飛ぶクルマが導入されれば新たな地域の足として活用されることが予想されます。

今後は安全運航に関する課題や実用化に向けた顧客ニーズなどの詳細な分析を進めるとのこと。韓国でも空飛ぶクルマが地域の足として利用される日は近いようです。

5.韓国最大の自動車メーカー傘下の「Supernal」、空飛ぶクルマの最新コンセプトを予告(12/22)

韓国での空飛ぶクルマの動きは、他にも。

韓国最大の自動車メーカー「ヒョンデ(現代自動車)」は2024年1月、アメリカ・ラスベガスで開催される世界最大級のテクノロジー展「CES 2024」において、傘下のエアモビリティ企業「Supernal」がeVTOLの最新コンセプトを初公開すると発表しました。

2020年のCESで、eVTOLのコンセプトを発表していたSupernal。今回は4年ぶりに最新コンセプトを公開するということで、どのようなアップデートがあったのか注目が集まります。

また、Supernalはラスベガス・コンベンション・センターの西ホール入り口前にバーティポートを設け、来場者がeVTOLの内部に足を踏み入れることができるようにするとコメントしています。今後数十年のうちにeVTOLの実用化を目指しているSupernalの、今後の発表に目が離せません。

6.Doroni Aerospace、eVTOL機「Doroni H1」のFAA特別耐空証明を取得(11/30)

Doroni Aerospaceは、最新のeVTOL機「Doroni H1」について、アメリカ連邦航空局(FAA)から特別耐空証明を取得しました。

FAAは安全基準が厳しいことで知られており、この認証を得たということはDoroni H1が商業運航に必要なすべての安全要件を満たしていることを示します。

これまでDoroni Aerospaceは、空飛ぶクルマの実装に向けてNASAや米軍の各部隊と協力して開発を進めてきました。度重なる検証によって揚力と安定性が向上しただけではなく、緊急用エアバッグやエネルギー散逸着陸装置、10個の独立した推進システムを持つなど、複数の安全機能が設けられています。

こうした安全性への備えが評価され、FAAからの承認が降りた「Doroni H1」。使いやすい操作性と2人乗りの機体が特徴であることから、今後本当の意味で未来の家族の「車」となり、通勤や生活のあり方を変えていくとしています。

7.eVTOLレース「2023年Airspeeder EXAシリーズ選手権」開催(12/12)

12月12日、無人のeVTOL3機による世界初のレースが南オーストラリアのストーンフィールド・エアフィールドで開催されました。

使用された機体は、Alauda Aeronautics社が開発した「Alauda Aeronautics Mk3」。4.1mほどの大きさの空飛ぶレーシングカーは最高速度100km/h、0-62mph加速2.8秒にもなるとのことです。

当日は雨と風の強いコンディションにもかかわらず、100人以上の観客が詰めかけたこのレース。機体にはカメラが取り付けられ、高画質のライブ映像を世界中にストリーミング配信するなど、レース中継における新たな技術も取り入れられる機会となりました。

優勝したのは、Zephatali Walsh氏。遠隔操縦によって行われるレースの成功は、モータースポーツの新たな歴史を切り開くものになるでしょう。2024年には完全乗員制のAirspeederレースも開催予定とのこと。空飛ぶクルマが日常に寄り添うだけでなく「レーシング」というスポーツの世界にも用いられる未来が見えます。

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新しい情報が入り次第、今後も空飛ぶクルマの最新ニュースをお届けしていきます。

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▼「空飛ぶクルマってそもそもどんなもの?」という方は、まずはこちらの記事をご覧ください!

HYOGO 空飛ぶクルマ研究室【HAAM】
SDGs思考で未来の空を構想するシンクタンクをコンセプトに、空飛ぶクルマの実用化が期待される2030年代に社会の中核を担うZ世代以降の若者【大学生・高校生】と共に観光・地域創生分野における具体的なビジネスモデルを考えるラボラトリー。大学生向けの空飛ぶゼミや高校生のSDGsへの関心を集める企画などを実施。


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