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HAAM注目!今月の空飛ぶクルマ最新ニュースまとめ【2023年10-11月】

HYOGO 空飛ぶクルマ研究室【HAAM】(以下、HAAM)では毎月、次世代の乗り物「空飛ぶクルマ」の最新情報をピックアップし、国内と海外に分けてお届けしています。

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10月28日(土)から11月5日(日)まで東京ビッグサイトで一般公開された「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」では、空飛ぶクルマの開発に取り組む多くの企業がブースを出展し、機体の展示を行いました。HAAMの読者の皆さんの中には、足を運んだ方もいらっしゃったのではないでしょうか。

このような展示会をはじめ、今月も海外を中心に新たな機体が発表されたり商用利用の開始目処が立ったりと、市場の規模が大きくなっていることがわかる1か月となりました。国内・海外のニュースに分けて情報をお届けします。


【国内の空飛ぶクルマニュース】

01.SUBARU「空飛ぶクルマ」世界初披露 脈々と受け継ぐ「中島飛行機」のルーツ体現【2023/10/25】

SUBARUは2023年10月28日(土)から11月5日(日)まで東京ビッグサイトで一般公開された「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」で、「空飛ぶクルマ」のコンセプトモデル「SUBARU AIR MOBILITY Concept」を世界初公開しました。

自動車で有名なSUBARUですが、実はSUBARUはかつて日本最大規模の航空機メーカーであった「中島飛行機」をルーツに持っています。中島飛行機の解体後も航空機の開発は続けられ、現在も売り上げの2%は航空宇宙部門が担っているのです。

そんなSUBARUが開発した機体は現在、航空宇宙と自動車のエンジニアが共同で飛行実証を行っており、実験での飛行はすでに成功しています。飛行距離や実用化時期などは明かされなかったものの、将来的には人が乗ることも視野に入れているとのこと。

これまで飛行機やドローンを開発する企業が中心となって進められてきた空飛ぶクルマ開発。SUBARUの取り組みを機に、自動車業界からも空飛ぶクルマ開発の動きが現れるかもしれません。

02.「東京ベイeSGプロジェクト 令和5年度先行プロジェクト」において、次世代モビリティ(空飛ぶクルマ用浮体式ポート・陸海空のマルチモーダル MaaS)の提案が採択【2023/10/30】

野村不動産株式会社をはじめとする企業7社は10月30日、東京都政策企画局が展開している「東京ベイeSGプロジェクト 令和5年度先行プロジェクト」の次世代モビリティ分野において提案を行い、採択されたことを発表しました。

提案を行ったのは野村不動産株式会社、清水建設株式会社、ANAホールディングス株式会社、朝日航洋株式会社、株式会社Kidou Systems、株式会社エイトノット、東京ウォータータクシー株式会社の7社。

空飛ぶクルマの早期普及を目指し、空飛ぶクルマが離着陸するバーティポートを東京都江東区・大田区の海上「中央防波堤」に浮かべ「浮体式ポート」として活用することを主に提案し、離着陸場所の多拠点化を目指す取り組みです。

採択を受けた7社はこれから「浮体式ポート」の構築・検証を行うとともに、自動運転車や自律航行船など陸と海における次世代モビリティの運航実証、及びそのMaaS化(移動のサービス化)の可能性についても検証を行うとのこと。

空の移動だけでなく、陸や海でも移動革命が始まろうとしています。

【海外の空飛ぶクルマニュース】

03.XPENG AEROHT、地上・空中で利用できる空飛ぶクルマでモビリティの未来を紹介。最新のeVTOL空飛ぶクルマも展示【2023/10/29】

SUBARUのような自動車メーカーによる空飛ぶクルマの機体開発の動きは、海外でも進んでいます。

中国の電気自動車メーカーXPENGの関連会社「XPENG AEROHT」は、XPENG Tech Day 2023で地上・空中の両用が可能なモジュール式空飛ぶクルマ「Land Aircraft Carrier」を発表しました。

モジュール型空飛ぶクルマは、4~5人乗り。地上モードと空中モードを自由自在に切り替えられる2分割設計で、地上では本物の車とほぼ変わらない形状・大きさで羽の部分をしまい、運行することができるのです。

また、注目すべきなのはその安全機能。Land Aircraft Carrierは空飛ぶクルマの安全性を高めるため複数のパラシュートが積まれています。通常は200m以上で安全な落下が補償できるといわれるパラシュートですが、この機体では10月に行った高度50メートルからの落下テストでも問題なく機能したとのこと。

これまで空飛ぶクルマの課題となっていた超低高度での飛行や救助支援活動でも安全に利用できる可能性が生まれました。

04.クルマと飛行機のハイブリッドモビリティ「Switchblade」が初飛行に成功【2023/11/10】

空と陸、どちらでも使える空飛ぶクルマの動きは他にも。2023年11月10日、アメリカのスタートアップ企業「Samson Sky(サムソンスカイ)社」が空飛ぶクルマ「Switchblade(スイッチブレード)」の初飛行に成功したことを発表しました。

Switchbladeは2026年頃の販売が予定されており、すでに世界57カ国から2300件以上の予約が入っている注目の機体。格納式の翼を搭載した3輪タイプの自動車として、自宅のガレージから最寄りのバーティポートまでは自動車として公道を走行できます。

左ハンドルだけでなく右ハンドルにも対応した設計がされているため、近い将来、日本の空でも飛んでいるところが見られるかもしれません。

また、発売開始時の予定価格は17万ドル(約2562万円)とのこと。一見高く感じますが、小型飛行機は通常30万ドル(約4500万円)以上することを考えると半額程度で購入可能です。

車としても利用できる2500万円の空飛ぶクルマ。皆さんはどう捉えますか?

05.スウィンバーン工科大学、水素燃料eVTOL機の初飛行に成功【2023/10/25】

オーストラリアの次世代エアモビリティを推進するスウィンバーン工科大学が、大きなステップを踏み出しました。

スウィンバーン工科大学の航空構造イノベーション研究ハブ(AIR Hub)は、ビクトリア州ラトローブ・バレーにて、環境に優しい水素燃料を使ったeVTOL「SHADEドローン」の初飛行に成功しました。

SHADEドローンは、新しい水素推進システムを設計し、大型ドローンに結合することでクリーンなエアモビリティの在り方を模索するプロジェクト「Hydrogen to the Skies(H22S)」の一環として、オーストラリア連邦政府の新興航空技術パートナーシッププログラムの資金援助を受けて開発されたもの。

水素燃料を使った空飛ぶクルマの飛行成功は、水素燃料が長距離での飛行移動を実現するのに有効であることを証明するものであり、サステイナブルな航空の未来を実現するカギを握っています。

06.米BETA Technologies の電動航空機「ALIA」通算3150kmの長距離飛行を達成【2023/10/26】

eVTOLを開発するアメリカの企業「BETA Technologies」は10月26日、BETA Technologiesが開発する電動航空機「ALIA」が通算3150km以上の飛行を達成したと発表しました。

世界で最も長距離を移動する渡り鳥であるキョクアジサシに着想を得て制作されたALIAは、バーモント州を出発後、12の州・20か所の空港に立ち寄り、フロリダ州エグリン空軍基地のDuke Fieldに到着しました。

ALIAは飛行時の排出ガスがゼロで、エネルギー密度の高いバッテリーを搭載しています。空港内外に設置された急速充電システムでの充電は1時間未満で完了する仕様と機動力が高いことから、貨物輸送機や防衛としての利用が想定されています。

以前からHAAMではアメリカを中心にeVTOLが防衛機能を持ち、軍への実装が進んでいることを取り上げてきました。今回もアメリカ国防総省のシニアアナリストが、飛行記録達成への称賛のコメントを寄せるなど、やはりeVTOLの可能性は無限に広がっていることがわかります。

07.TCab Tech、ティルトローター式有人電気飛行機「E20 eVTOL」の初飛行成功【2023/10/27】

中国の「上海时的科技有限公司(TCab Tech)」は、ティルトローター式有人電気飛行機「E20 eVTOL」の初飛行に成功したことを発表しました。ティルトローターとは、ローターが機体に対して傾いて設置される垂直離着陸の主砲の1つです。

フランスのエンジンメーカー「Safran Electrical&Power」から6つのモーターを搭載することで、機体に継続的で信頼性の高い電力を供給するのを可能にしたE20 eVTOL。驚くべきは開発期間で、機体の組立から一度目の試験飛行までをわずか4カ月で完了しています。

このまま順調に進めば、中国で初めて標準耐空証明を取得したティルトローター式有人電動垂直離着陸機となる見込みとのこと。TCab Techの今後の行方に注目です。

08.Volocopter、フロリダ州での初eVTOL 機テスト飛行に成功。FAAの型式認証の取得を目指す【2023/11/04】

eVTOLの機体開発を進めるドイツの航空機メーカー「Volocopter」はアメリカ・フロリダ州のタンパ国際空港(TPA)で、開発中の機体「Volocopter 2X」によるテスト飛行に成功しました。

Volocopter社は9月に「近い将来にeVTOLの運航を開始する」と発表しており、フロリダ州を運航対象地域の1つに指定しています。Volocopter 2Xの飛行テストは、米国連邦航空局(FAA)による機体試験と、現地の環境条件下での機体性能試験で構成されるため、今回は後者の試験がタンパ国際空港にて実施された形です。

試験は空港に招待された一般市民の間近で行われ、無事に成功。イベントにはフロリダ州運輸省のJared Purdue長官やフロリダ州・タンパのJane Castor市長など地域のキーパーソンも招待され、空飛ぶクルマが地域社会の支持を受け、社会的受容性を高めるための重要なステップとなりました。

日本でも進む、市民と空飛ぶクルマを繋ぐ取り組みは、世界でも進んでいます。

09.Archer、2026年にインドでeVTOL 空中タクシーを提供開始へ【2023/11/13】

eVTOLを開発中のアメリカ企業「Archer Aviation」と、インドで旅行事業を展開している「InterGlobe Enterprises」は、eVTOLによる空中タクシーサービスをインドで2026年に提供開始すると発表しました。

サービスで利用する予定のeVTOLは、HAAMでも度々ご紹介しているArcherの量産機「Midnight」。合計12個のローターを備えることによって安定感を実現し、パイロット1人と乗客4人を乗せて約161kmを運行することが可能です。

また、予定している飛行コースはインドの首都・ニューデリーの「コンノートプレイス」と「グルグラム」を結ぶ27km。自動車だと60分から90分かかる距離を、約7分で移動できるとされています。

両社は複数のインド企業と提携し、eVTOLの運用、資金管理、バーティポートなどのインフラ建設や、パイロット・スタッフの訓練に取り組むことを示しています。いよいよ各地で始まったeVTOLの商用化の動きに、目が離せません。

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新しい情報が入り次第、今後も空飛ぶクルマの最新ニュースをお届けしていきます。

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▼「空飛ぶクルマってそもそもどんなもの?」という方は、まずはこちらの記事をご覧ください!

HYOGO 空飛ぶクルマ研究室【HAAM】
SDGs思考で未来の空を構想するシンクタンクをコンセプトに、空飛ぶクルマの実用化が期待される2030年代に社会の中核を担うZ世代以降の若者【大学生・高校生】と共に観光・地域創生分野における具体的なビジネスモデルを考えるラボラトリー。大学生向けの空飛ぶゼミや高校生のSDGsへの関心を集める企画などを実施。

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