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HAAM注目!今月の空飛ぶクルマ最新ニュースまとめ【2023年9-10月】

HYOGO 空飛ぶクルマ研究室【HAAM】(以下、HAAM)では毎月、次世代の乗り物「空飛ぶクルマ」の最新情報をピックアップし、国内と海外に分けてお届けしています。

10月頭、大阪・関西万博での商業運行(乗客を乗せての運行)を予定している空飛ぶクルマの量産が間に合わない見通しであることが発表されました。各メディアで動向が注目されている機体開発ですが、最新テクノロジーの安全保障には時間を要することが分かります。

しかし、各社は足を止めていません。補助金の獲得や機体開発、海外では軍への納入が進むなど、今月も新たな動きが各地で発生していました。国内・海外のニュースに分けて情報をお届けします。

【国内の空飛ぶクルマニュース】

01.「空飛ぶクルマ」量産、万博開幕に間に合わず【2023/10/12】

空飛ぶクルマの社会実装に向けて、大きなマイルストーンとなっている大阪・関西万博。2025年の開催に向けて急ピッチで開発が進んでいますが、残念なニュースも飛び込んできました。

10月12日、空飛ぶクルマの開発を行う4つの事業者が、大阪・関西万博での運航を予定する空飛ぶクルマの機体量産が間に合わない見通しとなっていることを示しました。
日本国際博覧会協会では2月、大阪・関西万博で乗客を乗せた「商用運航」を実施する事業者として、以下の4つの事業者を採択していました。

①ANAホールディングス(HD)× 米Joby Aviation
②日本航空
③丸紅 × Vertical Aerospace
④Sky Drive

しかし4つの企業グループ中、日本航空と丸紅では機体量産に必要な安全認証取得が遅れているとのこと。丸紅はすでに商用運航を断念しており、操縦士のみでの「デモ飛行」を目標とすると発表しました。

また、すでに安全認証を取得しているJoby Aviationの機体やSkyDriveでも、調達できる機体数は最大数機としています。万博開幕まで1年半。新たな技術の安全を保証するハードルの高さが伺えます。

02.SkyDrive、最大124億円のイノベーション補助金を獲得。空飛ぶクルマの開発を加速へ【2023/10/21】

とはいえ、どの事業者も歩みを止めているわけではありません。

10月21日、SkyDrive株式会社は、日本政府が執り行う中小企業イノベーション推進事業(SBIR Phase3)の「次世代エアモビリティ分野」に採択され、約124億円の助成金を受け取りました。

社会課題や先進技術に取り組むスタートアップ企業に助成金を与える、SBIRプログラム。成長の可能性が高く、社会にプラスの影響を与える研究開発プロジェクトを支援する目的で行われています。

SkyDriveはSBIRプログラムを通じた日本政府の支援を得て、市場の需要を十分に満たす航空機を開発・量産するとともに、今後5年間で商用運航に向けた耐空証明を取得する予定とのことです。

03.SkyDrive、製造子会社設立。スズキの工場を活用し、年間最大100機の製造が可能に【2023/10/10】

また、SkyDriveは製造子会社である「株式会社Sky Works」を設立しました。

機体の量産に必要な「型式証明」を獲得した「SKYDRIVE(SD-05型)」の製造に向けて、スズキ株式会社が持つ工場を活用し、最大年間100機の空飛ぶクルマの製造を行います。

SkyDriveでは、2022年3月からスズキと連携協定を締結しています。これまで空飛ぶクルマの事業化を目指して、機体開発や要素技術の研究開発、製造・量産体制の計画推進、インドを中心とした海外市場開拓の連携などを行ってきました。

製造開始は2024年春頃。eVTOL航空機の性能、安全性、効率の向上に焦点を当てた研究開発の取り組みを加速させるともいわれるSkyDriveの取り組み。日本の空飛ぶクルマ開発を支える、希望の星となるのでしょうか。

04.空飛ぶクルマの国内部品市場、2030年に745億円に【2023/10/04】

また、このような調査結果もあります。

矢野経済研究所は、空飛ぶクルマの部品市場について調査を行いました。調査によると、市場規模は2025年の45億6000万円から、30年には745億5600万円に大幅に拡大する見込みとのこと。

大阪・関西万博をきっかけに特定エリアでの空飛ぶクルマの社会実装が進み、機体の改善や開発に関連した部品の需要が高まることが予想されています。「垂直離着陸」システムの実装により、これまでとは違った種類の部品の開発も行われるでしょう。

一方研究所では、機体メーカーの資金調達の難航や、素材のコスト高により開発が遅れると、市場拡大が遅れる可能性も示唆しました。

国の補助金や、複数の大学や企業が参画する国家プロジェクトの立ち上げによって、開発は加速するのでしょうか。

05.空飛ぶクルマ、実機飛行後「課題検証へ」【2023/09/27】

9月27日、都議会では一般質問を開催。都民ファーストの会の藤井晃議員が、「空飛ぶクルマ」の社会実装化に向けた都の取り組みについて質問を行い、古谷ひろみ政策企画局長が回答しました。

答弁では、大田区・江東区に位置する東京湾内の人工島「中央防波堤埋立地」を実証実験場所として提供しているほか、ビジネスモデルの構築を支援していると説明。「機体の開発状況なども注視しながら、実機の飛行を通じて課題を検証していく」と述べました。


日本の中心部である東京都でも、空飛ぶクルマの検証が行われる日が近いのかもしれません。

【海外の空飛ぶクルマニュース】

06.Joby Aviation、初のeVTOL機を予定より早く米空軍基地に納入【2023/09/27】

9月27日、Joby Aviationが1台のeVTOLを米空軍に納入したことが分かりました。日本ではANAとタッグを組み開発を進めているJoby社は、アメリカではNASAとともに民間旅客サービス向けの空飛ぶクルマを開発しています。

納入されたのは、カリフォルニア州のエドワーズ空軍基地。以前に結ばれたアジリティ・プライム契約の一環として納入が行われました。契約では2024年を目処に、Joby社が米空軍などに最大9機のeVTOLを提供することとなっていましたが、今回はそのうちの1台が約半年前倒しで納品されています。

機体は主に貨物や旅客の輸送における実証実験に使われる予定とのこと。Joby社と米空軍の両職員が共同で飛行試験と運用を行い、両者が機体やパイロットの教育や、運行におけるオペレーションにおいて知見を交換します。

07.Skyfly Technologiesの2人乗りAxe eVTOL、軽スポーツ機として認定へ【2023/09/28】

「LSA(Light Sports Aircraft)」という言葉をご存じでしょうか?外国で普及が進む、軽量スポーツ航空機です。“軽自動車の飛行機版” とも呼ばれ、海外ではパイロットの専門学校で訓練機として利用されているケースもあります。

そんなLSAに、一台のeVTOLが仲間入り予定となりました。Skyfly Technologiesの「Axe eVTOL」です。

これまでLSAは自家用航空機やパイロットの訓練を目的に開発されていたため、1つの動力源かつ化石燃料を燃やしながら運行を行う、ヘリコプターや飛行機のような機体しか認められていませんでした。

しかしAxe eVTOLは、通常の飛行機としても操縦可能。離発着用のバーティポートを必要としないことからも有用性が認められ、LSAの資格を備えていることが証明されました。

Axe eVTOLをLSAに分類することは、スポーツパイロット(自家用操縦士)証明書を使用してAxeを操縦できるようになることを意味しています。日本ではまだ免許制度のないスポーツパイロットですが、これによって海外では、パイロットでなくてもeVTOLを操縦する資格を取得できる機会が生まれることになります。

eVTOLがLSAとして認められることにより、市場はどのように移り変わっていくのでしょうか?今後のAxe eVTOLに注目です。

08.Archer、eVTOL航空機の最大1億4,200万ドル契約の履行開始。米空軍が第1回支払いとして約100万ドル【2023/09/27】

米空軍の動きは、他にも。アメリカのArcher Aviation Inc.は、米空軍と今年8月に契約したeVTOL機「Midnight」の納入に向けた取り組みを開始したことを発表しました。

この契約にはArcherが空軍に最大6機のeVTOLを納入する他、追加の飛行試験データや認証関連の試験報告書を共有すること、パイロット訓練を実施すること、保守・修理業務を開発することなどが含まれています。

今回はそのうち、パイロットの訓練や飛行制御の運用に関する米空軍職員の理解を向上させるために使用する「移動式フライトシミュレータ」について取り組みが開始されました。

契約が全て履行されれば、総額は最大1億4,200万ドルとなるとのこと。米軍がeVTOLの可能性に期待していることが、投資金額からも伺えます。

09.CycloTech、初のサイクロローターを搭載した空飛ぶクルマを発表【2023/10/6】

最後に、最新の機体開発情報をお届けします。

オーストリアの企業・CycloTechは「サイクロローター」と呼ばれる技術を利用したコンパクトなeVTOL「CruiseUp」を発表しました。CruiseUpの大きさは、現在の自動車の1.5倍ほど。これは一般的なeVTOLよりはるかに小さいものです。

機体のコンパクト化を実現したのは、サイクロローターと呼ばれる360°推力制御推進システム。機体の揺れを少なくし、厳しい気象条件でも飛行を可能にする役割も果たしています。

快適な操縦性を実現し、本当に車が飛んでいるような乗り心地を実現するというCruiseUp。現在さまざまな企業が機体開発を進めていますが、CruiseUpは私たちの生活にどのように寄り添う空飛ぶクルマとなるのか?注目です。

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新しい情報が入り次第、今後も空飛ぶクルマの最新ニュースをお届けしていきます。

HYOGO 空飛ぶクルマ研究室【HAAM】noteでは、イベント情報や空飛ぶクルマの最新ニュースなど、空飛ぶクルマに関するさまざまな情報を発信中です。公式サイトでも最新の情報を発信しておりますので、ぜひ覗いてみてください👀

▼「空飛ぶクルマってそもそもどんなもの?」という方は、まずはこちらの記事をご覧ください!

HYOGO 空飛ぶクルマ研究室【HAAM】
SDGs思考で未来の空を構想するシンクタンクをコンセプトに、空飛ぶクルマの実用化が期待される2030年代に社会の中核を担うZ世代以降の若者【大学生・高校生】と共に観光・地域創生分野における具体的なビジネスモデルを考えるラボラトリー。大学生向けの空飛ぶゼミや高校生のSDGsへの関心を集める企画などを実施。


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