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記事一覧
宝石うんこ(410文字)ショートショートnote杯
むかしむかし、意地悪なお母さんと美しい娘が、貧しい家に暮らしていました。
娘は、井戸に水をくみに行きました。
みすぼらしい女の人がいます。
「お水を一杯、いただけませんか?」
娘は笑顔で、ひしゃくの水を渡しました。
「何杯でもどうぞ」
女の人は喜んで、水を飲みました。
「あなたは、なんて優しい娘なのでしょう。これから先、あなたがうんこをしたら、かわりに宝石が飛び出すようにしてあげましょう」
タイムスリップ財布(410文字)ショートショートnote杯
コードバンの財布を買った。
さっそく、お手入れセットで革を磨く。
中を開けると、一万円札が十枚入っている。
いや、そんなバカな。さっきまではなかったはず。
これは俺の財布だ。
財布の中の袋の部分がタイムスリップしたのだ。
そうとしか、考えられない。
つまり、これは未来の俺の金であり、俺が俺の金を使っても犯罪にならない。
都合のいい理由を思いつき、その金で豪遊した。
次の日、中を見ると、
金持ちジュリエット(410文字)ショートショートnote杯
うちの親は超金持ちで過保護がすぎる。
プロの女優になった私。
主役のジュリエット役をパパがお金で買った。
劇場の建て替え工事の費用を負担するらしい。
お陰で劇団では金持ちジュリエットと言われ浮いてしまっている。
この劇で役者として腕を一番見せるのはジュリエットの乳母だ。
私がやりたい役。
ロミオとジュリエットが初めてあった時、相手が誰かそれぞれに伝えて、バルコニーでの名場面で水をさし、ジュ
君に贈る火星の(409文字)ショートショートnote杯
「あら、珍しいこともあるものね」
火星開発で単身赴任中の夫からの電話だった。取り留めのない会話もうれしかった。
「君に贈る火星の…」
突然、目の前に広がる立体映像。彼の全身が映る。でも、そう言ったきり静止したままの映像。
しばらく止まったままの彼を見つめる。
私は、止まったままの彼に話しかける。
「電波障害かしら。普通は、みんなそうやって立体テレビ電話で話すものなのよ。
あなたったら、恥
コロコロ変わる名探偵(410文字)ショートショートnote杯
確かに私は名探偵だが、何の相談も受けてないこの状況をどうすれば良いのだ。
友人Aの推理小説家としての門出を祝うパーティー会場。目の前には、Aの死体。背中に包丁が刺さり血を流している。
奥さんがパニクっていて、叫び散らしている。友人が通報しようとしている。
「そこの君、通報するのは、やめてくれ。名探偵の僕がいる」
「じゃあ、こいつ、誰に殺されたんだよ。まず、警察だろ」
「犯人はAだ」
「自殺
しゃべるピアノ(381文字)ショートショートnote杯
神聖なピアノがあった。そのピアノは故人の霊を降霊してピアノに一時的に宿らせることができた。
駆け出しピアニストのカサラは、そのピアノにショパンの霊をおろしてショパンの曲を弾いた。
ピアノがしゃべる。言葉はわからないが、翻訳機でその意味を知る。
「違う違う、そうじゃない。そこは、手本を見せるから、よく覚えて!こう弾くんだ!」
ショパン直伝の音だ。最高の家庭教師だ。
来る日もくる日も、練習した。
告白履歴書(410文字)ショートショートnote杯
同じ会社の同期の花田彩さん。
惚れてしまい、告白した。
「告白履歴書を書いて来て。お返事はその時」
彩さんが、何を考えているのかわからなかったが、その日の夜、告白履歴書を書いてみた。
小学五年生の時、木村彩さんに告白。フラれました。彼女は、直後に転校。
中学三年生の時、山川春香さんに告白。フラれました。
大学二年の時、山田美桜さんに告白。フラれました。
以上
これを見た彩さん、
「最初の木
私は夢の(410文字)ショートショートnote杯
失われた文明の何か。
それが僕の目の前にある。
人間みたいな形をしたもの。人間みたいにしゃべる。
「私は夢の…」
そればかり繰り返す。
戦争というものが起き、人が殺し合い、全てを焼き尽くした。
獣を狩って食べるだけの僕たちにはわからない残骸があふれている。
この夢の…人間のような何かは、病気で動けないのだと思う。もし、病気が治れば、僕たちに夢の生活を与えてくれるのだと思う。
雨だ。
急
全力で推したいATM(410文字)ショートショートnote杯
無敵のATMというものがA銀行に出現した。認証システムがピカイチで、全力で推したいATMだった。
何しろ、カードも暗証番号も不要。ATMの前に立ち金額を頭に思い浮かべるだけで、口座に残金があればお金をおろせる。
詐欺で高齢者がお金を振り込もうとしてもそれを察知して、「詐欺の疑いが強いです。行員に相談してください」という紙が出る。
脅されて、お金をおろそうとしても同じだ。
まったくどういうシ
呪いのコップ(410文字)ショートショートnote杯
健二は、呪いのコップを持っていた。おじいさんからもらったものだ。
おじいさんに聞いた話だと、そのコップに水を入れても水は消えてなくなってたまらないらしい。たしかに、水を入れても一滴もたまらない。
毎日二十杯程度の水を入れなければ持ち主が死ぬ。
捨てると死ぬ。壊そうとすると死ぬ。誰かにあげるのはいい。持ち主が死ねば、どこかに飛んでいき誰かのものになると言う。
おじいさんが可哀想でもらってあげ
穴の中の大増殖(410字)ショートショートnote杯
ついに完成した。人間コピー機。
これで特定の人をコピーすると、外見も中身も同じ人が出現する。初めて見た人のことを大好きになる設定。
僕は大好きな橋本梓ちゃんのコピーを作る。
本物の梓ちゃんは、林進のことが好きだった。
庭に穴を掘ってその中に機械を置いた。
コピーデータは僕の記憶。スイッチオン
機械から手が出て、頭が出て、這い出しながら上半身が出て…穴の外で待つ。
「梓ちゃん」
僕は抱きし
名探偵タイムスリップ(409文字)ショートショートnote杯
私は名探偵として、今売り出し中の湖南堂 居留
(こなんどう いる)。数々の難事件を解決してきた。
そして、今回の事件は、超難問。私にも分からない。私は、しかたないので、神様にお願いした。
「神様、どうか真相を教えてください」
その瞬間に、タイムスリップした。犯行現場、まさに犯行が行われていた。Aが灰皿でBを撲殺。その灰皿をなんと、書斎の1番下の引き出しが二重底になっていて、そこに凶器を隠してる
穴の中のパーティー(410文字)ショートショートnote杯
海に潜った。深く深く。岩場に横穴があった。まだ、酸素は十分にある。
僕は穴の中へと入っていった。
奥へ奥へ。
突然明るく広くなった。音楽が聞こえてくる。
大きな魚や小さな魚、タコやクラゲ、カニやエビ、海の中の色々な生き物がダンスを踊っている。ダンスパーティーだ。
「あら、そんなの外して。息もできるし飲食もできるのよ」
和服姿の綺麗な女性が言った。
「あなたは?」
「私は、おとひめ」
周りを見渡すと
穴の中の貯金箱(410文字)ショートショートnote杯
健太が小学校から帰る途中、道端の大きなイチョウの木の幹に穴があるのを見つけた。覗いてみると貯金箱が見えた。
手を伸ばし、貯金箱を取ろうとした。なんとか指先が貯金箱に触れた瞬間、健太はその箱に吸い込まれた。
「よし、貯人箱に人が入った」
その木の枝に座っていた天狗がそう言った。天狗は貯人箱を手に取ると山の方へと飛んでいった。
「神隠し」はこうやって行われていた。
山の自宅に着いた天狗は、箱か