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穴の中の貯金箱(410文字)ショートショートnote杯
健太が小学校から帰る途中、道端の大きなイチョウの木の幹に穴があるのを見つけた。覗いてみると貯金箱が見えた。
手を伸ばし、貯金箱を取ろうとした。なんとか指先が貯金箱に触れた瞬間、健太はその箱に吸い込まれた。
「よし、貯人箱に人が入った」
その木の枝に座っていた天狗がそう言った。天狗は貯人箱を手に取ると山の方へと飛んでいった。
「神隠し」はこうやって行われていた。
山の自宅に着いた天狗は、箱から健太を出した。天狗の姿を見て驚く健太に天狗は、健太を天狗にしてやると言った。天狗になれば、神通力で欲しいものは何でも手に入ると言った。後継者対策の神隠しだった。
貯金箱に手を出す人間は、みんな天狗に従ったものだ。
「不要です。いりません」
「どうして?」
「個人的なことなのでお答えできません」
「なんでも願いが叶うのだぞ。なぜ?」
「あなたにお答えする必要はありません」
「この歳で詐欺対策…嫌な時代だ」天狗はため息をつき子供を元いた場所に返した。
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