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大切な人にプレゼントしたくなる『ことばとふたり(ジョン・エガード著)』#よみもの


またまた素敵な本に出会ってしまった。
大阪国際児童文学振興財団のオンライン講座で『2022年に出版された子どもの本』として紹介されていたので、図書館で予約した一冊。
この作品で初めて知ったけれど、著者のジョン・エガードさんは、1949年ガイアナ共和国(中南米)生まれの、世界的に有名な詩人らしい。
エガードさんのプロフィール写真からは、この作品と同じように温かく、親しみやすい人柄が伝わってくる。


『ことばとふたり』

著者:ジョン・エガード
ページ数:32ページ
第70回産経児童出版文化賞受賞
絵本ナビ プラチナブック(人気ランキング上位に与えられる賞)

絵本ナビ

あらすじ

ことばをしらないいきものがいた。
毎日、のんびり気ままに暮らしていた。
「たのしい」も「おいしい」も「あったかい」も、ぜんぶ感じていた。
ときどき心の中を冷たい風が吹き抜けることがあるけれど、胸と頭をたたき、ぐぐぐぐとうめくことしかできない。
こんな気持ちを「かなしい」と言うとはしらないから。
その様子を、ことばをしっているいきものがこっそり見ていた。
ことばはなくても、「かなしいことがあるんだ…..」とすぐにわかった。
腕を広げ、「ハグ」、「ハグ」と言いながら、ことばをしらないきものにどんどん、どんどん近づいていく。

感想

満面の笑みを浮かべ近づいてくる、ことばをしっているいきもの。
腕だけじゃなく心も大きく広げて。
声にに出さなくても「ぼくはあなたと友達だよ」という想いが伝わる。

ことばをしらないいきものが、たったひとこと「ハグ!」とつぶやいた。
そして・・・ふたりは、だきあった。

ことばとふたり

これを読んだ時、2歳ごろの息子が「ママー」とうれしそうに駆け寄ってきた姿がふっと頭によぎり、胸の中がほんわりと温かいもので満たされた。
まだカタコトだったから、「大好きだよ」という気持ちを全身で表現してくれていた息子。もちろんことばで伝えてくれるようになった今の息子もいとおしいけど、あの頃の息子を思い出すと頬の奥のあたりがきゅんと痛む。

そのひから、ふたりはなかよくくらしはじめた。ことばが多すぎて耳をふさぎたくなる日は、抱き合ってことばのない夜を楽しむ。

ことばとふたり

心と心が通い合う相手と過ごせるって本当にすばらしい。大好きな人とだったら、おしゃべりしていても、だまっていてもいい。こんなときに感じる気持ちを「しあわせ」って言うんだよねと、ふたりに話しかけたくなった。

『ことばとふたり』の大きな魅力は、絵にあると思う。
お互いをいつくしみ、心から安心しきって抱き合うふたりの表情は、いつまででも眺めていたくなる。

絵を描いたのは、イラストレーターかつ神戸市外国語大学の英米文化学科の客員教授きたむらさとしさん。
訳も担当されていて、本作以外ではぞうのエルマーシリーズが有名だ。

エガードさんの多くの本は、きたむらさんがイラストを担当しているとのこと。年齢も国籍も違う二人がどのように知り合って、コラボするようになったのか気になるところ。
それにしても、きたむらさん、絵と文で原作者の世界観をまるごと表現して日本の読者に伝えられるなんて。恵まれた才能がうらやましすぎる。

おまけ

大阪国際児童文学振興財団のオンライン講座は、視聴料1,000円。
動画の視聴期限は2023年12月15日で、2022年に出版されたおすすめの児童書リストもダウンロードが可能。
子どもの本の最近の傾向がわかり、勉強になる。


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