見出し画像

『三体(1)』

SF満漢全席

※この記事は『三体』シリーズのネタバレを多分に含みます。

kobochanne
今回は超大作SF長編、劉慈欣の『三体』についてということで!

画像1

guchon
よろしく!

kobochanne
おれは『D.O - 悪党の詩』を読んでた時に、ぐちょんから「今読んでる本を後回しにして読む価値あるよ!」って猛プッシュされたんだよね。
実際そのとおりにしたんだけど、たしかに熱いうちに読めてよかったし、感謝してるよ。

guchon
んだんだ!無理に早く読むよう勧めてマジよかった!
おれは日本語訳が出るのをずっと待ってたんだけど、中国本家版の『三体Ⅲ』が2010年に完結してから日本語版の『三体Ⅰ』が2019年に出るまで、10年近くかかってるんだよね。

kobochanne
中国SFが流行ってるのはケン・リュウ編集の『折りたたみ北京』でなんとなく知ってたけど、『三体』については日本語訳が出るまで全然知らんかったわ。
ぐちょんは、もうちょい前から『三体』のことは知ってたの?

guchon
英語版が出た2017年頃に、オバマ元大統領が「コレハサイコウデス」みたいに言ってて、それで気になってたんよ。

kobochanne
わはは!なんでジーコみたいな口調なんだ。
オバマって、しょっちゅう名作を推薦してるイメージがあるし、レコメンドは信頼できるよね。

guchon
オバマは音楽も良いレコメンドしてた気がするよ。たしか、フランク・オーシャンとかオススメしてたような…。

kobochanne
この記事を読むとフランク・オーシャンじゃなくて、フランク・シナトラになっとる!フランクちがい!

guchon
わはは!まぁ、どっちのフランクも最高ということで!

kobochanne
『三体』の話に戻ると、作中で『銀河英雄伝説』のヤン・ウェンリーの台詞が出てきたり過去のSF作品の引用が多くて、劉慈欣のSFオタクぶりが伝わってくるよね。『攻殻機動隊』の漫画みたいに欄外説明も多いし。

guchon
オタクさを隠さず、むしろゴリゴリ出してくるよね。

kobochanne
そういう名作のサンプリングっぽい部分もしっかり辻褄が合ってるし、これまでのSFの総集編じゃん!ってかんじだった。

guchon
ネタの詰め込み具合が、SF満漢全席ってかんじよね。
劉慈欣もインタビューで「アイディア出しすぎたわー、もっともったいぶれば良かった」みたいなこと言ってたよ。

kobochanne
ネタの密度もすごいけど、大風呂敷の広げ方も規格外だよね。
『Ⅲ』では1800万年後まで話が広がっちゃうのに消化不良感がなかったのはホントすごいし。

guchon
『Ⅲ』のラストは「宇宙よ……しっかりやれ!」の精神だよね。(第7回「オススメの短編(2)」参照)

kobochanne
そうそう!小松左京の『 神への長い道』のラストのかんじね!

guchon
劉慈欣もインタビューで「小松左京には影響受けた」って言ってたし、意識してるんだろうね。

kobochanne
そういや、訳者の大森望があとがきで『Ⅲ』のラストが『シン・エヴァ』と重なるって書いてたけど、たしかにどちらも"破壊と再生"の物語だったよね。
…ってか、ぐちょんは『シン・エヴァ』は観た?

guchon
実は観てないんよね、エヴァ世代なのに。
そもそも、エヴァシリーズ自体ほぼ観てないんだよね。

kobochanne
なんとなく観てなさそうだとは思ってたけど、シリーズごと観てないのか!
おれらの世代でエヴァを避け続けるってのも、逆に意味がありそうに感じちゃうけど…。

guchon
別に避けて観てないわけじゃないんだけどね。なんでだろうね…。

kobochanne
おれは、テレビから流れる『残酷な天使のテーゼ』を、「お母さん静かにしてよ!」って言いながら録音するくらいハマってたけどなー。

guchon
そういう思い出はホント大事よ!

kobochanne
ラジオをきれいに録音するために、アンテナ線を両手に掲げて窓際に1時間立ってるような思い出ね…。
『シン・エヴァ』は宇宙を破壊して新しい世界を作り直す話なんで、たしかに『三体』のラストと近いテーマを扱ってるのよ。大森望は翻訳作業の終盤で『シン・エヴァ』を見たらしくて、そのテーマの重なりに感動したって書いてたよ。

guchon
大森望の翻訳も良すぎたよね。元の文章が良いのももちろんあるとは思うけど、海外SFにありがちな読みにくさがまるでなかった。

kobochanne
わかる!おれも翻訳モノには苦手意識あるけど『三体』は全然気にならなかった。一度翻訳されたものを大森望が全面的にリライトしてるらしいし、かなり気合が入ってる。

guchon
そうそう!この作品を最善の形で世間に届けるぞ!って気概が伝わってくるよね。

kobochanne
最初は5冊もあって面食らったけど、読みやすいし面白いから長さを感じなかったわー。

guchon
最後は「もう終わり!?このまま次の宇宙の話もやってくれ~!」ってなるよね。


好きなキャラ

kobochanne
ちなみに、『Ⅰ』~『Ⅲ』ではどれが好きだった?

guchon
『Ⅰ』<『Ⅱ』=『Ⅲ』かなー。『Ⅱ』と『Ⅲ』はもうどっちも良すぎる!

kobochanne
おれは『Ⅱ』が一番アツかったかな。
『Ⅱ』は全体的にドラマティックだったし、水滴から逃げた戦艦同士が全体主義化して殺し合う疑似黒暗森林シーンはゾクッときた。あそこが全編通してもハイライトだと思ったよ。

guchon
おれも「どっちかはっきりしろ!」って言われたら『Ⅱ』かな。読みながら「こんな面白くていいの!?」って何度も悶絶したし。
『Ⅱ』は水滴攻撃もそうだけど、ラストのルオジーと三体人の心理戦のところもヤバかったよね。

kobochanne
いいよね!三体人が即刻「負けました!言うこと聞きます!」って言い出すところが潔すぎて。三体人はサイコパスすぎて話が早いのよ。
『Ⅱ』はルオジー&史強のコンビがホントいいし、キャラの差で『Ⅱ』が好きだったかも。史強は全編通してカッコよかったし、マジ『攻殻機動隊』のバトーさんだよね。

guchon
バトーさん重ねるのわかるわー!ルオジー&史強はコンビはいいよね!
『Ⅲ』は程心がそこまでのパンチがないからなー。頭の中で「ほどしん」って読んじゃうし。

kobochanne
わはは!名前の読み方は、他のキャラも含めて最後まで慣れなかったよね。
ぐちょんの推しキャラは?

guchon
おれは歌い手かなー。やることホント嫌らしいけど、マジ好き。
人間だとコボチャンと同じで史強かな。

kobochanne
歌い手は、ホント印象に残るもんね。逆に嫌いなキャラは?

guchon
それも歌い手になっちゃうかも。初めて読んだ時は「何この歌い手ってやつ!クソすぎ!」ってなったし、愛憎どっちもあるキャラ。
コボチャンはどうなの?

kobochanne
おれは、程心が嫌いだったな…。

guchon
それもめちゃわかるよ。執剣者(ソードホルダー)としてのルオジーとの対比ね!

kobochanne
そうそう!トマス・ウェイドと対比しても迫力ないし、なんか正義の味方だけどサゲマンみたいな印象だった。ちょっと意味違うけど、『無能の鷹』みたいな。

guchon
雲天明(程心に熱烈に片思いしていたが、程心によって脳だけ三体世界に飛ばされてしまった気の毒な童貞)も報われないしね…。

kobochanne
逃亡船のイケメンと別の宇宙で畑耕してしっぽりしてるし、なんか腑に落ちないんだよね。雲天明に感情移入しちゃう。

guchon
せめて雲天明には幸せになってほしいよね。

kobochanne
雲天明が脳だけ宇宙に飛ばされることを伝えられるところ、ホント気の毒だったし。

guchon
不憫な童貞の脳だけを宇宙に飛ばす発想、すごいよね…。

kobochanne
うんうん。もうすぐ死ぬからって、よくそんなことお願いできたよなー。
ルパンvs複製人間』のラストシーンを思い出したよ。

画像2

guchon
そうだよね。おれは脳だけになった雲天明がカムバックする時は『タートルズ』のクランゲ皇帝みたいになるのかなと思ってたよ。

画像3

kobochanne
わはは!で、オネエ口調で程心を「サワキちゃん!」って呼ぶのね。
ピザ好きなミュータント亀の宇宙人が出てくる『三体』も読んでみたいなー。

guchon
それ、もう『タートルズ』でいいよ!

<「三体(2)」へつづく>

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?