見出し画像

#57 オリンピック無観客:ライブ観客と転売ヤーの関係

4回目の緊急事態宣言が出る。オリンピックは無観客だそう。

それに関連して、2020年3月15日公表のエッセイを再掲します。(コロナが蔓延し始め、まだ延長が決まっていないギリギリのときのもの)

チケット転売問題の心理学

オリンピックが近づいてきた。

2019年6月から「不正転売禁止法」が施行され、ネット上でチケットの定価外転売はできなくなった。この法は音楽団体の意見広告に沿ったものだ。

画像1

その趣旨は、価格つり上げが横行しており、「本当に欲しいファン」の手に入らず、高いとグッズ等が買えず、転売サイトは犯罪の温床になっているとする。この団体の理事は「ファンとの良好な関係が壊される」「アーチストの利益が損なわれる」と主張する。

これに対してチケット転売業者は、買い占めは当然違法であるとしながらも、高額かはファンが決めることで、正当に手に入れた個人の売却は自由主義経済の権利であると反論する。また詐欺等の予防をしており、反社会勢力の介入もないとする。

経済学的には転売業者に賛同できる。

転売が悪なら仲介業・流通業など商いや投資出口を否定することになる。経済学入門で習う余剰分析は、最も高く支払う者から順番に買い、より「本当に欲しいファン」に渡ることで便益が生まれると考える。

抽選・先着は経済的に非効率であり、自ら安い価格に設定しておきながら「アーチストの利益が損なわれる」はずはない。なぜ最初から高く売り出さないのだろうか?この疑問に帰着する。

アラン・クルーガー(2001)は、ファンとの継続的な良好関係が損なわれると考えた。そして、行列のできるレストランと同じく、超過需要で人気がさらに高くなるとする。

しかし、長期的な関係の重視ならファンクラブ会員だけ安くすれば良く抽選の必要はないはずだ。また、行列させる事がファンを大事にしているとは言えない。

そこで行動経済学から価格が高ければ嫌悪感を与え、安ければ贈与交換としてファンは得を感じ、さらに応援すると結論した。

解決策として、一定数はオークションで売り、差額は慈善団体に寄付する方法を提案した(大竹文雄(2016)「チケット転売問題の解決法」(JCER)」を参考)。

ただし、これだと“ライブパフォーマンス”としての説明不足がある、と私は考える。

CD等が売れずライブ重視になっている状況が根底にある。アーチストも生活があるので長く売れることを望む。ファンと共に生きたいのだ。高額転売されるとこの目論見が台無しになる。

一度成功した者にとって何が最も怖いか考えると、ガラガラの会場の日が来る事だろう。沢田研二が“僕にもプライドがある”と中止したのは好例だ。そうなると価格を下げても手遅れで、不人気を自ら宣伝するに等しい。

スポーツでも無観客試合では力も出ない。逆に満杯であれば盛り上がる。入れないファンが大勢いれば尚更だ。ライブは観客と一体でつくられるものだ。

ライブの録画商品なら、複製供給できるから転売が問題になる事はない。多くのスポーツも不完全ながら継続性があるので当てはまる。対してボクシングのタイトルマッチや“最後の来日公演”が非常に高いのは一発に近いからだろう。
以 上

※ これを書いたのは、2020年2月だからオリンピック延期は決まっていなかった。この時点での問題は転売であって、「それなら何故安いまま?」という疑問に答えるものでした。

転売ヤーさんが台頭してきた頃です。

ところで無観客は、「有料チケットの観客がゼロ」のことであってまったくゼロではありません。IOCなど貴族やスポンサーさんが1000人以上座ってテレビに映るはず。

スポーツ評論家の玉木さんによると、一生懸命、有観客にしようとしたのはそれを隠すためだったそう。

私の陸上チケットは・・・残念

いいなと思ったら応援しよう!