感情と認知と仕事上のパフォーマンス
周囲を見渡すと、感情をコントロールできておらずポテンシャルを出し切れていない人が多数存在しているように感じる。具体的には「能力は高いのにネガティブな感情が優勢となり、手や足が止まってしまう人」や「能力が不十分なのにポジティブな感情が強すぎて、学ぼうとしない人」である。程度の差はあれど、誰しもが感情をコントロールできずに失敗したという経験が1つや2つはあると思う。
私自身もネガティブな感情から悶々と思考を巡らせて時間を無駄にすることが多かったが、ある本をきっかけとしてこのような状況から脱することができた。感情を中立に保てるようになってから過去の自分を客観視すると、感情のコントロールが上手くいかないことによって引き起こされるパフォーマンスのロスは小さいものではなかったと感じる。その本は私にとっての人生を変えた本の1つであるため、誰かの役に立てばという想いで紹介したい。
さて、その紹介したい本とはデビッド・D・バーンズ著『いやな気分よ、さようなら』(原著『Feeling Good』)である。うつ病の治療(認知療法)に関する本で、全米ではうつ病のバイブルと呼ばれているらしい。私自身は1度もうつ病と診断されたことはないが、この本に記載されている考え方がビジネスにおけるパフォーマンス向上につながっていると信じている。
本書のエッセンスを簡潔にまとめると、下記のような内容となる。
実際に現実に起こったことが感情を決めるのではなく、現実に起こったことをどのように「解釈」するかで感情が決まる
「解釈」をメタ認知することで、意識的に矯正することができる
正しい「解釈」ができれば、感情を乱すほど現実に起こっていることは悪くない
上記のエッセンスは単純明快で、正直なところ、目新しさは全くないと思う。しかし、本書を読んだあとに「研ぎ澄まされた理論ほど単純なものとなり、単純な理論ほど有益である」というようなどこかで聞いた言葉を思い出すはずである。具体的に書くと、本書を読めば、如何に自分が現実世界を正しく認知(=解釈)できていないかが分かる。また、本書の中に頻繁に出てくるワードに「認知の歪み」があるが、これが他人事ではないことが理解できる。当然ではあるが、本書には曖昧な理論だけではなく、陥りがちな認知(=解釈)の罠やその矯正法が記されている。
幸いなことに、本書は、この単純明快で退屈そうな理論を頭に刷り込む程度に物理的にやや分厚い。初見では読む気が失せるかもしれないが、少しでも興味がある方がいれば、騙されたと思って読んでみて頂きたい。
最後に、この本の何が仕事上のパフォーマンス向上に寄与するかを簡単にまとめる。まず、現実世界を正しく認知できることがビジネス上で如何に重要かという点について異論はないと思う。そして、現実世界を正しく認知できると過度に感情が振れることがなくなり、冒頭に例示したようなパフォーマンスのロスを減らせる。加えて、認知の歪みがありふれているという事実を認識することも有効である。この本を読めば、意思決定やコミュニケーションにおいて自分自身が現実世界を正しく認知できているか?とステップバックする重要性に気が付くと思う。また、他者にも認知の歪みがあると意識することで、人の解釈を通した情報を過信せずに一時情報を当たらねばという気持ちになる。いずれにしても、この本を読むのに費やした時間以上のリターンをパフォーマンス向上で回収できると言い切ることができる。
もし仕事で感情が乱れることがあるなと感じる方がいらっしゃれば、是非参考にして頂きたい。
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