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不完全

森の小径を1人歩く。
ひとしきり降った雨はすでに止み、一葉一葉が太陽の光を浴びてきらきらと輝いている。
鳥達の声が聞こえる。
なんて心地の良い朝なんだろう。
昨日の客は早々と帰って行った。
今日も客はくるだろうか。

私の時計はある時刻を境に止まっている。
人生には辛さや苦しさしかないと思っていた。
涙は枯れることがなかった。
物事を全て人のせいにした。
右目の下瞼がよく痙攣した。
人生全てが変わってしまった。
子供との別れは辛かった。

人間は勝手な生き物だ。
だから私は森へ逃げた。
誰にも会いたくなかった。
森は私を癒やしてくれた。
緑が好きだ。
優しい。そして美しい。

私は芸術の世界に足を踏み入れた。
絵画や音楽は私の気持ちを受け入れてくれた。
寂しくはなかった。
長い年月が経ち、時折人恋しくなるが、気がつけば私の周りには話をする友人さへ誰もいなかった。
長い本は読めなくなった。
私は手当たり次第に詩集を読んだ。
そして自らの感情を少しずつ自然に吐き出した。
そこには自然も人間も何もかもがあった。
生を謳う者もいた。
嘆く者もいた。
私は想像のなか、または創造の中に生きていた。
ほんの少し生きる勇気も頂いた。

そして今がある。私は3回自らを殺そうとしたが、今も生きている。
そこに価値があるのか分からない。
ただなんとなく生きようと思った。なんとなく。
時折詩のようなものを書くが、それを詩と呼ぶのかわからない。
感情を文字に起こすのが好きだ。

とにかく今、木漏れ日の中、朝の散歩をしながら、独り言を言っている。
生きよう。どうせはいつか死ぬのだ。
今は生きよう。生きたくても生きれない人もいるのだ。
無理はせず、普通に生きよう。
生きよう。生きよう。

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