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「アマビエ」と「神社姫」

そもそも「アマビエ」という名前が、意味を成さないなぁ、と感じたのだ。
「アマ」(=海女=海部)は良しとして、「ビエ」はビコやヒコ のカタカナを、読み間違えたか写し間違えたものと考えると、ヒコ=彦=男=奴(やっこ) つまり アマヒコ=海の男 となり、「このあいだ海にいた変なヤツ」的な感じに聞こえるので、納得できる。
もう一つ「ビエ」ではなくビメ、ヒメだとしたらどうだろう?
この「神社姫」と似てはこないだろうか?
「海の姫(アマビメ)」だった可能性は高いと思うのだ。
日本の妖怪や怪異は多くの場合、「陰陽五行」から発想されているものが多い・・あの「木火土金水」である。
これが古来から八洲日本の通奏低音として流れ続ける思想そのものなのだ。

この「神社姫」について自分の考えを少し語ろうと思う。
絵からその特徴を分析すると、姫というのだから女子、そのあたまには2本の角が書かれていて、これはよく知られてる「鬼」と同様のものだと思える。そしてこれは「牛」の角を模したもの。
長い鱗のあるからだは「魚」の特徴と「蛇」の特徴を表している。
そして、しっぽの先には3本の「刃物」のようなものが付けられている。
アマビエにも3本の脚があることと共通している点であることに注目。
さて、陰陽五行でいう「邪気払い」において最強の気は「金気」なのだ。
中国から伝えられた桃の実は「金果」と呼ばれ、「金気」は邪霊を祓うという故事から、縁起のいい果物として珍重されてきたのは、鬼を退治する「桃太郎」のおとぎ話をみれば納得できる。「桃」は特別な力を持つのである。
ここで十二支の干支を思い出してもらいたい。十二支には4つの木気、火気、金気、水気が割り当てられている。(土気については、他の項でのべる)
「子丑寅卯辰巳午羊申酉戌亥」と並べられて、「亥子丑」が水気、「寅卯辰」が木気、「巳午羊」が火気、「申酉戌」が金気である
ここで桃太郎の家来の動物を思い出してもらいたい、なぜあの3匹が登場するかが分かると思う。つまり、「金気」の象徴の動物(申、酉。戌)たちが力を合わせて邪悪なものたちを退散させる物語なのだ。

次に、五行には「相克」というルールがある。
水は火を弱め、木は土を弱め、火は金を弱め、土は水を弱め、金は木を弱める。「金気」が強くなれる相手は「木気」のもので、「木気」の象徴するものは、「動くもの、揺れるもの、雷、風、太鼓の振動、目に見えない動きのある自然現象」などである。古来、病気は悪霊、怨霊の仕業だと考えられた。悪霊退散の祭りなどには鉦をコンチキチと高い音で打ち鳴らすものが多いのも、「金気」でそれらを祓うために使われたと云われる。
邪霊、亡者など、目に見えない動くものは「木気」のものだと考えられた。
「木気」の真ん中にいる動物は「卯」である、その横に木を付けたら「柳」となる。なぜ江戸時代の幽霊画に「柳」が描かれたのかが分かると思う。

「神社姫」に戻そう
「金気」をつくる仕組みが、もう2つある。それを「三合」と「支合」という。巳と酉と丑が金気の「三合」であり、辰と酉が「支合」である。
その4つの動物はすべて「金気」の動物なのだ。
この「神社姫」を見ると、丑の角、巳のような長い身体を持つ理由が分かると思う。つまり「金気」を表現した身体を描かれている。
「魚」は「水気」のように思えるが、五行では木気とみなされる。魚やトカゲはウロコがある生き物で、そのワサワサしている様子から木の葉っぱを連想させ、属性は木となる。
「鯉の滝登り」の逸話は聞いたことがあると思うが、あの後、鯉は天に昇り「龍」になったのだ。(お寺の「木魚」には魚ではなく、2匹の龍が彫られているのはその故である)
よって「魚」の象は「龍・辰」とみなされ「木気」でありながら、「支合」によって「金気」の動物としても働く。

「金気」は西の方角を表す、そしてその卦は「小女」、若い女性である必要がある。よって「神社姫」の顔は女性である必要がある。
3つの刃物は、これを三叉の槍とみると、陰陽の8人の方位神の一人、歳殺神(さいせつしん)の持つ三叉槍とみることができる。この神は金気の陰の殺気を司る神で、万物を滅するすざまじい「力」を持つとされる。
また3という数は、易の三爻や三才(天人地)など、陰陽を併せ持つ数である(陰=2、陽=1)であり、万物の源を表す数で、太陽神たる三足烏や八咫烏の3本脚をはじめ、3つ目の大入道など、多くの不思議なモノに使われる。
このように「神社姫」は、完全なまでに疫病に打ち勝つ「金気」の護符の呪術的意味を盛り込まれ創作された逸話なのだ。
「神社姫」が疫病を退散させる「御守」たる所以が理解できたと思うが、いかがだろうか?

このように不思議な伝承を、その裏にある「理由」で紐解いてみると、妖怪の「つくられた」理由が分かって、よりたのしめると思うのだ・・が、無粋だったかな?

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