見出し画像

Qターンという提案

昨日、日野市にある明星大学のデザイン学科で開かれた公開講座に参加させていただきました。はじめて伺いましたが、きれいな校舎でした。

最近は公開講座への参加が、趣味の一つになりつつありますが、都内は大学が多いとはいえ、夜間や週末の開講、時事に関する講座は少ないように感じます。入学はハードルが高いですが、いくらか費用が発生しても、現役世代が、好きなタイミングで聴講できる講座はニーズがあると思います。20年前にリカレント教育を実践した身として、機会があれば、また学びたいと思いますし、逆に大学は受講している社会人から、様々な現場の視点を得られ、大学の知見も広がり、ブランディングにもなるはずです。

さて、昨日は午前と午後に2時間ずつ、それぞれに少しずつですが、ワークショップの時間もあり、充実した内容でした。ワークショップがあると違いますね。


CIのアップデート

午前の部は冨田洋美先生による「企業文化のあるべき姿をブランドにする」をテーマとしたブランド論。Olivettiから始まった先生のキャリアのご紹介から、ブランドの作り方、考え方をレクチャーいただく中で「コーポレートアイデンティティ(CI)」という言葉に久しぶりに触れました。久しぶりにというのは、社会や企業に定着したという面もあると思います。ただ、その後に「企業の社会的責任(CSR)」や、最近では「持続可能な開発目標(SDGs)」という考え方が出てきて、結局のところ、CIはこれらを内包しうるものでもありながら、かつてのCIでは成し得なかったとも考えられます。そういう時代だったということもあると思いますが、企業の倫理や存在意義は、これからますます問われるようになるでしょうから、CIが本領を発揮するのはこれからなのかもしれません。

Qターンとは

さて、ゆったり2時間の休憩をはさんで、午後の部は、萩原修先生による「地域でプロジェクトをつくる」でした。先生は、多摩地区などで実にたくさんのプロジェクトを立ち上げてこられ、その中で縁あって、教壇に立たれるようになったそうです。

この講座のワークショップは、各自のスキルや関心、居住地をヒントに、3人で1チームを作り、20分間で地域活性のためのプロジェクト提案を行う、というものでした。初対面の方々と関心や共通点を探りながら、短時間で課題を進めていくのはなかなかのスリルです。

我々のチームは、若い女性1人と壮年男子2名(私を含む)。それぞれの居住地は、遠からずでしたが、居住地に対する思い入れはそれぞれで、話していくうちに出身地などの地方の衰退といったところに話が及び、時間の制限もあり、そこをテーマに提案を行いました。

プロジェクト名は「Qターン」。具体性の乏しい、ほぼ概念だけの提案になってしまいましたが、Uターン、Iターンとの違いは、決め打ちで特定の地域に向かうのではなく、プロジェクトなどを通じて、様々な地域と関わりを持ちながら、気に入った地域があれば移住する。そんなイメージです。これは私自身の経験からも言えることですが、価値の再発見には、よく言われる「若者、よそ者、ばか者」といった既存の文脈にはない視点が必要です。自然環境や人柄といった、住人たちによる、言い方は悪いですが、手前味噌論だけでは、個性が見えにくい面もあると思います。捨ててしまっているところが、実はおいしかったというような。

時には「ない」ことが、価値(=ある)になることもあります。電波の届きにくい土地で過ごす時間の価値もあるはずです。
15年ほど前に、私の出身地の山間部では、若い人がいなくなって、お祭に幟旗が立たなくなったという話を聞きました。外から若い人たちがやってきて、お祭の時に幟旗を立てて回る。そんなことだけでも地域の活性化や、その土地に関わるきっかけになりそうです。

明日はどっち

チームの女性の方もそうでしたが、今の若い方たちからは特に、職業、企業といった枠組みだけでなく、社会や地域との関わりを持ちたいという機運を強く感じます。もう一人の男性の方は、定年を前に会社のお仲間と起業される予定とのこと。講座に参加された方々が、そもそもそうした気質を持っているからとも考えられますが、座して待つのではなく、リスクをとって動こうとしている人が、老若男女を問わず、少なからずいる。ここの人たちを集めただけでも、相当なエネルギーなんじゃないか。そんなことを感じながら、気持ちが前向きになれた講座でした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?