見出し画像

『WOOD JOB!~神去なあなあ日常~』を観てみました

こんにちは!今日は映画「WOOD JOB!~神去なあなあ日常~」(2014)を観ながら、西粟倉の状況と照らし合わせてコメントしていこうと思います。いつのまにNetflixにきていたんだ。

このnoteにたどり着くひとでこの映画の存在を知らない人は多くない気がしますが、映画のあらすじはこんな感じです(Filmarksより)。基本的に軽めの映画、コメディです!

毎日お気楽に過ごしていた、チャランポランな男子・勇気(染谷将太)は、大学受験に失敗、彼女にもフラれ、散々な状態で高校の卒業式を迎える。そんな時、ふと目にしたパンフレットの表紙でほほ笑む美女につられ、街から逃げ出すように1年間の林業研修プログラムに参加することに。 ローカル線を乗り継ぎ降り立ったのは、ケータイの電波も届かぬ“超”が付くほどの田舎・神去村。鹿やら蛇やら虫だらけの山、同じ人間とは思えないほど凶暴で野生的な先輩・ヨキ(伊藤英明)、命がいくつあっても足りない過酷な林業の現場…。耐えきれず逃げ出そうとする勇気だったが、例の表紙の美女・直紀(長澤まさみ)が村に住んでいると知り、留まる事を決意するが…。休む間もなくやってくる新体験、野趣あふれる田舎暮らし、とてつもなく魅力的な村人に囲まれ、勇気は少しずつ変化してゆく――。
果たして、勇気と直紀の恋の行方は?無事に生きて帰れるのか!?
抱腹絶倒!! ワイルドすぎる青春エンタテインメントの幕が今、上がる!!!

ここから先、ネタバレしながら進めますので嫌な方はご注意ください。映画を観ながら/観たあとにでも読んでもらえると嬉しいです。

林業をしにくるワカモノ

平野勇気(染谷将太)は大学受験に失敗し、付き合っていた高橋玲奈(清野菜名)にもフラれた中、林業就業促進のパンフ表紙に写った女性を見て研修を受けに行きます。

西粟倉は人口1400人で、その中で移住者が130人程度です。地域おこし協力隊は現時点で30人程度。たくさん人が来るので、中には林業に就くひともいます。ただし、主人公の勇気みたいなノリは珍しいかも。

過去数年間で林業に就いた人を思い浮かべると、別の場所で林業に関わっていたひとか、林学を学んだりしていたひと、自然が好きでたまらなくなってしまったひと辺りになります。知人の紹介も王道ですね。

余談ですが、山の作業をしている女性はまだ村の事業体にはいません。事務員さんはいるのですが。個人の仕事で、奥さんがお手伝いにきてる場合はたまにあります。トイレ問題とかが結構難しいかな…。

林業の研修について

勇気は他の林業就業希望者と一緒に、研修で基本的な知識や実技を学びます。厳しいヨキ(伊藤英明)の指導を受け、逃げ出そうとするものの、直紀(長澤まさみ)に出会い踏みとどまります。

映画での研修は泊まり込み+集団ですが、西粟倉に研修プログラムはありません。最初から個別に企業で働きます。制度的には「緑の雇用」で数ヶ月のトライアル雇用+年間30日弱の研修ですね。

イメージとしては、林業大学校が映画の研修に近いのではないでしょうか。期間は1-2年と長くなりますが。村内に出身者はほとんどいないものの、うちの会社には京都府立林業大学校卒の山守がいます!

研修に行くまでは雑用が多いとは思いますが、事業体によっては社内で早い段階から教え込んで(特別教育)、伐倒したりすることもあります。村内の業者は「見て覚えろ」より、説明を叩き込む所が多いイメージです。

あと、映画の研修所は汽車が6時間に1本で携帯電話も圏外でしたが、西粟倉は都会なので!汽車はほぼ1時間に1本きますし、村内だいたいどこでも電波があります(ソフトバンク弱め)。マムシはいます。

村の暮らしについて

勇気は1年の実地研修としてヨキの所属する会社、中村林業に配属になります。は研修所からずっと山奥にある神去村にある林業会社です。勇気はヨキの実家に居候することになりました。

世話になるひとの家に居候というのは西粟倉では少ないですが、単身者が住める場所がほとんどありません。関係者の知り合いがいるシェアハウス、とかがうちの村だとリアリティありますね。

神去村は携帯ショップのある隣町まで車で2時間ですが、西粟倉は都会なので!無料高速が通っており、携帯ショップまで30分です。コンビニは10分。アマゾンは翌日届くしもちろんNetflixも見れます。

↑秘境感の無い村、西粟倉。

挨拶にこなかったことで憤慨するお偉いさんの描写が出てきますが、西粟倉含めた”田舎あるある”ですね。まあうちの村はかなり人の出入りが激しいので、もはや気にされなくなってきている向きもありますが。

↑待機児童が発生、という5年前の記事。新しい保育園ができました。

研修所からの帰りにヨキが轢かれた鹿を拾って帰りますが、時間の経ったロードキルを捌く人はいないような…。あと生食は止めるべきです。なお鹿自体はよく見かけますが、村内で出くわすのはだいたい夜。

【追記】
妊活とラブホの関係についてハダさんよりツイート頂きました!田舎のコミュニティは狭くてフレンドリーだからこそ、イロイロ気を使う部分、端的に言うと面倒なことが多い…笑

山での仕事について

怒られてばかりいる勇気ですが、ヨキの伐倒する姿を見たり、社長(光石研)の語る仕事の意義を聞いたり、自ら様々な作業で山と向き合うちに、林業の魅力に徐々に惹かれていきます。

中村林業さん、すごいですね…!搬出や保育だけでなく、植栽どころか種取りまで。たぶん「林ヲ営ム」に出てきてもおかしくないような、立派な林家だと思います。さすが三重、歴史ある林業地です。

西粟倉はほとんどが搬出間伐で、木に登ったりはほぼありません。作業道の開設、伐倒、木寄せ、造材、運材…などが主な作業で、高性能林業機械が中心となります。そういえば出てきませんでしたね。

中村林業は構成的にベテラン多めなイメージですが、西粟倉は若いひとが多いです。村内で施業をする事業体はだいたい4つか5つですが、主力はだいたい30代なはず。一番若いところは、社長さんが32歳です確か。

トラックの荷台に乗って皆で歌うとか、そういうのは無いです。この辺は地域性なんでしょうか…?あまり聞いたことはないですが。古くからの林業地と戦後に始めた所はいろいろ違いそうかな、という気もします。

原木販売を中村林業では木材市場でやっていましたが、西粟倉は村内で処理します。良い木は村内製材所、悪い木は温泉・バイオマス、残りは合板工場(直接取引)です。しかし100年生であの値段つくのはスゴイ…。

↑村産材が使われるところの例。

この映画、フェイスガードしてなかったり、林業関係者の安全に懸ける思い(濃淡ありますが)は捉えられてませんでしたね。立木は重く、山は不安定な要素で一杯。安全第一にやっていきましょう。

【追記】
この5,6年で制度的にも意識的にもだいぶ変わった感じですね!KzYさんよりご指摘頂きました。

都会からの見学者について

ある日、勇気のもとを玲奈(元カノ)と、その大学の友人達である「スローライフ研究会」が訪れます。しかし、どこか林業を見下したような態度の彼らに対し、勇気は「帰れ」と叫ぶのでした。

めちゃくちゃ憎たらしく描かれてますね。必死にやっていることを、奇異の目で見られるのは腹が立つ。林業に限らず、一般的な話だと思います。これは国際協力とか、貧困対策の"業界"でもよく見かけますね。

尤も、僕自身も3年前に村に来たばかり、林業素人です。しかも現場職ではない。今でも「スローライフ研究会」的な存在として捉えられがちです。真摯に敬意をもって、成果を出し続けるしか無いですね。

まあそういうのは一旦置いといた上で、最近、西粟倉では林業だろうが製材だろうが木工だろうが、地元だろうが移住者だろうが、みんなで一緒に頑張ろう!という雰囲気がだいぶ出てきてます!いいことです。

外部の存在と交流を広げていく・深めていくことは、山村の未来にとってとても大事。安心して観に来れる環境や関係づくりをこの協同組合や株式会社百森では行っていきます!なにとぞ宜しくお願い致します!

多分、見学者を受け入れる側は一回一回に一喜一憂しないような状態をつくるのが大事なんだと思います。量を上げてから質を管理するというか。西粟倉の移住政策はこの辺が上手くいってるような気がしています。

↑こんなイメージ。頑張りましょう。

なぞの奇祭について

"山の男"として認められた勇気は、地域の祭りに参加します。ふんどし一丁で山に登り、巨大なご神木を伐倒し、滑り落とすことで五穀豊穣と子孫繁栄を願うものです。

西粟倉にもあります!奇祭。全国ニュースでもよく報道されることのある西大寺会陽(はだか祭り)と、同様のお祭りが2月に開催されます。他所からも参加者が来て、結構な熱気に包まれます。

僕は消防団での警護でしか参加したことはありませんが、移住者も結構大勢で参加したりしています。数年前には移住者と地の人でつくった混成チームが十何年ぶりに神木を奪取して話題になりました!

ひとこと

最後に都会に戻ってきて人の多さにビビるシーンや、木の匂いでなんとなくホーム感を感じるシーンですが、自分も似たような体験があります。意外とすぐ人間って環境に慣れる/忘れるんですよね。

この映画、結局どの程度正確なの?みたいな話をたまに聞かれます。林業は場所場所でかなり異なるので、正確かどうかをヒトコトで言うのは難しいです。感覚としては、学園ドラマが描く学生生活=この映画が描く林業、くらいのイメージで捉えるのが良いんじゃないかなと思いました。

しかし面白い映画で、良かったです。原作になってる「神去なあなあ日常」三浦しをん(2012)もメチャクチャいいです!個人的には小説のほうが好きなくらい。とくに「なあなあ」という言葉や暮らしへの素朴な敬意がしっかりと描かれており、ほっこりします。林業に関係があってもなくても、オススメできる小説です!

ほかに林業っぽい映画として「キツツキと雨」沖田修一(2012)というのがあるんですが、まだ観れていません。これもNetflixにあるので視聴しなければ…!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?