20240215 駅

駅だと思ったら違っていた。

ここまで来れば何とかなると思っていただけに、その落胆は大きかった。古びた大きな木で囲まれた駅舎に見えたその小屋は、よく見ると祠のようになっていて奥へ奥へと続いている。

しゃっしゃっしゃっという音が聞こえてきたので、祠の周りを歩いてみると、住職のような格好をした老人が落ち葉を箒で掃いている。

ここは駅ではないのですか

こう何度も尋ねてみたが、その老人は耳が遠いのか、こちらを一瞥もくれることなく黙々と掃き続けている。

祠まで戻り、よく見てみると、祠だと思っていたものはどうやら洞穴のようだ。その入口を囲うように小屋が建てられている。あの老人が手入れしているのだろうか、小さな箒が立てかけてあったり、徳利が置いてある。

洞穴の奥は暗くてよく見えない。耳を澄ませてみるが何も聞こえない。ひんやりとした空気に少しだけ黴びたような匂いが混じっている。

おかしいな。
確かにここは駅だったはずなのにな。



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