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犬のキシリトール中毒を知ってください

 今これを書いていても、1日前に起こった出来事のことを想像するだけでまた動悸がしてきます。無知をひけらかす事は恥ずかしいですが、それでも一人でも多くの方に私のような失敗をして欲しくないと思いこれを綴っています。

ことのはじまり

 昨日は日曜日。私は朝7時すぎからガイドの仕事にでかけました。
早朝に愛犬とのお散歩です。いつものように元気一杯。お通じも通常です。晩秋のボストンの朝を満喫していました。
そして仕事に。
今日は一日中ご案内してお夕飯もご一緒する予定です。娘に夕方の散歩をお願いしておきました。

Quincy Market のクリスマスツリーも飾られていました。

 お客様とお別れして9時すぎに帰宅。
いつもなら大声で出迎えてくれる彼の声が聞こえません。
あれ?どうしたのだろうと思いながらも、娘がお友達の家にでも一緒に連れて遊びに行ったのかな。と解釈してもう一人の愛犬MOMOと一緒に散歩に出かけました。
それでも帰ってきたところでフッとみると、それぞれのお散歩紐があります。えっ、どういうこと?と思い娘に電話すると、家にいるはずだというのです。そこで大声で呼びかけて家中をさがしても出てきません。狂ったように探しているとある部屋の片隅でうずくまっていました。
急いで抱きかかえると瞼をあけたままでぐったりとうなだれています。口からは何かを少し吐いていました。そしておしっこを漏らした跡がありました。
大声で呼びかけてもなんの反応もありません。それでも息をしているのがわかります。弱々しいですが胸が動くことを確認できました。
私が大声で呼びかけ続けると少し痙攣をおこすのです。
すぐに救急へ向かいました。

 助手席にのせても痙攣をするのかすぐに足元に落ちてしまいます。
我ながら狂ったように出発しようとおもったその時、娘が帰ってきてくれて二人で救急病院に向かうことができました。
大声で声をかけても呼吸が弱くなってきていることを感じあせるのですが、記憶にある救急病院へ電話しても繋がらないと娘がいうのです。(きっと娘も動転していて違う部署にかけてしまったのかもしれません)
一縷の望みをかけて911に電話をすると、すぐに24時間体制の救急病院を教えてくれました。
その電話をしているあいだにも呼吸がとまったかのように動きません。
とにかく駄目元でもと、必死で口をこじ開けて私の手を入れてみました。
もしかしたらそれがよかったのかどうか、救急病院に到着した頃には意識が戻ったようでした。
呼吸も弱くはありますが胸が動くのを確認できるようになったのです。

救急病院にて

 抱きかかえて病院に入ると、すぐにスタッフの方達がバイタルチェックをしてくれました。
意識がある、大丈夫ですよ。と声かけしてくれます。人目も憚らず大声で泣いてしまいました。

 すぐに個室に移動してIVが入れられました。
そんな時にも、スタッフの方達は私たちを優しく気遣ってくれます。
IVが動かないようにするテープもキリンの様な柄です。彼の色にそっくりね。コーデイネートが可愛い、なんてそんなジョークも言ってくれるのです。
それでもIVを入れることも痛いだろうにぐったりと横たわったままです。
先生がいらして治療手順を説明してくれました。
まずは誤飲を疑っての超音波検査、そして血液検査。
すると、ありがたいことに誤飲がないことがはっきりしました。
しかし血液検査の結果、たいへんな低血糖を起こしているというのです。

 彼の食事は毎日夜に一度。昨夜も食欲旺盛で一瞬でなくなりました。
夜9時に私がかえってきたところで食事時間となったとしても、そんなに低血糖をおこすほど空腹時間が長かったとは思えません。
何か薬物をたべていないか、そう質問されましたが特に何も浮かびません。

 そして糖を注射すると、意識がはっきりと戻ってきていることが私でも確認できました。頭を起こす様になったのです。
私を見つめる瞳がいつもの彼です。涙がとまりませんでした。
そこでまた血液検査をすると血糖値が改善されています。
通常の輸液を受けながら、考えられる原因は。。。と先生が説明してくださったことに私はびっくりしてしまったのです。

キシリトール中毒

 Sugar free のガムを食べませんでしたか?と質問されました。
私は食べません。すると、娘があっ!っと気がついたように話しをはじめました。今日のバイト帰りにガムをもらった。それをリビングルームに置いて出かけた様な気がするというのです。

 多分それだと思います。きっとそれを食べてしまったのでしょう。と、そして恐ろしいキシリトール中毒について説明してくれました。

 私は幼い頃から犬が大好きで、今までも何匹も家族として暮らしてきました。
チョコレートが危ない事はもちろん知っていても、キシリトールがそんなに犬に対して毒であることなど一切知らなかったのです。
心から自分の無知を恥じました。

 なんとか回復して真夜中2時近くにようやく帰宅。
娘がリビングを確認すると、案の定、ガムが入った入れ物が転がっていました。
本当に心の底から彼の命が回復してくれたことを感謝しています。今回の私たちの失敗から、彼は多くのことを教えてくれたのです。

 キシリトールはガムだけではなく、歯磨き粉にも含まれている場合もあるのだとか。
今回の彼の様に、別にガムを食べたいと思って食べるわけでもなく、入れ物をおもちゃとして噛んで遊んでいるうちに誤食してしまう。それも十分に考えられるそうです。どうぞ、たくさんの方に私たちの失敗を知ってほしいと思います。

 ペットとの暮らしのなかで、幼いお子さんの誤飲事故防止と同じ様に気をつけなくてはいけないことを、私も今回のことで一つ学びました。

 本当に、心から反省しています。
彼の回復を手助けしてくださった救急スタッフの皆様へは、感謝の言葉しかありません。本当にありがとうございました。

IVを外してもらって無事お家に帰ってきました。
RIngo は息子夫婦の大切な子供、私にとっても孫そのものです。



参考文献

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan/16/1/16_30/_pdf


1992年からのアメリカ暮らし、ボストンはそろそろ四半世紀になりました。 「取材」と称していろいろ経験したり、観光ガイドも楽しんでいます。 https://locotabi.jp/loco/hyacinth 応援していただけたらとても励みに思います。