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覚醒か眩惑か

「外」の世界や、人とのかかわりを知った私。

目が覚めたのか、それとも惑わされているのか。

当時は、自分では

「覚醒した」と思っていたが

今考えると

「正常な判断ができず踊っていただけ」

のように思う。

その時の私の話。

妬みと憎しみ

表ではニコニコしつつ

裏では妬みの感情がふつふつと湧き上がる毎日だった。

自分は、他の子よりも劣っている。

着ているものも

持ち物も

髪型も、メイクも。

どうして、みんなあんなにキラキラしているのに

私はこんななの。

メイク道具なんて持ってない。

名前の知られたブランドの服なんて一枚も持っていない。

上下揃いの下着も持っていない。

スポーツブランドのスニーカーなんて

一足も持ってない。

わたしも、みんなみたいに

キラキラしていたい。

何もかも憎くなっていた。

生まれた環境も

親も

反抗しなかった自分も。

必死に生きたはずの自分が

憎くて仕方なくなってしまっていた。

もう一度、生き直したくなった。

誰も知らないところで

別人として。

そうしたら、我慢なんてしないで

私の好きなように

私らしく生きたい。

そのためには、どうしたらいい?

タイムリミット

卒業が近づいていた。

卒業したら、実家に戻る約束だが

どうしても帰りたくなかった。

あの暮らしには、戻りたくなかった。

日々、焦りが募る。

焦りと恐怖で、自分を見失っていたと思う。

冷静さを欠いた私が出した結論は

「逃げる」

逃亡仲間

私には、「仲間」がいた。

当時付き合っていた彼。

彼もまた、親との確執で悩んでいた。

私にしたら、彼は恵まれているように見えた。

好きな高校、しかも私立高校を出してもらっていたし

経済的にもかなり裕福だったのだ。

でも、ヒステリックで自己中心的な母親と

母親の機嫌を伺うばかりの威厳のない父親に

心底嫌気がさしていたらしい。

ふざけているように装って

「私、逃げようかな。家出して」と話すと

その話に乗りたいと言ってきた。

関東で一人暮らしをしている親友がいるんだ。

かくまってくれるように話すから、と。

付き合って間もないし

そんなに愛情があるわけではなかったが

仲間がいるのは心強い。

とんとん拍子に話は進んだ。

当時流行っていた、失踪に関する本を読み漁り

少しずつお金を貯め

身を寄せる場所を確保し

私たちは、長い旅に出た。

今になって思うこと

人に運命があるとするならば

この決断は、良いことだったのかもしれない。

それがあるから今がある。

優しい主人がいて、かわいい子供たち、かわいい猫もいる。

でも、その決断をしなくても今の暮らしが手に入るとするならば

この決断は、後悔に値するだろう。

犠牲にしたものが多すぎた。

沢山の人に迷惑をかけたことはもちろんだが

自分の「立ち向かう気持ち」すらも

消し去ってしまったから。

幼いころの私が必死に生きた気持ちに

背中を向けるような行為だったと思っている。

罵詈雑言には耳を塞ぐことも

殴りかかられたらよけることも

怒鳴られたら怒鳴り返すことも

私が少し頑張れば、できたはずなのに。

その時の私は

嫉妬にと憎しみに狂い

本質を何も見ようとしていなかった。

「克服」と「解消」をはき違えていただけに

他ならないのだ。

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