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忘れられない先生

娘に聞くと、就学前のことは全く憶えていないと言う。
ちょっと不思議な気持ちになる。
アタシは結構、記憶に残っている。
2歳半の孫がいるけど、この子が大人になったとき
今、起こったことを憶えていると怖いけど。

通っていた幼稚園は、お寺が経営していた。
園長先生は60歳代くらいの温厚な紳士。
婦人は、スネ夫のお母さんのイメージが
一番近いかなと思う。

朝は出席ノートにシールを貼ることから始まる。
要領の悪いアタシは、違うページを開けていることに気づかず
モタモタしていた。
気まぐれにクラス巡回に来ていた園長婦人先生が、
アタシ厳しく叱責した。
「何をしているんや!そこやないやろ!」
静かな教室に怒声が響いた。
トロ臭くて無口な幼児でも、プライドはある。
ムラムラと感情がこみあげてきた。
カバンにノートを突っ込み、つかつかと教室を出ると
ズックをはき替え、走った。
後ろから呼び声がしたけど、かまうもんか。
どんどん逃げた。

バス通園していて、自宅までは距離があったけど、
一本道なので、迷わなかった。

帰宅後、どう過ごしたのか?

40歳過ぎたころ、母にそのことを聞いた。
母は憶えていた。

「なんで帰ってきたんや?」
「腹が痛いから」
嘘をついていた。

幼児が一人で歩いて帰ったのに、報告連絡何もなかった。
親も確認しなかった。

なんというユルさ。
無事で良かったよ。
園児のアタシ。

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