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お猫さまとアタシ

実家にいたころは、常に猫がいた。
田舎だし、当然外飼いだった。
怪我をして帰ることもあれば、
外泊して2.3日帰らないことも、あった。
動物病院が無いから、去勢避妊もされてない。
大人たちは、産まれた子猫や子犬を平気で棄てていた。
そして、犬や猫は拾ったり、もらってくるものだった。

小学生のとき、拾った錆の子猫を飼い始めた。
学校から帰ってきて、家にいたら
弟が泣きながら駆け込んできた。
涙でぐしゃぐしゃ。
動揺で歪み、笑っちゃうくらい不細工な顔。
「猫が車に轢かれて死んでしもうた。」
え!?
玄関を飛び出した。
道端にうずくまっている子猫は、ただ寝ているようだ。
そっと、持ち上げる。
眼は半開きで血走り、口から舌がだらりと伸びて血が流れていた。
何か包むものを。
アタシは走った。
物置に駆け込む。
そこには朝、アタシが猫のために用意した餌が残っていた。
食べかけのまま。
涙がどっとあふれた。

遺体を片付けながら、グズグズ泣いていたら、
近所のばあさん達がせせら笑った。
「猫めが死んだくれいで、何がそんねもうつけねんや?」
(なにがそんなに可哀想になのか?)

猫の遺体は山の林道から少し外れた、木の下に埋めてやった。
木っ端で穴を掘り、木の葉と枯れ草を敷いた上に寝かせ、
もう一度、枯草をかぶせ土をかけた。
木っ端を墓標にして、ピンクや紫、黄色の野の花を供えた。
それから、毎日花を供えに行った。

小さな塚を見ながら、しばし朽ちて土に還るさまを想像した。



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