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たそがれ大食堂【読書感想】「この小説のこの子は私だ」と思った。

食べ物が出てくる小説が好きです。お外で読むのに絵面がいい。
あと基本 ほのぼの。
食事時に読むのにちょうどいい。
そーなのー。基本ほのぼのって言うのが助かる。
サスペンス系が好きですよ。人を疑ったり仲間の裏切りにあったり、殺伐とした空気の中で生存の道を探っていく系のサバイバル感。
だが、そこに現れるグロテスク感や痛々しさはちょっと体と心が疲れている時は本当にいろんな物を傷つけるので(精神的なものを)休息の時間や思考をいったんやめる時などには似合わないのでこういうほのぼの系を嗜むのです。うふふふ。

あらすじは、デパートの屋上にあった昔ながらの大食堂。現在も生き残っている架空の大食堂を舞台に、主に女性が主役で立て直しのストーリーが広がっていく短編集型の小説本です。

オムライスやナポリタンなどのお馴染みの洋食アイテムをキーワードにお話が集まっています。主人公は大事な顧客を怒らせて配置転換され、まったく関わったことのない食堂部門のマネージャーへと飛ばされた瀬戸美由起。
若社長の気まぐれ&悪巧みで他のお店から引き抜かれて大食堂の料理長に抜擢された強気で実力抜群、ガッチリ系姉御肌の料理人前場智子。
影の支柱、ひっそり控え目だけど地道なこだわりを何年も続けられる粘り強い精神力の持ち主デザート部門チーフ臼井。
何気に主力エンジンで有能な機動力、男性受け魅力抜群の仮面をかぶった名役者レトロ洋食大好き「めりめろ」こと白鷺カンナ。
ここら辺のキャラクターが取り壊しに追い込まれそうな時代遅れの大食堂の売り上げをアップさせて取り壊しをさせないよう頑張る人たちです。
いい。
現代の話だけど40代の私の記憶にうっすら残っている心の欠片に共鳴するモチーフです。似たような名前のコンビニとかで変える短編漫画集と名前がほぼ同じなんだけどあれも昭和の思い出に訴えてくるよね。

懐古って楽しいもん

昭和からタイムスリップしてきたら現代にはこういう風に対応していくんだねって思いながらメニューの一つ一つのエピソードを楽しめます。
なにしろ料理人の智子の腕がいい。
いきなり料理長に抜擢されて古参のスタッフと衝突しながらも料理を介して理解しあって絆を作っていく…というよくあるパターンだけど、古臭いと言いつつ智子はすごく真摯に料理に向き合って限られた予算や人材や道具の中で最大限の良さを引き出してくれる。
味が想像しやすい。あと所々共感できるポイントが多い。
オムライスは昔は包んでたあのパンっとしたシルエットがいつの間にかオムレツを開いてトロリとさせるカバータイプが主流になった、とか。
プリンもトロトロタイプが受けてるけど、しっかり玉子感のある「す」が入ったきっちり固いタイプがいいの!生クリームやかさましのコーンフレークが食べたいんじゃない!私はプリンを食べたいんだ!とか。
全文同意します。

あと「めりめろ」ちゃんの指摘が本当に的を得てる。
プリンには銀皿だよね。少しだけの高級感とレトロ感と色の組み合わせ。
全てが完成されちゃってるもんね。
この子が私的に心にくる。好きなキャラクターと言うわけじゃない。
性格は好きじゃないし、自分中心で正直すぎて「もうちょっとオブラートをまとった方がいい」って思うんだけど、目について痛いなこれって思う部分が自分の持っている傷だったりして、つまり自分と似すぎて
これは私かもしれない。
私がこの小説の世界にいたら、この子だろうなー。


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