見出し画像

詩人の恋 10

人混みに 消えてゆく君は

肩をすくめて 微笑んでいた・・・

      ※

君が初めて 僕の前で 

肩をすくめて 笑った時

少し滑稽で 可愛いらしく思っていた


だけだった・・・のに


お互いの時が 重なり合うにつれて

君が 微笑む時


いつの間にか…

僕も また 肩をすくめて

滑稽に 笑うようになっていたね。


あの時の シンクロ 

お互いの瞳にあった確信は

本物だった・・・と思う。


ただ 二人は 

その確信に 安堵し 

最後の言葉が 素直に言えなかった・・・


愛しています・・・と。


・・・

お互いの時が ずれ始めるにつれて


僕はこちらで 君はあちらで

誰かと 肩をすくめて 笑い


君はこちらで 僕はあちらで

お互いの 将来を描いた。


それは 

見つめ合い シンクロし

肩をすくめて 笑いあった


楽しかった 日々の延長ではなく


結局 僕はこちらで 

君はあちらへと 去っていった。

・・・・

数年後 

・・・・

休日の駅前 遠く 

人混みに混じる 君を見た 


君は変わらずに 誰かと話し 

肩をすくめて 笑っていたが


しばらくすると 一人 

人混みに 消えていった・・・


僕は久しぶりに 君を見ては 

嬉しくなって 微笑んだが 


すくんだ 自分の肩を見て

思わず 肩を強く握り返した


その瞬間 


お互いの瞳にあった 確信は

本物だったよね・・・という心の何か


表現できない 激しい衝動に駆られ


何も考えず 思わず 

圧迫する鼓動や 恥らいさえ 

頑に 受け付けず  


ただ 

最後の言葉に 導かれ

僕は 人混みの中へ 


真っしぐらに 走っていった・・・


※ 詩人の恋シリーズ 終


この記事が参加している募集

スキしてみて

私の作品紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?