映画「THE MOON」は宇宙映画好きが見たいやつがほぼ入ってる(ネタバレなし)

宇宙飛行士がピンチに陥る所、見たいですよね(問題発言)。
もちろん映画に限った話ですが。


あらすじ:
独自の月面有人探査計画をスタートした韓国。しかし太陽フレアによる宇宙船の故障で船員が死亡、残されたソヌ(ド・ギョンス)はたったひとり月へ向かうことになるが、はたして彼は月面探査を成功させ、地球へ無事に帰還できるのか。


人類のまだ見ぬ未踏の地、宇宙。ここでは、しばしば宇宙飛行士の命を脅かすトラブルが発生します。
彼らが地上の管制室と協力し、あらゆるトラブルに対処する様は人類知の結晶と言えるでしょう。

自称宇宙映画好きの私が考えるに、宇宙映画の醍醐味はこうした各々の能力や立ち場を最大限に活用した問題解決にあると思います。

翻って私事で恐縮ですが、わたくし韓国映画にはとんと疎く、見たことがあるのはせいぜい「パラサイト」とか「エクストリーム・ジョブ」のような有名作品くらい。文化も言語もよく知らないけど、はたしてちゃんと楽しめるのか……?

などと思っていましたが。

結論から言ってこれは杞憂でした。断言しましょう、この映画の制作陣は宇宙映画好きです。「アポロ13」とか「ゼロ・グラビティ」とか「アド・アストラ」とか絶対見てるだろ!!宇宙好きだろ!?そうに決まってる。

宇宙映画あるあると言えば静かな宇宙で内省的になる主人公、という画ですが、「THE MOON」はそんなことも言ってられないほどとにかく危機!危機!危機の連続。宇宙飛行士は新人のソヌ1人だけになっちゃうし、宇宙船は故障してコントロールできず無重力下でめちゃめちゃ振り回される。そして月面に降り注ぐ流星群!怖い!死んじゃう!
と、こんな風に彼の身に次々と起こるトラブルを対処するためあらゆる手段を用いる様はとにかく泥臭く、ある時はホコリを被った古い設備を再稼働し、ある時は独断やハッタリで押し通し、ある時は自分の地位を最大限活用する、といった具合。
宇宙探査と言う科学の最先端らしからぬなりふり構ってられなさ、その切迫感はかつて失敗した一度目の月面探査計画への贖罪の表れでもあることが徐々に明らかになっていき、これが泣かせます。

また、月面探査ドローンが可愛い。序盤はあくまで月面を観測するための道具然としていますが、こいつが要所要所で頑張るからだんだん愛着が湧いてきます。「マル」という名前も犬みたいでいいよね。フィギュアとか出ないかな。
「月に囚われた男」のガーティや「インターステラー」のTARSもそうですが、人間を助けてくれる機械の存在って泣けますよね。

強いて文句を言うなら、プロフェッショナリズムが求められるべき宇宙開発の現場がしばしば感情で動いていくこと、月面での効果音が大仰な点のはいただけませんが、まあ娯楽映画だし見た人全員が分かるように描く意図なのでしょう。特に宇宙の音なんて「スター・ウォーズ」以降ずっと指摘され続けてるからもういいもういい気にしない。


というわけで、「THE MOON」は宇宙映画好きとしては大いに満足できる作品でした!次は同じメンツで火星に行く話とか撮ってくれないかな。



ここからは余談。

韓国は今年5月にKASA(韓国航空宇宙局)を立ち上げたばかりのようで、2032年を目標に月面探査も計画しているとか。また、劇中で登場するNASAの月周回船ゲートウェイも、月の有人拠点として実際に計画されているそうです。

さらに調べてみると月面探査は世界中で計画されており、たとえば米国主導のアルテミス計画には8か国が参加し、そこには日本も含まれています。計画では2026年以降に日本人飛行士を含む有人探査を予定しているそうです。中国でも6月に月面から採取した岩石サンプルの回収に成功しており、月はまだまだ宇宙開発の現場として注目され続けるようです。

こうしてみると、「THE MOON」は娯楽映画ながら現実との地続きな流れを感じさせます。各国が月面に基地を置く日も近いのかもしれませんね。

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