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九州に渡ったエゾシカ


とても嬉しい知らせが飛び込んできた。


12月1日。

車の事故で危うく命を落とすところだった翌日に
めげずにオホーツク海まで出向いた私の前に現れた
過去最大の雄鹿。
まさに鹿の王と呼ぶにふさわしい威厳に満ちていた。

自分だけでは到底食べきれない肉を
誰とシェアするか考えた時に
真っ先に頭に浮かんだのが
探検家にして葦船職人の石川仁氏。
私が兄と慕う人物に
この鹿を食べてほしいと思った。

田舎町の小さな郵便局に肉を持ち込み、
職員に不審な目で見られながら
巨大な冷蔵便を長崎に送った。



12月13日。

福岡県“源じいの森”でイベントが行われた。

「こどももおとなももっと自由になれる」
 探検家石川仁さんと過ごす
 子どもも大人も心響く1日
 〜子育て&子育ちを深める旅〜

仁さんはそこで子供達や親御さんと雄鹿を食べた。
私がどのように彼を獲ったかも
全て伝えてくれた。
きっと、私自身が話すよりも的確に。



子供達は夢中で雄鹿に食らいつきながら
「命が宿るんだってさ」
「足が速くなるかもな」
などと話していたという。

体が震えるほどに嬉しかった。
私が伝えたかったのは
まさにそういう事だったから。



あの鹿を撃った時は
こんな波紋が起きるとは想像もしていなかった。

鹿自身はどうだったのだろう。
自分の身を呈するからには
ただでは死なぬと行き先を選び、
私をして仁さんに肉を送らせたのではないか。
追跡する私を振り切ることなど簡単な筈なのに
なぜ彼は沢筋で私を待つように歩みを止めたのか。
巨大な体躯から放たれていた尋常ではないオーラ。
逃げもせずに私を見据えたままにグッと弾を受け止め、
スローモーションのように
ゆっくりと膝をつき横たわる軌跡。

あの瞬間のイメージがフラッシュバックし、
全てに意味があり、
全てが最初から繋がっていたようにも思えてしまう。

私はオホーツクに導かれ
出会うべくして彼に出会い、
起こるべくして起きた出来事なのか。

鹿の王は風となり
南の地へと軽やかに翔び
子供達の体と心の中に広がった。

私も、仁さんも、九州の皆さんも、同じ肉を食べ、
彼の力を継ぐ同士となり、
文字通り血を分けた兄弟となったのだ。



仁さんや、参加者の方々からかけていただいた
たくさんの「ありがとう」の言葉。

最後に、彼からの
「ありがとう」が
聞こえたような気がした。


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以下、石川仁氏の記事の抜粋なります。
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圧倒的に充実した時間だった。

3歳から10歳の子供達と、
「源じいの森」を探検した1日。

大きな子が小さい子の手を引いて、
普段なら登らない急な崖をロープを使ってよじ登ってはズルズル下る。

薪を集め、
火のための家を作り、
炎を起こし宿せば、ボウッっと音をたてて天に立ち上がる煙。

仲間のミキオが送ってくれたオホーツクのオスの鹿の肉塊を、
黒曜石のナイフで自分の分を、
切リ裂き、
枝に刺し、
焼き、
噛みちぎり、
土と炭と血だらけで頬張る。
オス鹿からの生命のバトンだ。
朝の受付の時と比べると、みるみるどんどん本能が剥き出しになり野生的な顔に。

子供は勝手に遊ばせて、
午後からは大人たちが輪になり真剣に子育てのあり方をシェアするワークショップ。
大人だってわからないことだらけ!
お互いと自分自身を知るために悩み合い、話し合いが大切だ。
創造する力と自然との関わり、そして自分の声を聞くこと、そして生きること。

僕の人生は、
「旅すること」
「学ぶこと」
「伝えること」
この三つに集約されると思う。

ここまで時間が濃縮されてると圧倒的にグッとくる。
イベントに参加してくれた親御さんと子供達。
主催してくれた方々、
いい機会をありがとうございました!

ミキオも最高の雄鹿の生命のバトンをありがとう!

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