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食費を浮かすための狩猟③

こんにちは。わな猟師のふじわらゆうきです。田舎でライターをしながら、冬は山に入り狩猟をしています。

食費を浮かすための狩猟、前回前々回が①②だったというていで、今回はいきなり「食費を浮かすための狩猟③」というタイトルにしました。

日本人1人あたりの1年で食べる肉の消費量は42kgにものぼると言われています。1年で42kgも肉を食っていることにまずはちょっと驚きつつ、とりあえず計算しました。したところ、たとえば鶏もも肉100g150円、豚バラ100g250円で半分ずつ、スーパーで買って食べたとするならば、鶏もも肉21kg31500円+豚バラカルビ21kg52500円=84000円。

4人家族だとしたら年間の肉の消費量は168kgとなり、合計金額は336,000円です。たまには奮発して牛肉も食べるかもしれないので、20000円くらいプラスしましょう。家族4人、肉だけで年間356,000円を支払っていることに。なかなかな金額ですね。

これ、野菜はどうだろう?ざっくりではありますが、野菜は1年で1人あたり60kg〜100kgくらいを消費しているそうです。60kg×家族4人だと240kg。仮に野菜1個150円/150gということにして計算すると、年間237,600円。

合計すると、肉と野菜で593,600円をスーパーとかに支払っています。さらに米も買うわけで、うちは家族4人で年間72000円ほど米に支払っているので、しめて665,600円をゆく年もくる年も食費として支払っているというわけです。この金額をどう捉えるかは人それぞれですが、ぼくにはとてももったいない金額です。というのも、自分でつくれば、いわゆるところの自給をすれば、約70万円を浮かすことができるからです。めっちゃでかいです。

どうでかいかというと、ぼくは個人事業主なので、70万円分の売上をつくらねばならない不安から解放されるでかさです。ぼくの場合年収500万円ないと暮らせません。なので、500万円に届かないかもっていう状況になると不安で仕方ありません。しかし、ここから年収を100万円近く減らしてもよくなれば、その不安がなくなります、だって、500万円も稼がなくてよくなるのですから。稼がなくてよくなると、時間ができます。時間ができると畑ができます。くくり罠をメンテナンスできます。そうすることで野菜ができます。獲物が獲れます。体を動かしているので健康にもなります。つまり、100万円売上を減らすことで、100万円以上の報酬的なものを得られるということです。ヤッター!

というわけで、ぼくは初の獲物である雌鹿をトヨタサーフに積み、河原へ運んでいました。トヨタサーフで運ぶということは、しばしばこういう光景になります。

脚を縛っているとはいえ、暴れることもあるので、早く軽トラがほしいです。それはさておき、河原へ向かっています。どんな河原かというと人の目につかなさそうな河原です。そして流れがある河原です。運搬しているとき、いつも心の底から「死なないでほしい」と願っています。今から命を奪うのだけれど、今は生きていてほしい。なぜかというと、心臓が動いている時に止め刺しをしないと放血が完全にいかず、血生臭さの残った肉になってしまうからです。何度もバックミラー越しに鹿の腹をみて呼吸しているかを確認してしまいます。

河原に到着し、ひと安心。鹿は生きています。30kgほどでしょうか、そういうものを狩猟するまであまり持ち上げたことがないので、最初はすげー重く感じたので40〜50kgくらいやな、と思いながら、ロープで縛った四肢を右肩にかついで、河原の水辺まで降ろす。止め刺し用のモーラナイフを鞘から抜く。白く丸い石ころを敷き詰めた河原はシーンと静か。血が流れるよう鹿を入水させる。頸動脈を突き刺す。ザグ、という分厚い肉を刺す感触。噴き出る血が赤黒い。頸動脈が切れていない。頸動脈を切ると朱色に近い鮮血が出る。これ以上苦しめてはいけないと、再度、刺す。上体を反り返らせ、水面を何度も打つ。血の混じった飛沫が顔に飛ぶ。これで終わりと思いきや、息絶えるのはそこから20分後でした。雌鹿の生命力の強さもあるとは思うけれど、やはり、止め刺しが下手くそすぎたんだと反省しました。

合唱。「貴重なお肉を大切に頂きます」と声に出して言いました。

四肢のロープ、落ち着かせるため視界を塞いでいたガムテープをはがし、仰向けにし、ナイフを入れ、腹をひらく。怖いとか、グロテスクとかっていう感覚は、不思議なくらいありませんでした。これはほとんどの人がそうなんじゃないかと思います。腸がみえる、胃がみえる、横隔膜、腎臓、心臓、レバーなど。今日のところは、個体そのものは川につけて2日ほど熟成させるので、腹を出したら終わりです。解体は後日、というわけです。心臓とレバーは大切に持って帰り、新鮮なうちに頂きます。

鹿の心臓(ハツ)

初の個体から取れたお肉は、たしか12〜3kg。家族4人で肉を自給するには、あと150kgは足りていません。狩猟2年目を終えても、肉の完全なる自給はまだできていませんが、鹿の捕獲と解体を通じて、多くのことを考える機会をいただきました。生きることは死ぬこと。死ぬことは生きること。生きることと死ぬことがつながる感触を、体が経験したように思います。なんてことを言いつつも、鹿からすれば、こんな災難なことはない。なぜなら、死ぬほど死にたくないのに殺されてしまったからです。これからもぼくは獲るし、食べます。そしていつか、ぼくの命も誰かに食べられ、誰かの命の一部になれたらいいなと、思います。

狩猟2年目は、約10頭分の鹿肉をいただきました。つまりだいたい120kgくらいでしょうか。今期は必ず、猪を獲りたいなあ。

獲れたての鹿のハツ、生姜・ニンニク・しょうゆ・みりんで炒めました(美味)

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