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初めてクマとハンターとして対峙した時のこと

今回はタイトルのまんま、初めてクマと対峙したときについて書きたいと思う。上の画像はうちの近くをしばらくうろうろしてたクマだ。今回の記事とは関係ない。
大物猟を始めてから3年目。これまでもクマを撃ちたい、獲りたい、という思いはずっとあった。しかし、1年目、2年目についてはまだまだ山も知らない、鉄砲の腕も未熟。正直クマに遭っても怖くて撃てない気がしていたし、怖いので遭いたくなかった。口では獲りたいと言っていても、性根はそんなものだ。

チームでのクマ解体

猟期3年目はそれまでとちがった。有害鳥獣駆除期間にもそれなりにシカが獲れるようになっていたし、銃や狩猟のスキルも上がってきているのも感じていた。今年は、挑めるかもしれない。そう思い、猟期前から栗の木やブナの木を探して家の周りの山を歩いてみたりもしていた。そんな中で、初めてクマと対峙できたのは、猟期恒例のチームの巻狩での出来事。その日に興奮余って書いた文章が、以降の文である。我ながら緊迫感の伝わるいい文章だと思うので、ご一読いただきたい。

山を歩き見つけt見つけていたクマ糞

ある秋の日、チームの巻狩に参加し、希望して勢子(追い立てる人)に。3年目の猟期となる今猟期こそはクマを見たい、できれば獲りたい、そんな思いから山を歩いて探せる勢子に志願した。ただ不安もあった。四つ足の猟をし始めてから、クマは常に頭にはあった。けれど、実際に会った時に、鉄砲を構えられるのか、撃てるのか。反撃やその迫力に、びびってしまうんじゃないかという不安だ。
淡々と巻狩はすすみ、追ってる時はシカしか見かけず、撃った人と一緒にシカを運んでいた。その最中、突如右前方の茂みから巨大な黒い塊が走ってきた。「クマだ!」叫ぶと同時に反射的に銃を肩から下ろし、弾を装填し、構えていた。自分でも驚くほどスムーズな動きだった。目線は熊から外さず、ノールックでの装填。
クマは自分達の15メートル程手前で一瞬立ち止まり、身を翻し駆けていく。立ち止まった瞬間、その必死の顔と目が合った。顔が分かる距離、シカを運んでた2人は自分の後ろに隠れた。クマが身を翻し駆けていく。構えたスコープにその真っ黒なお尻が入った。動いているものの射撃は苦手だが、引金を引いた。

クマは駆けていった。

血ぬれはない。当たらなかった。

クマを追いかけたが、もう見つからなかった。

すごく興奮していた。一瞬の出来事が、スローカメラのように脳内再生できる。
落ち着いてから思った。
自分は、クマ相手に瞬時に鉄砲を構えて、矢先の確認をして、迷いなく発砲できるんだな、と。感じていた不安はそこになかった。

積み重ねてきた年数が、発砲までの流れを体に染み込ませていた。頭より先に体が動いた。弾は当たらなかったけど、その事実が少し誇らしかった。弾が当たってればもっと誇らしかったに違いない。
その後、だんだんものすごく悔しくなってきた。これまで実感のなかったものが、手の届く所まで走ってきた。自分の技量もまだまだだが、程遠くはなかった。
釣りで例えると、40キロのGTを一瞬かけてバラしたみたいなもんじゃないかな。そのくらい巨大なクマだった、と思う。

「クマを獲りたい」

浮ついていた実感のない思いが、向かうべき目標として地に足がついた。いまはただ、純粋に獲りたい。


このシカを引っ張っている最中、奴は走ってきた

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