2019大学祭配布冊子「図書館でSFが読みたい!」(9) 2.小説・芸術作品編(6/9 ラテンアメリカ・アジア圏作品)

注意:この記事の情報は2020年4月末時点のものです。また、半分個人の備忘録的な内容であるため、あらすじや紹介を見て興味を持っただけの未読作品も含まれています。

ラテンアメリカの作品

 ラテンアメリカは、20世紀後半から世界的なブームになり日本作家では大江健三郎、筒井康隆、池澤夏樹などにも影響を与えたマジックリアリズム作品が有名で、ガブリエル・ガルシア=マルケスやホルヘ・ルイス・ボルヘスなど有名な作家を輩出していますが、手軽に各作家の作品が読める『遠い女 ラテンアメリカ短篇集』 『20世紀ラテンアメリカ短篇選『ラテンアメリカ民話集』などの短篇集を始め、『百年の孤独』 『予告された殺人の記録』 『ママ・グランデの葬儀』 『族長の秋』など(ガブリエル・ガルシア=マルケス)、『伝奇集』 『幻獣辞典』など(ホルヘ・ルイス・ボルヘス)、『石蹴り遊び』 『遊戯の終り』 『かくも激しく甘きニカラグア』など(フリオ・コルタサル)など、他の作品も西図書館書庫などにけっこう所蔵されている「ラテンアメリカ文学叢書」や「ラテンアメリカの文学」シリーズなどを当たれば読めます。

アジア・太平洋圏の作品

 ケン・リュウやテッド・チャンは中国系ですがアメリカに住み英語で作品を発表しているので除外する(上述の英語圏の項に入れています)として、往年の小松左京やアーサー・C・クラークを思わせる直球のSF『三体』(劉慈欣)や、ケン・リュウ選の現代中国SFのショーケースである『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』があります。他にも『中国科学幻想小説事始』にもいくつか短篇が載っていますし、1980年代初頭に出版された『科学幻想小说选』『中国科学幻想小説選』にも1970年代のSF作品がまとまっています。当然中国語ですが。あとは魯迅によるジュール・ヴェルヌの『地底旅行』『月世界旅行』の日本語からの重訳も『魯迅譯文集』で読めます。二千年以上前の前漢時代が舞台の本格ミステリ『元年春之祭』(陸秋槎)もあります。

 最近は中国作品に加えて韓国作品が刊行ブームで、フェミニズム運動の高まりを受けて出版された『ヒョンナムオッパへ 韓国フェミニズム小説集』にはSFとホラーが1篇ずつ入っていますし、流石に新しすぎて図書館には入っていませんが『となりのヨンヒさん』(チョン・ソヨン)や『ダブル SIDE A』『ダブル SIDE B』(パク・ミンギュ)などが生協に並んでいました(そのうち入るかも)。

 他にも東南アジアやインド、中東の国などの幻想文学がいくつか翻訳されていると聞いたことがありますが未確認です(そこまで調べる気力が……)。『パプア・ニューギニア小説集』というアンソロジーを見つけたので読んでみると、マジックリアリズム的な意味で若干幻想的な作品が収録されていました(でもあまり期待しないで!)。他にも以前私が読んだものでいえば『偶然仕掛け人』(ヨアブ・ブルーム)はイスラエルの作家の作品でしたが広島大学図書館には入っていません。

 そういえば『アジアの現代文芸』という叢書があって、そこで東南アジアを中心とした作家の作品が翻訳されています。全てを読んでいるわけではありませんが、目次を見る限りではマジックリアリズム的な作品が散見されました。Webで公開されている作品もあるので気になる方はこちらで試し読みしてみて下さい。

アフリカの作品

 そして最後にアフリカですが、正直不勉強で全く分かりません。中央図書館書庫にスワヒリ語で書かれたタンザニアの作品の日本語訳である『離散』(サイード・アフメド・モハメッド)がひっそり置いてあったので読んでみましたが普通の家族小説でした。残念!(作品自体は良かったですよ?)

 もし何か情報があればお待ちしています。

その他の大陸の作品

 って、そういえば南極も大陸でしたが、南極文学、つまり南極で書かれた小説(滞在記などを除く)とかあるのでしょうか?現時点では(もし存在するとしたら)その肩書がついているだけで興味が引かれます。こちらも情報お待ちしております。

 ただ挙げた作品数を見てもわかるように、アジア~アフリカ圏の作品は未だに現地市場の大きさを考慮しても欧米圏と比較してまだまだ翻訳が進んでないのが現状なので、読み逃している面白い作品はまだまだ現地に眠っていそうです。

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