2019大学祭配布冊子「図書館でSFが読みたい!」(3) 1.評論編(2/2 ブックガイド・自伝・書評集)

注意:この記事の情報は2020年4月末時点のものです。また、半分個人の備忘録的な内容であるため、あらすじや紹介を見て興味を持っただけの未読作品も含まれています。

ブックガイド

 また、評論とはちょっと違いますがブックガイドも多少入っており、SFのメインストリームにある作品からファンタジーやホラー、必ずしもSFとはみなされない文学作品や古典作品まで国内・海外を問わず紹介が行き届いている『世界のSF文学・総解説』をはじめ、第1世代(小松左京など1960年代以前デビュー)~第3世代(新井素子など1970年代後半~80年代デビュー)の日本SF作家の作品を収録した架空の全集「日本SF全集」を作るとしたらという構想で書かれた『日本SF全集・総解説』やハヤカワ文庫SFの"全作品"をレビューした『ハヤカワ文庫SF総解説2000』、海外作品についての『SFはこれを読め!』などがあります。

 さらに『日本幻想作家事典』という書籍が2009年に出ていますが、これは日本国内における明治以降~2006年までの幻想的な作品をちょっとでも書いている作家がほとんど掲載されていて本当に驚異的な事典です。この紹介で取り上げる2006年以前デビューの日本人作家のほとんどはこれに載っていると思います。SF系作品も多い70~90年代のアニメーションのノベライズ本をまとめた『アニメノベライズの世界』という書籍もあります。アニメ自体については『日本TVアニメーション大全』という大型本が作品を知るにはおすすめでしょうか。

自伝・評伝

作家の自伝や評伝だと『星新一 一〇〇一話をつくった人』(星新一)、『蘇る伊藤計劃 Project Itoh revives』(伊藤計劃ほか)、『栗本薫・中島梓』(堀江あき子編)、『SF魂』 『やぶれかぶれ青春記』(小松左京)、『不良老人の文学論』 『筒井康隆、自作を語る』など(筒井康隆)、『妻に捧げた1778話』(眉村卓)、『光瀬龍 SF作家の曳航』(光瀬龍)、『菊地秀行 総特集 魔界都市へようこそ!』(菊地秀行)、『高い城・文学エッセイ』(スタニスワフ・レム)、『J・G・バラードの千年王国ユーザーズガイド』(J・G・バラード)、『私の少女マンガ講義』(萩尾望都)、『稲垣足穂さん』(松岡正剛)、『H・P・ラヴクラフト 世界と人生に抗って』(ミシェル・ウエルベック)などがあります。後述の第1世代以前の日本SFの開祖とも言われる押川春浪の伝記『「天狗倶楽部」快傑伝』(横田順彌)もあります。他にもSF作家である円城塔と怪談作家である田辺青蛙の夫婦の交換読書エッセイ『読書で離婚を考えた』もあります。さらに井上やすし・筒井康隆・大江健三郎による『ユートピア探し 物語探し』にもSFを述べた所がありますし、ファンタジー児童文学作家三人による対談集『三人寄れば、物語のことを』(上橋菜穂子・荻原規子・佐藤多佳子)もあります。

ライトノベルとの関係

 また、全国学校図書館協議会と毎日新聞社が共同で毎年行っている「学校読書調査」の結果を見てもわかりますが、実はSFとは切っても切れない関係にあるライトノベルについての評論の『ライトノベル研究序説』  『ライトノベル・スタディーズ』(一柳廣孝・久米依子)、『ライトノベルよ、どこへいく』(山中智省)、『ライトノベルから見た少女/少年小説史』(大橋崇行)と、それに加えて『「少女小説」ワンダーランド』(菅聡子)、『「少女小説の生成」』(久米依子)、『少女小説事典』(岩淵宏子)もあります。それぞれ富士見ファンタジア文庫とコバルト文庫(集英社文庫コバルトシリーズ)という具体的なレーベルの歴史を辿る『ライトノベル史入門 『ドラゴンマガジン』創刊物語』(山中智省)と『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』(嵯峨景子)もあります。

 ちなみに「学校読書調査」の結果については、広島大学図書館所蔵の資料では1954(第1回)~1979年については『学校読書調査25年』、1980~1993年については『毎日新聞 縮刷版』、1994年以降については雑誌『学校図書館』(各年11月号)を見ればわかります。

 さらに『恋愛小説ふいんき語り』(麻野一哉・飯田和敏・米光一成)はSFとはほぼ無関係な恋愛小説についての書籍ですが、各項の最後は"その小説をもとにゲームを作るとしたら"という話題でまとめていて興味深いです。そちらが主題の『ベストセラー本ゲーム化会議』という本もありますが、広島大学図書館には入ってないので興味がある方は探してみてください。

書評集

 ところで、書籍を探す際には、SFに限らず小説、評論を含め2001年~2016年に出版された作品については『朝日書評大成』でレビューされているものもあるのでそれも参考にしてみると良いでしょう。SF系の人では奥泉光、円城塔、川端裕人、瀬名秀明、東雅夫、山形浩生などがレビューしています。最新作についてはたいていの新聞に書評欄が毎週決まった曜日(例えば『朝日新聞』は土曜日)に掲載されているのでそれを確認するのも手です(もっとも"全て"が載っているわけではないですが)。

 その他にも書評がまとめられたものは『殊能将之読書日記 2000-2009』 『柄谷行人書評集』 『想い出のブックカフェ 巽孝之書評集成』 『あのころ読んだ小説 川村湊書評集』など多くあります。お気に入りの評者を見つけておくと読書の指針になるでしょう。

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