2019大学祭配布冊子「図書館でSFが読みたい!」(22) おわりに

注意:この記事の情報は2020年4月末時点のものです。また、半分個人の備忘録的な内容であるため、あらすじや紹介を見て興味を持っただけの未読作品も含まれています。

 図書館はいっぱい本があって、しかも無料で借りることが出来て、とっても楽しい所です。でもたくさんありすぎて、どれから読もうか迷ってしまうこともあるのではないでしょうか。

 そこで、私が普段よく読んでいるSFというテーマについて、広島大学図書館に所蔵されている書籍や作品を取り上げながらエッセイ風味にまとめてみました。さらに、どうせなら小説だけではなく評論なども読んで自分の好きな分野について深く深く知りたいと私は思うので、小説以外のものや周辺ジャンルの作品も取り上げてみました(大学図書館はエンターテイメント的な利用を想定しているのかという議論はさておき)。たぶん広島大学図書館に所蔵されているSF系小説のうち95%は紹介できたと思います。

 他にも取り上げたかった作品としては、時にはフィクションかと見紛うようなエピソードが出てくることがある科学者の伝記(例えばラマヌジャンやジョン・フォン・ノイマンなど)や、一般の科学解説書(早川書房の『数理を愉しむシリーズ』やサイモン・シンの著作(『フェルマーの最終定理』 『暗号解読』 『宇宙創成』など)、それに『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』などの『鳥取環境大学の森の人間動物行動学シリーズ』(小林朋道)、『有機化学美術館へようこそ』(佐藤健太郎)、『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』 『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』(川上和人)、『バッタを倒しにアフリカへ』(前野ウルド浩太郎)、『Mad Science』 『Mad Science 2』(テオ・グレイ)、他にも「世界ふしぎ発見!」のキャスターで有名な楠田枝里子の『不思議の国のエリコ』も面白い)、未来予測を扱った社会書(例えば『サピエンス全史』 『ホモ・デウス』(ユヴァル・ノア・ハラリ)や、日本では『平成30年』(堺屋太一)(なぜか上巻だけ入っている)、『未来の年表』 『未来の年表2』(河合雅司)、『小説 紙が消える日 森林メジャーの謀略』(森山剛)など)や、それに関連して乱暴に言ってしまえば一種のシミュレーションともいえる経済小説 (『官僚たちの夏』など(城山三郎)、『沈まぬ太陽』など(山崎豊子)、『炎の経営者』 『金融腐蝕列島』など(高杉良)、『空飛ぶタイヤ』 『オレたちバブル入行組』など(池井戸潤)など、城山三郎が選んだ『経済小説名作選』というアンソロジーもどうぞ)、架空戦記(『中ソ未来戦』(十河龍雄)や『予言 第三次大戦』(岩野正隆)がありました)などがあり、話題は無限に広がりますが自重しました (取り上げられるほど読んでないとも言います)。ちなみに余談ですが、池井戸潤が小説家としてデビューする1年前に書いた『会社の格付』という銀行から見た企業の評価をレポートする内容の書籍もあります。あとは『「実況動画」のつくり方』(小笠原種高)や『プロのeスポーツプレーヤーになる!』(ゲームキャスター 岸大河)なんていうHow to本もありました。

 今回はSFというテーマでまとめましたが、テーマが変わればもちろん切り口が変わり、取り上げる書籍も変わります。私は他のテーマについてはあまり詳しくないのでまとめられませんが、別のテーマでまとめられたものも読んでみたいです。「ファンタジー」「ホラー」「ミステリ」とか「ライトノベル」とか「BL・GL」とか…。そういえば日本の近代からの有名作品を「望まれない妊娠」という観点でまとめた斎藤美奈子の『妊娠小説』という評論もありますね。こんなものが読みたいので、だれかまとめてください。よろしくお願いします。

 この紹介を書くにあたって私もいろいろ読んでみましたが、まだまだ新たな発見があります。もし貴方が「これがSFだ」と思う作品が広島大学図書館に入っているにも関わらずこの紹介に入ってなかったら、それは私がその作品を「SFでない」と思ったからではなく、ただ単に私が「見逃している」だけです。その時は私の無知を笑って流してください。よろしくおねがいします。(できれば教えてもらえるとすごく助かります。)

 最後にこの原稿を書くにあたって参考にした書籍をまとめておきます。

 まず参考にしたのは大森望の著作で、特に挙げたいのは『文学賞メッタ斬り!』(大森望・豊﨑由美)です。元はここに載っていた作品(特に日本ファンタジーノベル大賞受賞作品)を探して自分用にまとめようと思ったことがきっかけなので、正直これがないと書く気は起きなかったと思います。他にも理念としては『妊娠小説』(斎藤美奈子)、『虚数』(レム)等にも影響を受けています。

 内容についてはジャンル別に次の本を参考にしています。

 (広義の)SFのメインストリームをフォローする本としては、『現代SF1500冊 乱闘編 1975-1995』『現代SF1500冊 回天編 1996-2005』『21世紀SF1000』『21世紀SF1000 PART2』と『現代SF観光局』(大森望)、『日本SF全集・総解説』(日下三蔵)、『星新一 一〇〇一話をつくった人』(最相葉月)、『日本ショートショート出版史』(高井信)、『ハヤカワ文庫SF総解説2000』などを参考にしました。後は各種様々なアンソロジーです。『胞子文学名作選』『変愛小説集』『実験小説名作選』『異形コレクション』、去年(2019)で最終巻となった『年刊日本SF傑作選』(大森望・日下三蔵)…。

 B級・古典SF作品方面では『日本SFこてん古典』(横田順彌)、『新・日本SFこてん古典』(横田順彌・會津信吾)、『SF奇書天外』『SF奇書コレクション』(北原尚彦)など、ファンタジー・ホラー・幻想文学・世界文学系では、『ファンタジー・ブックガイド』 『日本幻想作家事典』 『実験する小説たち 物語るとは別の仕方で』 『世界文学ワンダーランド』などを参考にしています。

 評論系は適当なガイドがないので地道に検索して調べました(そのためまだまだ載ってないものがあります)。アンソロジーも通常の検索では見つけにくいので実際に書棚に行って確認しています(NDCを913.68で検索すれば見つからないこともないですが、収録作品が分からないことがあります)。

 雑誌編や最新の作品はこれと言って参考にした書籍があるわけではありませんが、書籍の裏の収録作品の初出をチェックしたり、上述の大森望や編集者・作家たちのSNS(主にTwitter)、出版社のサイトをこまめにチェックしてフォローしています。実際の雑誌も『SFマガジン』~『文學界』まで文芸誌各種+『ユリイカ』『現代思想』『現代詩手帖』『美術手帖』『ダ・ヴィンチ』を手にとれるものは毎号少なくても目次を確認しています(現時点)。過去の雑誌掲載作は『文藝年鑑』が頼りになります。あ、『年刊日本SF傑作選』の巻末の候補作リストにはかなりお世話になりました。

 そして、上の書籍の著者・編集者ならびに、私が読んでない作品をフォローしてくれた友人たちと、Amazonや各種書評サイトを始め個人ブログなど各所にレビューを投稿しているインターネットの先の名も知れぬ方々に篤くお礼を申し上げて本当に終わりにします。

 ローカルでも読みたいという方のために、一応元ファイルをアップロードしておきます。ただし、noteに投稿する際に誤植などを修正しているので若干Web版とは異なります。また、おまけとして広島大学中央図書館に所蔵されているアンソロジー中のSF系作品の一覧(作者のみ)をつけていますがあんまり役に立たないかも……。


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