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「じゃあお前がやってみろ」は滅びの呪文
お酒は時に素敵な魔法をかけてくれますが、取り返しのつかない劇薬となることもあります。
毎夜酒場におりますと、劇薬に倒れる人をみることもしばしば……。
さて、お酒の効果として、いつもよりお喋りになるだとか、なんだか楽しい気分になるとか、少し気が大きくなるとか。
自覚症状のある方も多いでしょう。
自分の話を何の気なしにしてみたら、聞いていた周りの人がアドバイスをくれることがありますね。
望んでいないアドバイスや耳が痛い話に少し嫌な気分になったとします。
何か言い返したい、そんなときに使える魔法の殺し文句。
「じゃあお前がやってみろよ」
やわらかい言葉で言うなら、
「あなたは同じことができるんですか?」
大体これで相手は黙ります。
そしてあなたは劇薬に倒れます。
違う人生を生きている人間が、あなたと100%同じ立場に立つことは無理です。
これは当然の大前提です。
違う人生を生きているからこそ、今自分が躓きそうなところに置かれた、あなたには見えていない石が見えるのです。
その代わり、アドバイスをくれる人は、あなたがその石に向かって歩かなければならなかった理由は見えていないでしょう。
”お互いにお互いの視点からしか物事は見えない”という当たり前の前提を理解していない人がこの殺し文句を使いがちです。
これを使った瞬間、あなたは当たり前の前提も理解せず酒場に来ている青二才と認定されてしまうのです。
そしてそんな人の末路は、
「あぁ、まだまだ青いんだな。もう口出しせずそっとしておこう」
そうやって周りから距離を置かれていく。
確かに、望んでもいないアドバイスがなくたって、人生困らないかもしれません。
けれど、誰か忠告してくれる人がいれば背負わず済んだ苦労もあったでしょう。
酒場とは予期せぬ出会いの宝庫。
いつどこに人生の転機が転がっているか分からないもの。
アドバイスをくれる人は大事にした方がお得なのです。
そうは言っても、外野からもっともらしいことを言うのは簡単です。
貴方の苦労はあなたにしか分からないから、苦労も知らず偉そうにと思うこともあるでしょう。
何か言い返したいなら、こうしてみてください。
「なるほど、そんな考え方があるんですね。例えば○○さんはこういったことが起きたらどうしますか?」
実はこれ、「じゃあお前がやってみろ」と言っている内容はほとんど変わりません。
ただ一言、相手の意見を肯定する文句を挟むだけで、あなたはアドバイスを受け続けることができるのです。
ムッとした時、何か言い返したくなった時、人は否定的な言葉や挑戦的な言葉を使ってしまいます。
ぐっと堪えて、まずは相手の言葉を受け止めてみてください。
受け止めて、掘り下げる。
この作業に否定も挑戦もいりません。
宝探しの気持ちで、相手が持っている自分の視点からは見えないものを探しましょう。
人より多くのものが見えるなら、他の人より優れた結果が出せる。
アドバイスとはそのために受けるのです。
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