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11月19日開催 「性暴力被害の実際」 *イベントレポート*

11月19日(木)に開催したFacebookライブ 「性暴力被害の実際」は、齋藤梓氏をゲストに迎え、ヒューマンライツ・ナウの理事 寺町東子との対談形式で、性暴力被害の実際と刑法性犯罪規定のギャップ、齋藤氏の著書「性暴力被害の実際」制作の裏側、検討会の状況についてディスカッションが行われた。

2017年の改正から、今年再び

2017年に110年ぶりに改正された刑法性犯罪規定についての解説があり、犯罪の構成要件見直し、被害対象者に男性も含まれるようになったことや、被害者の告訴なしでも捜査や起訴ができるようになったことなどを、寺町理事が紹介一方で、性交同意年齢や暴行脅迫要件、地位関係性を利用した犯罪の処罰など、深刻な積み残し課題についても指摘した。  

2017年改正時の性犯罪に関する刑事法検討会に委員として参加した齋藤氏は、法律職の方々への被害者の心理の伝わりにくさを痛感したと語った。暴行脅迫要件に該当しないことから、事件化できず取り残されている被害当事者の存在や、子どもたちが被害を誰にも言えずにいる間に時効が進んでしまう現状を、切迫感をもって知ってもらう必要性を感じたことを共有した。  

今年6月から法務省で行われている性犯罪に関する刑事法検討会(以下、検討会)に委員として参加している齋藤氏は、性同意年齢の引き上げや暴行脅迫要件の撤廃など、2017年に積み残された論点が議論されていると報告。齋藤氏は、2017年の検討会と比較して今回の検討会では、前回の検討会以上に、被害者を理解しようとしている委員の方々の姿勢が見受けられるとして、2017年よりも被害者に寄り添った改正への期待を述べた。

被害をより"見える"形に

齋藤氏は、「2017年の刑法改正をめぐる議論」で、被害の実際を知られていない、また自分自身にも見えていない被害があるとの気づきから、当事者の声を聞くために一般社団法人Springと協力して調査を開始。目に見える形として、今年、「性暴力被害の実際」を出版した。31名へのインタビューと20名の被害体験の記載に基づき、年齢や関係性等の観点から、性暴力に至るプロセスを質的に分析し、ライブでは詳しい分析結果もお話しいただいた。

イベントの後半では、参加者からの質問にお答えする形で対談が進んだ。その中から二つの質問と回答を紹介したい。

警察での不受理

「加害者が被害を認めているのに、警察は捜査しないのはなぜですか」という質問に対して、「捜査に消極的な理由として、最近では裁判所にて暴行脅迫要件は緩和されているものの、その事実が警察の現場に浸透してないことと、加害者が犯行を認めていても後に否認に転じた場合に立証する壁が挙げられる」と、寺町理事が回答。そして、警察内の現場での教育強化を訴えた。

性教育

「性教育強化のためにできることや、性暴力の要因が性衝動である場合の教育によるアプローチ方法とは」という質問に対して、齋藤氏は、「性暴力の要因は性衝動よりむしろ支配欲であると言われており、ジェンダーに関する感覚が関連している」と強調。海外では、性教育は性に関するものだけはなく、ジェンダーやセクシュアリティ、対等な関係性などを含めた包括的な教育として実施しており、日本でもそのような性教育を教育機関で行っていく必要性があると訴えた。その一歩として、現在から3年間、性犯罪・性暴力対策の集中強化期間を設けて、内閣府を主導で法務省、警察庁、文部科学省、厚生労働省が性教育を含む様々な検討を行っていると紹介した。 

法改正実現のために私たちにできること

今回のイベントは、2017年刑法改正と現在の検討会での進捗を踏まえながら、性暴力の実態について議論した回となった。男性の被害者や性的マイノリティーなど、法の隙間に落ちて見過ごされている被害が多く存在すること、被害の不受理が多いことなどの現状を踏まえて、日常的に性犯罪の問題に関心を持ち、身近な話題にしていく必要性を議論し、ライブをしめくくった。

ライブの参加者からは、「世論をつくっていくために、もっと周囲を巻き込んで話をしなきゃと改めて思った」など、の感想がよせられた。より多くの人が話題にしていくことで世論が活発になり、それが法の改正につながる。検討会はまだ続く。被害者の人権を守る法改正が実現するように、できることから行動していきたい。

HRNからのお知らせ

Facebookライブ「性暴力被害の実際」のアーカイブ動画はこちらから。齋藤氏の著書についての詳しい解説もあるので、配信を見逃した方も、復習をしたいという方も、ぜひご覧ください!

(文=村里紗果)

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