人文書を読む(7)渡辺照宏『仏教 第二版』(岩波新書)

 キリスト教関連の書籍を最近読んでいたので、他の宗教に関するものも読んでみようということで手に取った一冊。もちろん、イスラームや神道、新宗教など(それぞれ少しずつ「宗教」のニュアンスが違ってますが)に関する書物を手に取ってみてもよかったのですが、個人的な生活経験の中で身近に感じることができそうな仏教に関する新書を手に取ってみました。

 タイトルはずばり「仏教」。仏教について書かれた本だということはもちろんわかるのですが、内容はちょっとこれだけでは推測し辛いです。それでも、再版を重ねている本だということもあり、仏教の概略を知ることができるのではないかと思って「仏教入門」のようなものを期待して手に取りました。

 それで、はじめのほうを読んでいて唖然としたのですが、冒頭の章「仏教へのアプローチ」で語られるのは、主にアカデミックな世界での仏教研究に関する事柄などです。章のタイトルからして、日常生活の中にある仏教に関してなど、とっかかりとなるような話が展開されているのかと思いましたが、予想を裏切られました。ただ、ヨーロッパにおける仏教研究の展開について述べた個所などは興味深くはあります。

 第2章以降は(文章こそ硬めですが)割とオーソドックスな仏教入門となっています。ただ、著者がことっているように、中国や日本といった東アジア地域における仏教の受容、変容についてはほとんど触れられておらず、あくまでもインドでの仏教に焦点を当てたものとなってはいますが。

 本書の内容的に核となるのは、第4章の「仏陀の生涯」でしょう。我々がイメージするようないわゆる仏教の「教義」の根幹にあたりそうな部分に関する説明が詰まっています。(第1章以外の)他の章の内容を含めて、仏教の概略をある程度つかむことはできそうです。

 また、先にキリスト教関連の書籍を読んでいたこともあり、宗教の成立と発展の過程に類似点が認められそうなのが興味深いところです。すなわち、キリストや仏陀が出現する前の世界があり、そこに彼らが出現し、それが弟子によって伝えられ、やがて「教義」と言えそうなものにまとめられていくという流れです。イスラームなど他の宗教に関してもこのプロセスに着目して学んでみたいところです。

 以上紹介してきたように、本書は全体的に記述が硬く、また冒頭に置かれた第1章がかなりアカデミックな話になっているため、かなりとっつきづらくはありますが、コンパクトで手軽に仏教に関する知識を得ることができるのはやはりメリットでしょう。また、あくまでも客観的な立場から論じられているのも好感を持つ人がいるのではないかと思われます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?