Tama@本命

人文学、社会科学と音楽。ときどきガジェットと情報処理。

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最近の記事

「Threadsさん、匿名希望でお願いします」

昔のこと記憶の中の発言  中学生時代(20年近く前)に、割とやんちゃだった同級生がネット掲示板を利用した、なんて出来事がありました。それ自体大したことでもないのに覚えているのは、彼が「自分は名乗ったのに相手は名乗らなかったので頭にきた」みたいな発言をしていたから。  当時、背伸びしてすでに匿名掲示板の2chなどにアクセスしていた自分には、匿名であることは当たり前すぎて「なぜ、そんな常識も知らないのか」と思ったわけです。でも、今になると彼の発言も「ネットリテラシーが低い」っ

    • 【イヤホン簡易レビュー】ゲオ GRFD-SWE300T4

       散歩途中によったゲオで、完全ワイヤレスイヤホンが50%オフで売っていたので購入しました。今回はこのイヤホンについて簡単にレビューします。 まず、こちらが製品パッケージになります。50%引きのシールが目立ちますが、店頭に50%引きで在庫があったのは、この赤色のみでした。パッケージ正面下部には、機能的特徴についてまとめられています。 パッケージを開けると、本体+ケースのほか、USBケーブルと別サイズのイヤーキャップ、そして日本語で書かれた取り扱い説明書が入っています。取り扱

      • コンピュータの終わらない歴史物語 - 小田徹『コンピュータ開発のはてしない物語』(技術評論社)

         久々のnote投稿となります。今回はこれまで紹介してきた人文書とは少し毛色の違った本を紹介してみます。  本書『コンピュータ開発のはてしない物語』は、タイトル通りコンピュータの歴史をかなりマクロな視点で解説している一冊です。コンピュータの「起源」となる計算機械の話から、近未来におけるコンピュータの発展の方向性まで、様々な視点から論じられています。  内容を確認しましょう。まず第一章「コンピュータの起源を求めて」では、紀元前(!)の時期まで遡って、主に近代以前のいわゆる「

        • 人文書を読む(10)小林敏明『廣松渉 近代の超克』(講談社)

           廣松渉というと「難しい」というイメージが強い。文体から思想の内容に至るまで、簡単に読解できないイメージがある。また、廣松が「マルクス主義」を研究していたことから、ソ連などを中心とする「東側諸国」の国々の資本主義化によって、その思想はある意味もう「時代遅れ」の感じすら持たれているかもしれない。しかし、果たして本当にそう言ってしまってよいのだろうか。  本書は、そんな廣松の思想について、200ページ足らずで論じたものである。廣松自身の思想についてだけではなく、特に近現代日本の

        「Threadsさん、匿名希望でお願いします」

        • 【イヤホン簡易レビュー】ゲオ GRFD-SWE300T4

        • コンピュータの終わらない歴史物語 - 小田徹『コンピュータ開発のはてしない物語』(技術評論社)

        • 人文書を読む(10)小林敏明『廣松渉 近代の超克』(講談社)

          しぶいSHISHAMO ~SHISHAMO『SHISHAMO7』レビュー~

           久々に音楽ネタの記事です。ガールズバンドとして、かなりコンスタントにキャリアを重ねてきたSHISHAMOの最新アルバムを簡単にレビューしてみます。  ジョン・レノンは名盤『ジョンの魂』について、自ら「しぶいアルバム」と言ったらしいです。アルバムを聴いてみると確かに、シンプルなアレンジの曲が並んでいて「しぶいアルバム」という表現もしっくりくる感じがあります。って、なんでSHISHAMOのアルバムのレビューなのにジョン・レノンの話なのかっていう突っ込みがありそうですが、この『

          しぶいSHISHAMO ~SHISHAMO『SHISHAMO7』レビュー~

          人文書を読む(9)杉森久英『滝田樗陰』(中公文庫)

           『中央公論』といえば、今もなお刊行されている雑誌であす。一般的な分類としては、いわゆる「総合誌」にあたるでしょうか。岩波書店の『世界』などと並び、今も広く読まれています。どちらかというと『世界』よりも(左派的なリベラルではなく)自由主義的な立場からの論考が載せられているイメージがあります。  また『中央公論』といえば、高校の日本史の教科書で取り上げられることでも有名かと思います。すなわち、吉野作蔵が論文を発表し、いわゆる「大正デモクラシー」に言説の場を提供したというもので

          人文書を読む(9)杉森久英『滝田樗陰』(中公文庫)

          人文書を読む(8)ひろたまさき『福沢諭吉』(岩波現代文庫)

           福沢諭吉といえば、やはり「1万円札の人」というイメージが強いでしょうか。そして「文明開化」の時期に『学問のすすめ』を書いた人物ということがすぐに思い出されるかもしれません。いわゆる明治初期の「啓蒙主義者」だと。しかし、それは一面的な見方だという反応もすぐに出てくるでしょう。高校の倫理や日本史の教科書には、後年の福沢がいわゆる「脱亜論」を唱えていたことが記されています。  本書は、そんな福沢の人生を民衆思想史などの研究者、ひろたさまさきが検討したものです。現在は岩波現代文庫

          人文書を読む(8)ひろたまさき『福沢諭吉』(岩波現代文庫)

          人文書を読む(7)渡辺照宏『仏教 第二版』(岩波新書)

           キリスト教関連の書籍を最近読んでいたので、他の宗教に関するものも読んでみようということで手に取った一冊。もちろん、イスラームや神道、新宗教など(それぞれ少しずつ「宗教」のニュアンスが違ってますが)に関する書物を手に取ってみてもよかったのですが、個人的な生活経験の中で身近に感じることができそうな仏教に関する新書を手に取ってみました。  タイトルはずばり「仏教」。仏教について書かれた本だということはもちろんわかるのですが、内容はちょっとこれだけでは推測し辛いです。それでも、再

          人文書を読む(7)渡辺照宏『仏教 第二版』(岩波新書)

          人文書を読む(6)鈴木範久『内村鑑三』(岩波新書)

           前回内村鑑三自身の著作を引き続き、今回は内村のコンパクトな評伝に挑戦してみました。本書は、コンパクトでありながらも、割と直球の評伝で、内村の学生時代から晩年に至るまでの時期を、その著作の解説を交えながら紹介しています。  内村というと、本意ではなかったキリスト教の入信やいわゆる「不敬事件」が有名ですが、これらは最初の章「若き日の夢」や次の章「独り立つ」で触れらています。本書の特徴は、この割と若い時期のみならず、年齢を重ねてからの内村の活動にも紙幅を割いて紹介しているところ

          人文書を読む(6)鈴木範久『内村鑑三』(岩波新書)

          人文書を読む(5)内村鑑三『宗教座談』(岩波文庫)

           内村鑑三といえば、近代日本のキリスト者として、新島襄、新渡戸稲造らとともにその代表者と目される人物ですが、実はその信仰のスタイルはかなり(表現的に適切かどうかはわかりませんが)特異なところがあります。俗に「無教会主義」と言われたりするわけですが、今回取り上げる『宗教座談』で「教会」に関する内村の率直な考えも述べられています。  内村の著作というと『代表的日本人』などが有名ですが、『宗教座談』はあまり著名ではないかもしれません。この『宗教座談』という著作は以下で簡単に紹介す

          人文書を読む(5)内村鑑三『宗教座談』(岩波文庫)

          人文書を読む(4)田辺元「哲学の根本問題」(岩波文庫『田辺元哲学選Ⅲ』所収)

           新たにバイトを始めたりしたため、前回の記事から少し時間があきました。今回は、いわゆる「京都学派」に属する哲学者のひとり、田辺元の文章を取り上げてみます。  京都学派というと、高校『倫理』の教科書で西田幾多郎が取り上げられるほか、三木清や九鬼周造といった面々が有名です。そういった意味で、今回取り上げる田辺元という哲学者は(語弊を恐れずに言えば)やや「地味」で、近代日本の哲学に興味のある方以外にはあまり注目されないかもしれません。  しかし、田辺は大学でのポジション的にも「

          人文書を読む(4)田辺元「哲学の根本問題」(岩波文庫『田辺元哲学選Ⅲ』所収)

          人文書を読む(3) 村井益男『江戸城』(中公新書)

          もしかしたら、現代人にとって「江戸城」ってどこにあったの?と思わせてしまうような、江戸城はそんな影の薄い存在かもしれません。実際、江戸城の天守閣をイメージできる人は(写真などが残っていない以上当然といえば当然ですが)ほとんどいないでしょう。 本書は、コンパクトながらそんな江戸城について概説しようとする一冊です。中身は歴史学者の書いたものらしく堅実なものになっていますが、教科書的な通史とは違った形で、「江戸城」という歴史的な建築物から「江戸」の歴史へとアプローチできるようにな

          人文書を読む(3) 村井益男『江戸城』(中公新書)

          人文書を読む(2) ベルナール・ブルジョワ『ドイツ古典哲学』(白水社, 文庫クセジュ)

          哲学の本場といえばドイツ。特に日本で哲学を学ぶ人にとってはそういった意識を持っている人が多いということが言われます。そのとき、頭に浮かぶ哲学者は誰でしょうか?おそらく、カント、ヘーゲル、ニーチェ、ハイデガーといったところなのではないかと思います。 本書は、そんなドイツの哲学の歴史を、カント、フィヒテ、シェリング、ヘーゲルのいわゆる「ドイツ観念論」の哲学者を中心としつつ、それ以前の時期にもかなりのページを割いてコンパクトに概説します。 内容の検討本書は二部構成になっており、

          人文書を読む(2) ベルナール・ブルジョワ『ドイツ古典哲学』(白水社, 文庫クセジュ)

          人文書を読む(1) マンフォード、アンユム『哲学がわかる 因果性』(岩波書店)

          変わらず読書を続けているわけですが、ふとしたことからインプットだけではなく、アウトプットを継続的にしていくことが大事だと思ったため、少しずつ読んだ本について紹介していきたいと思います。 というわけで一冊目にこの『哲学がわかる 因果性』を選んだわけですが、「因果性」の問題というと身近に起こっている事象とよく関わりのある事柄にもかかわらず、あまり正面から「考える」ことがない問題なのではないかと思います。実際、ドアを開ける、テレビの電源を入れる、といった極めて日常的な動きの中で、

          人文書を読む(1) マンフォード、アンユム『哲学がわかる 因果性』(岩波書店)

          山崎ナオコーラ『笑顔と筋肉ロボット』を読む

          中古で雑誌『すばる』2020年11月号を入手しました。表紙の村田沙耶香『世界99』という文字に惹かれてなわけですが、長編かと思いきや右上に「新連載」という文字があるのを見落としていました。 そんなわけで、山崎さんには失礼ながら、ある意味偶然にこの『笑顔と筋肉ロボット』を読んだわけです。短編といっていい長さだと思いますが、これが興味深い内容でした。性役割分業の自明さに対する告発、と言ったら単純化しすぎなのかもしれませんが、異性に助けられ、それに対して常に「笑顔」を返さなければ

          山崎ナオコーラ『笑顔と筋肉ロボット』を読む

          地震・津波関連の岩波新書を読む

           特に何らかの防災の節目というわけではないですが、地震・津波に関連する岩波新書を3冊入手し(中古ではありますが)読んだので、簡単にまとめてみます。 1.伊藤和明『日本の地震災害』 まず、20世紀日本で起こった地震災害を簡潔にまとめた1冊です。やや古くなっており、新潟県中越地震(これは21世紀に入ってから起こったものですが)までしか取り上げられていないということはありますが、それでも地震災害を類型化し、見通しよくその被害について概説しています。図版が多数あり、その特徴や被害に

          地震・津波関連の岩波新書を読む