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「戦略的人的資本の開示」運用の実務の最前線とは

慶應義塾大学大学院 特任教授の岩本 隆氏とHRテクノロジーコンソーシアム代表理事の香川 憲昭氏、日本能率協会マネジメントセンター HRM統括本部 本部長の斎木 輝之氏に登壇いただいたセミナー「『戦略的人的資本の開示』運用の実務の最前線とは」をレポート化しました。

本イベントレポートの全文は、下記URLからダウンロード可能です。
「戦略的人的資本の開示」運用の実務の最前線とは

■登壇者

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任教授
岩本 隆 氏
「いよいよ始まる日本版人的資本開示が拓く未来の展望」

一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアム 代表理事
香川 憲昭 氏
「人的資本開示を企業価値向上につなげるために
  〜日本版人的資本開示ルールへの備え〜」


株式会社HRBrain 執行役員
吉田 達揮
「従業員エンゲージメントに主眼を当てた人的資本開示の先進事例」

株式会社日本能率協会マネジメントセンター HRM統括本部 本部長
斎木 輝之 氏
「人の成長支援(投資)と企業価値向上の事例」

いよいよ始まる日本版人的資本開示が拓く未来の展望
岩本 隆 氏

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任教授山形大学学術研究院 産学連携教授

内閣官房がイメージする人的資本開示事項

昨今、人的資本開示の本格化に向けてさまざまな政策が動いています。
金融庁主導の政策は、既存の法律に則って粛々と数値化・開示することが求められます。
「人的資本」の項目には、人材育成方針や社内環境整備方針などの項目が追加されています。企業はこれらの新たな指針をふまえて情報を整備し、開示の準備を進めることが求められるでしょう。

内閣官房主導で制定されたガイドラインは、法定開示項目ではありません。しかしながら、人的資本開示において非常に重要な指針です。投資家や労働市場からの関心も高いため「開示が望ましい項目」と言えます。

開示項目の算出方法に関しては、ガイドライン上で示されていません。そのため、ISOで定められている国際規格のメトリックを参考にすると良いでしょう。

測定結果の示し方は、大きく4パターンに分類されます。従業員数など「数字」による示し方、投資額など「金額」による示し方、育休取得率など「比率」による示し方、従業員サーベイなど「指数」による示し方です。

人的資本経営におけるKGIとKPI
メトリックを活用した数値化だけでなく、自社にとって重要なKPIを見極めることと、KPIに対して具体的なアクションプランを立てることも、人的資本開示を進めるうえで重要です。
昨今、日本企業でよく設定されているKPIとしては、「リーダーシップと後継者計画」や「従業員エンゲージメント」、「ウェルビーイング」や「コグニティブダイバーシティ」が挙げられます。

まず「リーダーシップと後継者計画」は、関心が高まっていながら、これまで日本企業があまり取り組んでこなかったKPIの一つです。特に「リーダーシップ」に関しては、内閣官房が発表した指針でも、企業価値向上における「最重要事項」として位置づけられています。今後、取り組みを強化する企業は増えてくるでしょう。

次に「従業員エンゲージメント」は、多くの企業が活用しているKPI指標の一つですが、取り組む際は、従業員を腹落ちさせる「戦略的ナラティブ」を意識することが大切です。
それぞれの役割や仕事の意義について、従業員が腹落ちできるような仕組みづくりや環境整備が求められるでしょう。

そして「ウェルビーイング」に関しては、同領域内に5つの要素があると言われています。それは、キャリア、ソーシャル、フィナンシャル、フィジカル、コミュニティの5要素です。このうち、特に従業員の幸福感に寄与すると言われているのが「キャリアウェルビーイング」で、KPIとしての重要性も高まっています。

最後に「ダイバーシティ」については、「デモグラフィックダイバーシティ(属性の多様化)」から「コグニティブダイバーシティ(認知の多様化)」へシフトする動きが出ています。

人的資本開示を企業価値向上につなげるために
 〜日本版人的資本開示ルールへの備え〜
香川 憲昭 氏

一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアム 代表理事

日本政府が定めた人的資本開示の意義、位置づけ

2022年夏、内閣官房によって人的資本の可視化指針が発表されました。これにより、法定開示と任意開示が一気にルール化され、人的資本開示に向けた動きはさらに本格化しています。

まず、法定開示に関しては、今回「金融商品取引法」の改正が行われました。違反した場合は、禁錮または罰金の罰則規定が設けられており、かなり強制力の高いルール整備がされたと言えるでしょう。
また、法定開示項目のうち、非財務情報には「人的資本」と「多様性」が含まれ、これらは連結ベースの開示が推奨されています。

一方で、任意開示項目に関しては、「任意」という言葉で表現していながら、かなり重要度の高いテーマを含んでいます。そのため、「任意だから取り組まなくても良い」といった認識は早計です。今回の法改正では、女性活躍推進法や育児介護休業法など、これまでの経済界の枠組みを越えて主に6つの法令が関わっています。

つまり、今回の法改正は、経済活動のみの規制強化にとどまらず、日本国全体がかかえる(少子高齢化等の)社会課題を解決し、持続可能な社会を実現することを企業に求めることを目指した総合的な法令改正だと捉えることができるでしょう。

企業価値向上に繋げるための人的資本開示の実績アプローチ

人的資本開示を企業価値向上につなげるためには、法令等で定められた項目の情報のみを淡々と開示すれば良いわけではありません。いわゆる「戦略的な開示」を行うことが重要です。

企業価値向上を見据えた人的資本開示を推進する際、意識すべき重要な要素が2つあります。「独自性」と「比較可能性」です。
「独自性」に関しては、約4,000社の上場企業のなかから、最終的な投資対象として選ばれるために重要な要素です。

「比較可能性」がある開示を行うことも非常に重要です。「どの企業がどの点において優れているのか」を知るためには、同じ指標、同じものさしで比較する必要があります。

従業員エンゲージメントに主眼を当てた人的資本開示の先進事例
吉田 達揮

株式会社HRBrain 執行役員

従業員エンゲージメントの重要性

昨今、人的資本開示の本格化が進み、従業員エンゲージメントの重要性はさらに高まっています。人材版伊藤レポートでは、「As is - To beギャップの定量把握」に加えて、「企業文化に根付いた従業員エンゲージメント向上」についても示されています。つまり、単にサーベイのスコアを上げれば良い、という訳ではありません。

従業員エンゲージメントに関しては、ビジネスモデルや業種によっても重要度や切り口が異なります。そのため、自社の企業価値向上につながる「独自性」を意識した取り組みが重要です。

従業員エンゲージメント向上の鍵となる従業員エクスペリエンス

まず、従業員エクスペリエンスとは、従業員が組織との関わりを通じて得られる全ての経験や体験のことを指し、従業員エンゲージメントの向上を目指すうえで、非常に重要な要素です。

企業は意図的に従業員エクスペリエンスをデザインし、従業員エンゲージメントの向上を目指していくことが重要です。

サーベイで可視化すべきは、従業員エクスペリエンス

従業員エンゲージメントの向上に取り組む際、サーベイを活用しながら数値で可視化させることは非常に重要です。
従業員エンゲージメントはKGIとして設定し、それらを構成するひとつひとつの要素、つまり「従業員エクスペリエンス」をKPIとして活用するのも良いでしょう。

課題の原因となる「エクスペリエンス」にサーベイを活用し、意図的に従業員エクスペリエンスを高めること。こうした取り組みが、従業員エンゲージメントの向上、さらには業績や生産性、離職率の改善を目指すうえで重要だと言えます。

従業員エクスペリエンスを経営の重要課題として捉える時代に

昨今、従業員エクスペリエンスの重要性は高まっています。なぜなら、組織や個人の課題解決のみならず、業績向上、離職防止、顧客満足度などにも寄与するためです。実際、日本の大手企業の約7割が、経営の重要課題として捉えています。

従業員エクスペリエンスの向上に取り組むうえで重要なのは、「期待値と実感値のギャップ」を知ることです。

人の成長支援(投資)と企業価値向上の事例
斎木 輝之 氏

株式会社日本能率協会マネジメントセンター HRM統括本部 本部長

企業の「人的資本経営」に対する取り組み状況

昨今、人的資本経営に対する取り組み強化の流れが高まっています。2022年7月に実施したアンケート調査では、ISO 30414における11の領域に関して、多様性やエンゲージメント、スキル、能力などの開示検討比率が高いという結果が出ています。

人的資本経営における人への投資

内閣府から発表されている人的資本の可視化指針では、人材育成に関する開示事項として、研修費用、リーダーシップ育成、研修と人材開発の効果などの項目を挙げています。取り組みの効果や進捗とあわせて、企業の独自性を表現することが求められてくるでしょう。

人材育成方針に関しては、「従業員ひとりひとりの戦略的資産化」「人的資本投資へのスタンス」といった観点が、投資家目線で重視されています。
また、「人材育成計画に対する時間軸」も重視されている観点の一つです。

ヒトはどうしたら学び続けられるのか?

企業が人材の成長支援を行う際、学習の機会を提供することは大切です。さらに、ひとりひとりのマインドセットを支援することも重要です。

また、経験から学ぶ力や行動を意味づけする力、いわゆる「内省力」も成長循環サイクルのなかでは非常に重要です。

パフォーマンスの向上に影響を与えるのは?

パフォーマンスの向上につながる要因は「個人なのかチームなのか」によって異なります。個人の場合は、ワークエンゲージメントや、チーム・事業・サービスへの愛着といった要素が、パフォーマンスに影響を与えている傾向にあります。一方でチームの場合は、チーム、職場、上司、同僚など、主に「人間関係」の要素が、影響を及ぼしている傾向にあります。
昨今、「心理的安全性」という言葉をよく耳にしますが、個人の能力開発だけでなく、チームや組織の生産性を高めるための取り組みも重要だと言えます。

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「戦略的人的資本の開示」運用の実務の最前線とは

HRBrainについて

「HRBrain」シリーズは、「HRBrain タレントマネジメント」をはじめとし、組織診断サーベイ、人事評価、労務管理、社内向けチャットボットの5サービスからなる、人事業務の効率化から人材データの一元管理・活用までワンストップで実現するクラウドサービスです。引き続き、人事領域のデジタル・トランスフォーメーション(DX)のさらなる促進に加え、ESG経営、人的資本の情報開示などに対して貢献できるよう、機能拡充を進めてまいります。
サービスURL:https://www.hrbrain.jp/
資料ダウンロード:https://www.hrbrain.jp/contact-document-series

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