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瞑想入門 ⑯

アチャン・チャー

 このことは、空腹時などに実際に経験をすることができます。友人と一緒にいるとき、リンゴがいくつかあったとしましょう。友人とリンゴを分け合う気はありますが、あげるなら小さなほうだ、と思う。大きいほうのリンゴは、あげたくないわけです。
「好きなのをどうぞ!」
と言っておきながら、実際に友人がリンゴに手を伸ばすと、
「これがいいんじゃない?」
と小さいほうのリンゴを手渡す。こうしたことは些細なことだとして、普段は気づき難いですが、実際のところ、それはローバです。皆さんは、日常生活の中でこうした経験はないでしょうか?
 
 このような状況に直面したら、ローバに逆らって、大きなほうのリンゴをあげるようにしてください。内心、小さいほうのリンゴをあげたいと思っても、無理やりにでも大きなほうのリンゴを友人にあげなければならないのです。そして、もし大きなほうのリンゴを渡せたなら、心の中は気分爽快になるのです。このようにローバに逆らうためには、心の訓練が必要です。私たちは、他人に与えることの大切さと、己のローバを手ばなすことを学ばなければならないのです。他人にリンゴを与えるときに、まだ迷いがあるのなら、迷っている間は悩むことになるでしょう。そして、たとえ大きなほうのリンゴを他人にあげたとしても、まだ心の中に抵抗感が残っているはずです。しかし、「他人に大きなほうのリンゴをあげる」と心に固く決めた瞬間、そうした悩みは霧散します。これが、「正しく本能に逆らう」ということなのです。
 
(続く)

アチャン・チャー『Living Dhamma』より
 
"Living Dhamma", by Venerable Ajahn Chah, translated from the Thai by The Sangha, Wat Pah Nanachat. Access to Insight (BCBS Edition), 30 November 2013, http://www.accesstoinsight.org/lib/thai/chah/living.html .
 


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