これも親ガチャ?(Last=第26話)

午後4時、俺は中学校の職員室に居た。
『森先生、おじゃましま~す。』
『相田君、背、伸びたわね~。
君たちは、ちょっと見ないと直ぐに大きくなるのよね~。』
森先生は、再会を喜んでくれてるようだった。
『先生、愛がお世話になってます。俺まで、面倒かけてすみません。』
『早速だけど、相田君、ここから10分ぐらいなんだけど、
こんな施設を知ってる?自閉症の学校なんだけど、
病気ではなくて、記憶障害で小3に戻ってしまうことがあるって、
友人の教師には伝えてあるの。「多分、入学は可能だよ!」って
言ってくれてるの。会ってみない?」
「なるほど、先生、すごい!ありがとう。
こんな方法があったんだ!気づかなかったよ。」
俺は正直な気持ちを伝えて、連絡先をもらった。
俺は一瞬固まってから、森先生にお願いをした。
『今、連絡を取ってもらえませんか?』
『良いけど、どんな話にするの?予定は考えているの?』
森先生はアドバイスしてくれた。
『はい、先生。明日は弁護士と会うので、今からか明後日の
都合を聞きたいなと思って!森先生が電話をかけてくれた方が
スムーズかなって、思ったんです。』
森先生は頷いてから、電話をかけてくれた。
『トゥルルルル-、トゥルルルル-。
こちら××福祉学園の佐藤です。』
『こんにちは、第三中学校の森と申します。』
『ああ、森先生、今、大森さんとあなたの話をしてたところなのよ。』
『佐藤先生、お世話になります。実は、その本人の
相田勉が今、隣におりまして、今からか、明後日のご都合を
伺いたいと言ってるのですが、
大森先生に代わってもらっても良いですか?』
『ちょっと待ってね。大森先生に代わります。』
『こんにちは、森先生。私は構いませんよ。
森先生が、そんなに気に入ってる生徒に会ってみたいですし。
この後の予定も入ってませんから、どうぞいらしてください。』
大森先生という人は、森先生をかなり評価しているのが
解った。
『大森先生、有難うございます。私は一緒に行けませんので、
当人だけ行かせます。宜しくお願い致します。
では、ごめんください。』


俺は森先生に深々と頭を下げて、××福祉学園に向かった。
今まで気にもしなかったが、真奈が待ち伏せしていたバス停の近所に
その学校はあった。そして、そこから5分もかからない場所に
もう1つの物件の4LDKのやはり3000万円強の
中古マンションがあることに気づいた。
まるで、真奈のお父さんの転勤から、
全てお膳立てされているように感じた。
そんな事を考えながら、大森先生を訪ねた。
『こんばんは、相田勉と言います。大森先生を
お願いします。』職員室と書かれたプレートの部屋の入り口で
俺は叫んだ。
奥の方から相撲取りの様な丸い体の男性がニコニコしながら、
ゆっくりと近づいてきた。前言訂正!身体をユサユサと
揺らしながら近づいてきた。
『こんばんは、大森です。時間が無いので
早速、話をしましょう。』大森先生は、その体格に似合わず
判断の速い先生だった。
入学申し込みセットの封筒と入学申込書をコピーしたものを2枚、
準備された応接セットに、俺は招かれた。
『多分、入学できるとは思いますが、保護者の同意など絶対必要なものが
いくつかあります。気を付けて下さいね。
次は、保護者の方と入学申込書一式を完成させて持ってきてくださいね。
私は16:00過ぎだったら、事件が無い限りは、ここに居りますから、
アポイントは要りませんよ。
今の君の間に、手続きが完了できることを
祈ってます。』大森先生は、入学申込書のコピーの1枚に鉛筆で
必要事項を解りやすく書き込んでくれながら、一気に話した。
でも、俺には、それで十分だった。
『大森先生、有難うございます。そして、疑いもせず、全てを
受け入れてくれて、感謝です。』
ソファーに座ったまま深々と頭を下げたので
胸を自分の膝頭で軽く打った。
『ほっ、ほっ、ほっ。』大森先生の笑いは、体格通りだった。
俺は書類一式を受け取ると足早に学園を後にした。
マンションが気になったからだ。
スマホを取り出し、マンションの広告の切り抜きを見ながら
不動産会社に連絡をした。
『すみません。大名2丁目のプリンスマンション大名の4LDKの
物件を内見したいんですが、今からは無理ですかね~。
近所に居るので、都合が合うなら、
現地集合でお願いしたいんですけど・・・。』



『もしかして、君が相田さん?ご両親は?』
いぶかしげに、不動産会社の車から降りてきた男性は
俺にそう言った。
『すみません、保護者が急用が出来たもので・・・、
僕、1人ではダメですか?』
俺は年齢的な信用度を考え、気を使った話をした。
『ダメでは、ないですが・・・。』
普通なら、この話にならない営業マンを頼らず、
違う手で攻略するところだが、時間が無い。
俺はカバンの中に先日見た3LDKの部屋の書類一式を
持っていることを思い出した。
『そうですか、残念です。どちらの物件にするかは
決めていいと言われてたので、銀座町1丁目のマンションに
しますかね。あんた、バカだよね~。』そう言いながら
名刺の番号をスマホに入力しかけた時、
『申し訳ございません。ちょっと待ってください。
私の対応が悪かったです。条件も考慮しますので
電話を切っていただけませんか?』
不動産会社の社員はスマホを取り上げんばかりに
俺の手を握った。
‘そうか、この物件を早く売ってしまいたいんだ!’
俺には、そう思えた。
確かに、前回見た物件の方がきれいだった。
ただ、築年数はこちらの方が新しく、細かいとこは
造りが良い気がした。
俺は、写真や動画を許可を取らずにガンガン撮った。
そして、明日のアポを取った。
『明日、最終決定後、書類を持って、
さっきの物件とこちらの物件のどちらかと
契約をします。必要な書類は手元にありますし、
今回は現金取引で購入する予定です。
明日の9時までにこのFAXに見積もりを戴けませんか?』
『本当に、すみません。何とか選んでもらえませんか?
そうだ、銀座町1丁目の物件の見積もりを教えて戴けませんか?』
なんだか知らないうちに、営業マンは俺の術中にはまっていた。
『だって、見せたところで、3LDKと同額にはならないですよね。』
当たり前な会話をした。
『同値なら、買って頂けますか?』営業マンは食い下がる。
『買った後で、問題続出とか・・・』
『それは、大丈夫です。』営業マンの気合が通じてきた。
『じゃあ、どうぞ!「それから、見積もりに問題点が出てきたら
不動産会社が修繕します。」の文言を入れて下さいね。』
営業マンは固まっていた。その見積もりは売値から
400万円も値切っていたからだ。
『別に同値でなくても良いよ。見積もりは出してね。』
俺の話には答えず、俺に見積書を返す前にスマホで写していた。

急遽、呼び出した真奈、茜、愛と俺の4人は、プリンスマンション大名の
室内の動画を見ていた。もう、みんな引っ越し終えた気分だった。
そんな最中の9時にFAXが鳴った。
プリンスマンションの見積もりだった。
価格は3300万円(税込:10%)・・・・。
破格ではあったが、黙っていた事柄が出るは出るは・・・。
でも、どれも他愛もないレベルだった。
ここで、俺は3人に、今後の計画を話すことにした。
だが、それは、弁護士の先生に頼む予定以外の事だった。
真奈にだけ、俺が小3の相田勉から戻らなかった時の段取りを伝えた。
『段取りは簡単なものだった。俺の部屋に赤いノートを置いてる。
これに色々書いてるから、その通りにして欲しい。
細かい事は、赤いノートに書いてある弁護士の先生に
お願いしているから。』
それだけを伝えていた。
話しの性格上、真奈と2人きりで話す必要があったから、
マンションも買って、明後日引っ越しという昼間に俺の部屋に
真奈に来てもらっていた。真奈は、
『相田君、そんなに酷いの?そんなの嫌!』とか言いながら
抱き着いてきた。後にも先にも真奈の女性的なものを見たのは
これが初めてかもしれない。
真奈は俺を押し倒し、キスしていきやがった。
熱いキスだった。お陰で、俺の身体は夜まで金縛り状態だった。
‘いくら頭に話しかけてもピクリとも動きやしね~!’
俺は全身筋肉痛のまま、引っ越しすることになった。
なんとか、都市ガスも当日に開栓出来て、
愛と茜、真奈との4人の共同生活が始まった。
夕飯の弁当を食べる段になって、
俺は、急に強烈な頭痛に見舞われた。
ウウウ、ウウウ、呻く俺を茜は救急車を呼んで対応してくれたが、
激痛は全身に広がり、俺は気絶してしまった。

次の瞬間、救急車の中で出血多量で朦朧としている俺がいた。
‘さっき、俺は出血していなかったぞ?
何だか、様子が違う。
そうだった。俺、交通事故にあったんだ。
なんだ、今までが、気を失ってたんだ。
でも、楽しかったな~。’
『相田勉、がんばってよ・・・・。』
全てを理解できた俺はそう呟くと事切れてしまった。
救急車内の機器が一斉にピー、ピーとなり始めたが、
救急救命士は、救命措置を止めてしまった。
やっと動き始めた心臓が止まった瞬間だったからだ。

おわり
そして、皆さんへ
ここまで読んでくれて有難うございました。
親ガチャで、この話の様な展開は、
(上手くいくことは)無いと私も思います。
でも、コツコツ努力を続けることは必要です。
どこに、何につながっていくかなんて、
未来の事は、全く誰にも解りませんから。
コツコツ努力すれば、自力はつくはずです。
それは、あなた自身の実力です。
あなたが途方に暮れた時、あなたを助けてくれるのは
あなたの実力だけです。
そして、実力は不思議と運も呼び寄せます。
そして、浮き上がるチャンスが来るまで、
コツコツ、なんとか頑張ってください。
何度も言います。
コツコツ努力することが大切なんです。
応援は、祈ることぐらいしか、できませんが、
コツコツを続けて下さいね。

Byゴリ


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