見出し画像

【短編小説】「次の夏にはもうここにはいないから」と彼女は言った

突然眩い光に包まれて、思わず固く目を瞑った。
次に目を開けた時には、見知らぬ場所に立っていた。

niina_tommy様より

ここは、どこだ…?

ずいぶんと綺麗な場所だ。
青い空、白い雲、どこまでも広がる緑の山々……
山を駆ける風は、清々しい春を感じる。

視線を動かすと、すぐそばに女性が立っていた。

「あの、すみません……ここは何処ですか?」
「そんな事、聞いてどうするの?」

彼女の冷ややかな物言いに、面食らってしまった…
いや、どうするって……

「ここが何処かなんて知る必要はないわ。だって、次の夏にはもうここにはいないから」
「ここにはいない?」
「ええ、もうすぐ、この世界は滅亡するんだもの」
「…は?」

滅亡って…
突然、そんな事言われたって……
そもそも、ここが何処なのかもわからないのに…

全くもって見覚えがない。
一見すると、海外にも見えるが…

いや、違うな……

だって、今、目の前に立っている彼女の耳は、明らかに長く先が尖っている…
いわゆる『エルフ』ってやつだ。


わぁ、エルフだぁ。
初めて見たぁ〜


って、違うっ!!
現実逃避してる場合じゃないだろ。

ここは、さっきまで俺がいたはずの世界とは、全く別の世界……
つまり『異世界』というやつだ。
今、巷で流行ってるやつ、な。

いやぁ…まさか、本当に、異世界転生とかってあるんだな…
漫画の世界だけかと思ってた。

しかし、来てしまったものは仕方がない…
仕方がない、が…!
だからって、滅亡する寸前の世界に転生することは無いだろうよ……俺……!

「貴方、大丈夫?」
「大丈夫……大丈夫……」

いや、大丈夫ではないが…
まぁ、どうせ、万年モブな俺にとって、突然異世界に飛ばされようが誰も困らないな……

「てゆうか、そもそも、なんでこの世界は滅亡するんだ?」
「この世界を救うべく召喚されたはずの勇者が裏切ったのよ」
「は?」
「魔王軍に寝返った勇者が、魔王軍と共に世界を滅ぼしているの」 

うわぁ……
なんだ、そのシナリオ……
最悪だな。

「てゆうか、この辺は…滅亡するようには見えないけど?」
「そうね、この辺りはまだドライアドの加護があるから。魔力が充満しているのよ」
「なるほど……ドライアド……魔力…」

いよいよ、ファンタジーだな…

「下の街は、もう人が住める状態じゃないわ…」

確かに、麓の方は黒い霧に覆われている…
しかしまぁ、世界を守るために召喚されたはずの勇者に裏切られるなんて…
よくある『勇者によって世界は救われ皆幸せに暮らしました』なんてのは、漫画の中だけなんだな…

それにしても、世界が滅びようとしている時に、この美人なエルフはこんな所で何をしているんだろうか…

「それで、君はこんな所で何してるんだ?」
「最後の悪あがきよ」

悪あがき?

「私は、滅びゆくこの世界と心中するなんて絶対に嫌。だから、最後にちょっとした悪あがきをね。ここは魔力が充満していて、都合がよかったのよ」
「そっか……」

ま、俺には関係ないけど。

「関係ならあるわよ?だって、貴方を召喚したのは私だもの」
「は?君が?」

そうか……俺はこのエルフに召喚されたのか……
しかし、なんでまた、俺を……?
俺に何かができるとは思えないんだが……

ここで、『勇者の代わりに、俺が世界を救ってやる!』なんてカッコいい事が言えたら、それこそ本当に英雄なんだが、万年モブな俺にはそんな事、出来るはずもない……
しかし、滅亡の間際に召喚されるなんて、こんな俺にも何かしらの使命があるのでは?なんてちょっと期待をしてしまう。

「貴方に、この世界は救えないわ」

いやぁ…そうはっきりと、辛辣なことを言われると、さすがの俺でも結構へこむなぁ…
てか、さっきから俺の心を読んでるのか?

「でも、私の事は救えるかもしれない」
「は?それって、どういう…」

美人のエルフは、初めて微笑んだ。


と、同時に世界は闇に飲まれようとしていた。

ほら、万年モブなこの俺に、いったい何が出来るって言うんだ……

まったく、勝手に異世界に召喚されたかと思えば、勇者に選ばれるわけでもなく、ただ世界滅亡に巻き込まれるなんて……

あっけない人生だったぜ…


その時、突然眩い光に包まれて、俺は固く目を瞑った……
瞼に残ったのは、最後に見た彼女の笑顔だった。













キーンコーン……カーンコーン……



「ねぇ…」

…………?

「いつまで寝てるの?授業、もう終わったわよ?」
「……んぁ?」


……寝て?

授業……?


………


……って、夢オチかよっ!!


目を開けたら、そこは見覚えのある教室だった。

「貴方、大丈夫?」
「大丈夫……大丈夫……」

ずいぶんとリアルな夢だったな…

しかし、夢の中でも、リアルでも、モブな俺。
平凡な日々はどこまでも、続く……か。

ん?
いや、待てよ……
今の会話、何処かで……?

「……って、そういや、君、誰?」
「誰って、クラスメイトに向かって酷いわね」
「クラスメイト……」

ああ、クラスメイト……

……クラスメイト?
いや、こんな美人、このクラスにいたか?

「ふふ、まだ寝ぼけているの?」

寝ぼけて……
ああ……
そうかもしれない。

「万年モブな俺に、世界なんて救えるわけないわな…」

ぼそりと呟いた俺に、目の前に立つ彼女は微笑んだ。

「まぁ、あの世界は救えなかったかもしれないけど、私は救われたわよ?貴方に、ね」
「……は?」
「言ったでしょ?『次の夏にはもうここにはいないから』って」





あの世界は救えなかったが、どうやら、こんな俺でも『なにも救えなかった』……というわけでは無かったらしい。


〜 Fin 〜





以下、亜澄の言い訳コーナーがあります。
言い訳という名の反省文を述べておりますので、読んでも読まなくても…






【亜澄の言い訳コーナー】

と、言うわけで、いかがでしたでしょうか…?
いよいよ、創作活動開始です!

【一枚で一話】作品を作るつもりで、最初は自分が撮った写真で書こうと思ってスマホの写真フォルダーを見ていたんだけど、撮った時の思い入れとかがあるがゆえに、新たに物語を妄想するのが難しく、速攻難航しまして…
早々に、友人のニーナさんに助け舟をだしました(笑)
しかも、ついでに写真にタイトルもつけてもらっちゃいました(笑)

ニーナさんに、事情を説明して『写真にキャッチーなタイトルをつけて送信してくれ!』なんて突然の無茶なお願いをしたにも関わらず、すぐさま写真と素敵なタイトルを送っていただきましたっ!
しかも、3つも!!
ニーナさんのセンスに絶大な信頼とリスペクトをおいている亜澄としては、送ってもらった瞬間に、妄想を掻き立てられまして、三枚ともすぐに構成を考えて…即効下書き保存ですよ。ええ。
頼んで良かった…と、心から思いました。
ほんと他力本願ニーナさん任せ(笑)
まじ感謝です……!これからもよろしく(笑)

で、まず一つ目の作品は、ファンタジーになりました。
亜澄は悲恋や死ネタは嫌いなので、ハッピーエンドがいいんですけど、【次の夏にはここにいない】って、なんか、どうしてもバッドエンドフラグが…ね。
で、バッドエンドにならずに『ここにいない理由』を考える中で、単純亜澄が本領を発揮し、結果こんな話になりました。
いやぁ、ほんと、思考が単純ですね…
しかも、同じような構成だし……
さらには、タイトルもあまり生かせていない…涙
そのまま言わせただけだし…
なんか絶対もっと使いようがあったよね…
それに、次の夏には~の『夏』要素が全然使えなかったし……

亜澄の目標としては、タイトルから想像を良い意味で裏切るような、あっと驚く展開の作品が書きたいのに……

しかも、これ以上短くできなかった…
これでも亜澄的には短い方なんですよ?
なんたって、二次創作だと短編と言いつつ3万文字は最低でも行ってしまうんで…
短い文章って、平均的にどれくらいを言うのかわからないのですが、目標としては、できたら1000文字は切りたかったんだけどなぁ…
もちろん、単に短くするだけでなく、端的に洗練された…
もっと編集する余地はありそうだよな……
表現とかでさ……
問題は、そこだよね…

説明がなさすぎても伝わらないし、言い過ぎても面白くない……
あまりにも無理があるのは論外だし……
肉付けしようとすれば、いくらでも長くなるけど、起承転結がちゃんとあって、端的に分かりやすく、洗練された短い文章にまとめる、というのは、やっぱり難しいな……
もっと無駄に膨らませたくなってしまう…
もっと表現力を身に着けたい…涙

とりあえず、これが今現在の、亜澄の実力…ってことで。
これからもっと、鍛錬を積んでいかないと……
ああ、文章書くのは難しい…

というわけで、最後までお読みいただきありがとうございました!
おそらく、毎度亜澄の言い訳コーナーは長くなると思いますが…汗
素敵タイトル&写真提供のニーナさんもありがとう!!
マジ感謝。また、是非よろしくね(笑)

それでは、次の『タイトル』も楽しんで頑張ります(笑)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?