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介護保険料値上げ

「介護保険料4月上げ 年1万円超の負担増、大企業で続出」という見出しで、「主に大企業で働く会社員の介護保険料が4月から大幅に上がる。年収が高い人に多く払ってもらう仕組みが全面施行され、年1万円を超える負担増になる人が続出する。大企業が中心の健康保険組合の保険料は前年度より700億円増える見通しだ。」と報道がありました。

これは一体どういうことなのでしょうか?そこで今回は、介護保険制度がどのように変わるのかについて解説していきます。


原因は介護納付金における「総報酬割」の導入

平成29年介護保険法改正において、「各医療保険者は、介護納付金を、2号被保険者である『加入者数に応じて負担』しているが、これを被用者保険間では『報酬額に比例した負担』とする。とされました。

「加入者数に応じて負担」を加入者割、「報酬額に比例した負担」を総報酬割といいます。

「段階的に導入」とは、介護納付金の負担額のうち総報酬割が占める割合を、平成29年度8月から平成30年度までは「2分の1」、平成31(令和元)年度は「4分の3」、令和2年度は「全面」と、順次導入していくということです。つまり、令和2年4月より総報酬割が完全導入されるということになります。

しかし、これだけを見ても、まだあまりピンとこないかと思います。とりあえず分かったのは、どうやら関係してくるのは第2号被保険者のようだ、といったところでしょうか。

ちなみに、介護保険の第1号被保険者とは65 歳以上の方をいい、第2号被保険者とは40歳以上65歳未満の方で、医療保険(国民健康保険など)に加入している方をいいます。国民年金の“第〇号被保険者”とは区別して考える必要があります。


介護納付金の仕組み

そもそも、介護給付費の財源や仕組みって、どうなっているのでしょう?

介護納付金とは保険料として支払うお金を指し、介護給付費とは保険金として受け取るお金のことです。厚生労働省によりますと、介護給付費の財源と負担割合は第1号被保険者の保険料22%、第2号被保険者の保険料28%、国庫負担25%、地方自治体負担25%となっています。

そして、第2号被保険者の保険料28%については、全体の介護給付費の28%を第2号被保険者数で割り、1人当たりの保険料額を算出したのち、各医療保険者(国民保険、健康保険組合、共済組合、全国健康保険協会)が被保険者(保険加入者)数に応じて納付金を負担する、というのが、これまでの加入者割の流れでした。

加入者割の場合、1人当たりの保険料額の平均に差は生じない、ということになります。この仕組みは一見平等のようにも見えますが、なぜ総報酬割を導入する必要があるのでしょう?

負担割合是正のための総報酬割

厚生労働省の「費用負担(総報酬割)」によりますと、平成26年度の介護保険料率は、全国健康保険協会は1.72%、健康保険組合は1.40%となっています。「?」となった方もいらっしゃるのではないでしょうか?

先ほど、「1人当たりの保険料額の平均に差はありません。」と述べたばかりです。お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、負担金を分配するとき、考慮されていなかったものがあります。それは加入者の報酬額です。

1人当たりの保険料額の平均が同じだとしても、総報酬額が違えば保険料率も変わります。総報酬額が多ければ保険料率は下がり、総報酬額が少なければ保険料率は上がります。それが、先に挙げた「1.72%」と「1.40%」という差を生み出すこととなります。

つまり、公平性の観点からいえば、不公平である、ということになります。そして、この不公平を是正するために導入したのが、総報酬割ということです。総報酬割を導入すると、保険料率が統一され、経済力に応じた負担となるのです。


負担が増える人、減る人

厚生労働省の資料「平成29年介護保険法改正」の中には、【全面総報酬割導入の際に影響を受ける被保険者数】と題して、平成26年度実績ベースではありますが、「負担増」となる被保険者約1300万人、「負担減」となる被保険者約1700万人とあります。

内訳を見ると、負担増となるのは健康保険組合923万人、共済組合349万人の計1272万人であり、負担減となるのは健康保険組合215万人、共済組合1万人、全国健康保険協会1437万人の計1653万人となっています。

このことから、「4月に保険料が上がって負担が増える!」といっても、それは一部の方の話であり、一方では負担が減る方もいるということが予想されます。

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