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家を見るのは楽しい。

それぞれの家に個性があり、同じような建売住宅でも住む人によって雰囲気は変わり、その差を比べるのもいい。

小さいけど複雑な構造、凹凸が無くてでかい。

そういった家々の中で、私の記憶に残っている家がある。


その家は以前勤めていた会社の通勤途中にあった。

外見上何の変哲もない平家の一軒家なのだが、ただ一つおかしい部分があった。


それは家に入ることが出来ない点だ。


どういうことかと言うと、玄関はちゃんとあるのだが、家の周りを覆う雑草のせいでそこまで入る事ができないのだ。

もし玄関から入ろうとすれば、必ず雑草を踏んで入らなければならない。しかしそういった痕跡は見当たらない。

家の玄関以外はフェンスで囲まれており乗り越えなと入ることはできない。隣に一軒隣接する住宅はあるが、高いブロック塀で遮られておりこちらも入ることは出来ない。

じゃあ空き家なのではと思うのだが、どうもそう言うわけでもない。

と言うのも、夜その家の前を通ると窓に灯りが点いているからだ。どうやらその窓の付いてる部屋は台所らしく、窓からは料理道具のシルエットが見えた。

私はその家の前を計3年間通り続けたのだが、結局その家がどう言うものかわからなかった。

今はその家はもう無く、縦長の新築の戸建てが2軒立っている。


私はその家の住人を一回だけ見た事がある。

夜、家の前を通ると台所の窓からいつもの様に光が漏れていた。

窓に人影が映り込んでいる。

シルエットのみだったが、その人は髪が長かった。ただ窓の前に立っているのだけのようで体は微動だにせず、水や料理の音もしなかった。

翌日家の周りを見てみたが、やはり雑草を踏んだような形跡は無かった。

なのでやはり人は住んでいたのだと思う。

ただ、入れないだけで。


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