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衝動

煌めいて見えてしまった。
どんな誘惑よりも甘く、魅力的なものに思えてしまった。


生きていたいという思いを、生きていたくないという思いが追い越していたのがいつだったかなんて覚えていない。

でも、生きていたくなくて、海で溺れているかのようにどうしようもなく息ができなくなって、繰り返される苦しみから解放されたいとばかり願うようになった。糸を指で丸めたくらい小さかったその思いは、不可逆的に存在感を増していて、いつしかどうやっても無視できないほどの大きさに膨れ上がっていた。

ぎりぎりのところで、無理矢理にだけど飼い慣らされていたその思いは、突然悲鳴をあげて言うことを聞かなくなった。それは、それまで感じたことのないくらいの激しい衝動で、それを押さえつけることはもう不可能だった。

最後に私は隣で寝ている彼氏の輪郭をなぞった。

彼を悲しませてしまうかもしれない。それよりも、勝手にこの世を捨て去った私に怒りを向けるのだろうか。そんな雑念が一瞬頭の中をよぎった。
でも、許してほしいと思った。私の最大で最後の望みを叶えたことを。これは私の中では肯定されるべき選択だから。

手放したくない思い出もたくさんあるし、もう少し違う世界だったら彼との日々をあと少し紡いでみたかった。でも結局それも、生きることに終止符を打ちたいという思いにとどめを刺すだけの威力を持ち合わせてはいない。

さよなら。そして、今までありがとう。

彼の唇にそっと、いとまごいのキスをして、来慣れた部屋を後にする。ドアを開けた先の世界には、どこまでも続く暗闇が広がっていて、私はその暗がりへと飲み込まれていった。

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