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1 コルドバ ベテランスペイン撮影コーディネーターのぶらり旅日記


◇2024年5月 コルドバ

 コルドバは南スペイン、アンダルシアの中世イスラム王朝の古都。メスキータ大聖堂と市内の歴史地区は世界遺産。そんなコルドバの街のあちこちで5月1日まで「クルス・デ・マージョ」5月の十字架祭りが行われる。各地域のエルマンダ(信徒会)が十字架を花等で飾り、その周りに皆が集まり音楽、踊り、飲んで食べておしゃべりしてとにぎやかに祝う。ここで販売される飲食物の収益は信徒会の重要な収入源となり、また十字架飾りはコンクールになっているので、それぞれに趣向を凝らす。
メインストリートには山車が出て、花を観客に投げ、観客が投げ返す「バタージャ・デ・フローレス」(花の戦い)も行われる。

1位の十字架

 私がこの街でコーディネートを担当した番組は、2010年フーディーズTVの「世界遺産の街 おいしい旅 アンダルシア三都を行く コルドバ」、2014年NHK BSプレミアム「世界ふれあい街歩き コルドバ編」、2015年NHK BSプレミアム「世界で一番美しい瞬間 秘密の花園に光あふれるとき スペイン コルドバ」など。

◆2024年5月1日水曜日 Cruz de Mayo 5月の十字架祭り
 マラガからAVEという高速列車に乗り1時間でコルドバ到着。今回は割引料金で片道21,95ユーロ。(約3700円)スペインの国営鉄道RENFEの高齢者割引年間パス「タルへタ・ドラーダ」(ゴールドカード)、年間6ユーロ(2013年購入)は60歳から一度登録すれば外国人でも何度でも使え、平日は25%週末は40%お得。9:59に駅に着き、市バスに乗って旧市街へ。コルドバ在住Kさんの家に一泊させてもらうため荷物を置いて、彼女と早速出発。今年はパティオ祭りが2日から12日まで開催されるので、1日の朝にコルドバを歩くと、十字架祭りを見ながら、明日からのパティオ祭りと同時開催される、通りに面した鉄格子とバルコニーの花のコンクールの花を、前夜遅くまで飲み騒いでいたコルドバの人があまりいない、通りや広場をスイスイと見て歩ける。そして中には前倒しに公開しているパティオもあり、並ばずに見ることができるという特典がある。コルドバの旧市街の通りは戦争で攻めてきた敵を惑わすため、迷路状になっている上とても狭いので、これは大事なポイント。明日は大混雑が予想されるユダヤ人街や旧アルカサル地区を重点的に見て回る。

鉄格子の花

今日のランチは別の友人Mさんお薦めのタベルナ・バラ・イ・メサ。スペインの伝統と革新料理。前菜は自家製ポテトチップス、鰯の酢漬けとピビラナ(みじん切りサラダ)のトスタ。カラベルエラの生羊乳職人チーズ、そしてメインは最近流行りのもつ料理進化版。牛の胃袋と鼻と豚足を革新的に調理したもの。コラーゲンたっぷりな滑らかな舌触りのしっかりしたモツ味の一品。コルドバの赤ワインもうまくマリアージュ。サービスはよく、シェフのラファエル・ベジードさんも料理の感想を聞きに来てくれた。また来たい店。

モツ料理

 午後歩きはじめると、以前取材した街の彫刻家マヌエル・ベルモンテさんの新しいパティオ祭をテーマにした彫像に行きつく。始めの作品は壁の鉢に水やりをするコルドバ女性、二つ目は梯子に登って植木鉢を祖父から受け取る男の子の作品、そしてこれはイスに座る祖母が花づくりについて女の子に語る作品。細かいところまでコルドバらしさが一杯の、優しい時を切り取ったような作品だ。

マヌエル ベルモンテさんのパティオ彫刻

 引き続きもう少し街を歩き回って帰ってきたら、ゴミを捨てに行くKさんの隣人と出会い、「ようやく今パティオの準備が整ったけれども、もう見たか?」と聞かれ、「いいえ、さっき通りかかったけれど皆さんお忙しそうだったから」とKさんが言うと戻って外のドアを開けてくれ、「皆いるからゆっくりして行って」と案内してくださった。ここチャパロ通りのパティオは会期中来訪者の流れをスムーズにするために写真撮影をお断りしているパティオなのだが、特別に写真も撮らせて頂いた。ビールでも飲んでゆっくりしていらっしゃい、と誘われたが、さすがに遠慮。夕暮れ時に水の音と彼女たちの話し声を遠くに聞きながら、最高に贅沢なパティオ本来の魅力を満喫させて頂いた、至福のひと時。このパティオは空間の上下をうまく使った変化のあるもので、明日の朝、今年はコルドバ出身の画家フリオ・ロメロ・デ・トレス生誕150周年なので、彼に関する本や印刷物をテーブルに並べるそうだ。こういった計らいもこの共同住宅の住人たちで話し合って決める。一年がかりの大イベントなのだ。

チャパロ通りのパティオ

今年の冬はスペイン全国深刻な干ばつだったが、恵みの雨が春に降り、大地やダムも少し潤ったが水不足は続く。その上地球温暖化の影響でこの祭り開催日の5月に合わせて、一般の人たちが花を見事に咲かせてみせるのは至難の業で、参加者たちから会期を4月にして欲しいという要望が市役所にあがっている、とKさんから聞く。そんな訳で会期の初日は花が一番美しい時かもしれない。



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